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移民と開発の交差点 [外国人労働者]

The Migration-Development Nexus: A Transnational Perspective (Migration, Diasporas and Citizenship)

The Migration-Development Nexus: A Transnational Perspective (Migration, Diasporas and Citizenship)

  • Thomas Faist, Margit Fauser, Peter Kivisto eds.:
  • 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
  • 発売日: 2011/06/15
  • メディア: ハードカバー
内容説明
本書は、国際問題研究に移民と開発という視点を導入して新たなアジェンダを提案しようというものである。移民と開発を軸に現在行なわれている政策議論を検証し、国をまたぐというレンズを通じて厳しい概念的批判を試みる。著者は移民が開発のエージェントであるとする現代の再発見を、歴史的見地から捉え、労働移動や難民をテーマに詳細な事例分析を提示するとともに、社会学、政治学、社会人類学、地理学、政治経済学といった領域における概念と理論に政策論争を繋げようという試みを展開する。こうした取組みを通じて、国をまたいで活動する新たな開発エージェントがどのように構成され、どのように行動するかを、マクロで起っている社会構造変革と関連付けようとする。
「Migration」という言葉は日本語に訳しにくい。「移住」、「移民」というとかなり限定的な定義になってしまうし、「労働移動」というのもしっくり来ない。「人の移動」というのが本当は最も近いような気がするけれど、それだと日本語にした時になんだかのっぺりした表現になってしまうような気がする。最近は「ディアスポラ」という表現もそのまま日本語で使われるようになったが、これも適当な日本語訳がないからで、しかも「ディアスポラ」と「Migration」はイコールではない。

だから結局、「国境をまたぐ人の移動」を総称して「Migration」という言葉をそのまま用いてみたいと思う。

本書の紹介のところでも述べた通り、今日、開発の主体・エージェントとしてのmigrationに対する関心が高まっている。2000年代に入って注目されているのはmigrationに伴い生じる「外国送金」が、外国援助(ODA)資金に比べても馬鹿にならない規模で先進国から途上国に流れ込んでいるからである。しかも、援助国の景気動向に影響を受けやすいODA資金と違い、外国送金は移民受入国の景気動向にあまり左右されず、堅調に途上国に流入し続けている。

送金を巡る最近の議論では、送金は、被仕向国の貧困削減やローカルビジネス、インフラ投資等に活用され、開発に貢献する大きな潜在性を持っていると評価し、さらに送金に伴い、先進国から途上国に技術や知識、その他の社会的規範や価値観、アイデアといったものが伝播するという側面も重要だという。さらに、一時的な労働人口移動が望ましいとも見られている。

さらにmigrationと開発の関係性に関する論調を見ると、最初に活発に議論された1950~60年代は、ホスト国側の労働人口不足を埋めるという一時的な労働需給調整を評価する声が大きかったという。当然、ホスト国の景気動向が悪化すれば、今度は外国人労働者をレイオフして本国に帰すようなことが考えられていた。

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まるで人身売買 [外国人労働者]

記事のポイントは外国特派員協会での記者会見にあり、基本的なポイントは以前7月6日にご紹介した『外国人実習生の厳しい環境』と大きな差はない。

人ひとりひとりに焦点を当て、上からの保護と下からのエンパワーメントの両面からの働きかけが必要と言われる「人間の安全保障」を対外援助政策の柱として強調するなら、自国内で起きている出来事にも目を向けないと、白々しい議論に終わってしまうような気がする。
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外国人実習生の厳しい環境 [外国人労働者]

このところ、僕は「外国人労働者」というカテゴリーではあまり記事を掲載したことがなかったのだが、最近になって幾つかこれに関連して考えさせられる報道があったのでご紹介したいと思う。

外国人実習生 初の過労死認定
7月2日(金) NHKテレビニュース動画(http://www.nhk.or.jp/news/
 日本の技術を学ぶための外国人研修制度で来日した中国人の男性が、実習先の茨城県内の金属加工会社で死亡したことについて、労働基準監督署は、長時間にわたる残業などが原因の「過労死」だったと判断し、労災と認定しました。厚生労働省などによりますと、外国人実習生の過労死が認められたのは、これまでに例がないということです。
 過労死の労災認定を受けたのは、中国人の蒋暁東さん(当時31歳)です。蒋さんは、海外の若者に日本の高い技術を学んでもらう「外国人研修・技能実習制度」で平成17年に来日し、技能実習生として茨城県潮来市の金属加工会社で働いていましたが、おととし6月、会社の寮で心不全を起こして死亡しました。労働基準監督署は、亡くなる直前の1か月の残業が100時間を超えていたとみられることから「過労死」だったと判断し、労災と認定しました。厚生労働省などによりますと、外国人実習生の過労死が認められたのは、これまでに例がないということです。また、亡くなった蒋さんを含め、外国人実習生3人に対し、この金属加工会社が最低賃金を大きく下回る時給400円しか残業代を払っていなかったうえ、実際の勤務時間が記録されたタイムカードをシュレッダーで破棄していたことがわかりました。労働基準監督署は、こうしたことが労働基準法違反に当たるとして、この金属加工会社と66歳の社長の書類を2日、検察庁に送りました。NHKの取材に対し、金属加工会社の社長は「受注が多くなったときに残業時間が長くなってしまったことはあったが、健康診断で問題はなく、休憩時間も十分に設けていたので、過労死だったとは考えていない」と話しています。
先ず上の報道であるが、IPAA・外国人入管手続勉強会のMLで紹介されていたものである。記事では端折られているが、実はNHKニュースの動画を見ると、亡くなった蒋さんの亡くなる直前の労働時間は140時間程度あったとの同僚の証言も紹介されている。過労死というのは健康診断ではなかなかチェックができないと思うので、ちょっとこの社長の発言や行動には首を傾げる。

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不平等な国際取極め [外国人労働者]

この報道を目にした時、読者の皆さんはどうお感じになられたであろうか。

僕の率直な印象は、「他国で看護師免許をちゃんと持っている人が、何で改めて日本の看護師国家試験を受けなければいけないのか?」という疑問と驚きだった。勿論、「看護師」の資格によってどこからどこまで患者に対してできるのかは国によって異なるので、ユルユルの看護師資格の国なら日本で試験は必要だというのは仕方がないだろう。

半年ほど前、日本で看護師免許を取っている人はインドで看護師を務められるのかというのを調べてみたことがある。結果から言うと、できる。最近は「医療侵襲行為に対する外国人従事者の関与」について日本側で自主規制をかけているため、実際問題として公的制度の下で派遣される日本人ボランティアは、インドで地元看護師と全く同等の仕事はやってはいけないことになっている。だがそれはあくまで日本側の自主規制であって、インド政府側で外国人看護師に「インドの看護師試験に合格していない者はインドで看護をやっちゃいけません」と言っているわけではない。

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看護士・介護士の国外調達の前に… [外国人労働者]

日本とタイの経済連携協定の締結に向けた交渉分野の中で、「人の移動」の自由化に関し、タイ料理人の就労基準の大幅緩和など、日本国内でのタイ人の雇用拡大策について、事務レベルで大筋合意に達したことが30日、明らかになった。
 両国は合意をもとに、協定書の策定に向け、日本国内での就労の最終的な可否や受け入れ条件について、より具体的な協議に移行する。
 事務レベルで合意した対象業種は(1)タイ料理人(2)スパ・セラピスト(3)介護士の3分野。
 タイ料理人は、日本国内で働くためにこれまで条件とされてきた実務経験年数を「10年以上」から「5年以上」に緩和する。
 スパ・セラピストと介護士は、タイ政府が日本での就労解禁を強く要求しているが、日本側では賛否両論あり、候補業種として継続協議する方向だ。
(共同通信) - 7月30日17時39分更新
この記事はタイ料理人の話が中心となっているが、フィリピンとの経済連携協定(EPA)に続いて介護士が対象となっていることに、懸念も表明したい。タイ政府側の要求とはいえ、受け入れることは日タイ両国にとってメリットがあることなのだろうか。

先ずタイ側。合計特殊出生率1.8で少子高齢化の問題が東南アジアで最も早く顕在化する国が、他国に人を送り出せるものなのか。フィリピンの時もそうだったが、就労に当ってはライセンスの取得を義務付けていたと思うが、こういう研修をしっかり受講してライセンスを取得できる人々は、比較的経済的に恵まれている人々ではないだろうか。EPAはそういう人々に恩恵が偏るような結果にはならないだろうか。

次に日本側。来年には人口が初の減少を記録し、今後高齢化がいっそう進むであろうと言われている。EPA協議で介護士の受入が話題になること自体、高齢化のこれ以上の進展に対する対処とも考えられるが、果たして外国人介護士の受入で問題は解決するのだろうか。かたやニートが53万人もいるような世の中で、ニート対策を放ったらかしにして外国人受入が本当にいいのだろうか。
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日本も昔は出稼ぎ労働者を送出していた。 [外国人労働者]

最近、移民ネタが多いなと反省しつつももう1本。日本が送出国から受入国に変わっていき、受け入れる外国人労働者は昔移住させていた日本人移民の子息であるというのは因果を感じる。

1.概要
国策移民:我が国も、国内の過剰労働力を背景とした1880年代から1970年代前半にかけては移民送出国であった。移民送出は国策として実施された。
ハワイ・北米本土(1880年代~1907年):初期の移民はハワイや北米本土へ主に短期出稼ぎを目的として行なわれた。これらの出稼ぎ収入の80~90%は、負債償却と不動産購入、貯蓄に充当されていた。しかし、米国での反日感情の高まりとともに激減した。
中南米(1908年~1973年):北米に代わる移住地として、日本政府は南米に注目し、1908年の笠戸丸のブラジル・サントス港入港を嚆矢として同地域への移住者送出が始まり、1941年までに18万8千人の移住者がブラジルに送られた。第二次大戦中いったん中断したブラジル移住は戦後再開され、同国の他にパラグアイ、アルゼンチン、ボリビア、ドミニカなどに移住者送出が拡大した。

2.特徴
定住目的:中南米への移住者は殆どが定住を目的とした家族での移住。
後発国への移動:人の移動は生活水準が比較的低い国から高い国に向かうのが普通であるが、我が国の中南米移民は、比較的生活水準の高かった日本から低かった後発中南米諸国に向かって移動したという点で特徴的。
移住者の出身地域:広島、沖縄、熊本、福岡、山口などが上位を占めるが、当時の我が国の地方経済状況からみて最も貧困な地域ではない。また、移住者の中には地主や大土地所有者も含まれ、ほぼ全ての所得階層から移住者が出ている点でも特徴的。
受入国での貢献:日本人移住者、日系人は、受入国において様々な分野で活躍しており、各国の産業・経済の発展に大きく貢献し、我が国と受入国との緊密な関係の構築にも寄与してきた。例えば・・・
パラグアイ:戦後の日本人移住者がもたらしたトマト、キャベツ、レタス、カボチャなどの種苗と栽培技術は、同国の食生活の改善に大きく貢献。特に大豆生産は同国の輸出収入の40%前後を占める外貨稼得の主力産品として成長している。
日系人の本邦就労:現在我が国が受け入れている外国人登録労働者の中核は中南米の日系人。2005年4月のIDB年次総会に先立って行なわれたセミナーにおいて、IDBは、日本に暮らす中南米の出稼ぎ労働者が2004年に本国の親族らに向けて行なった外国送金の総額は、26億6,500万ドル(約2,900億円)と推計され、米国に次ぐ第2位の中南米向け個人送金大国になったことを報告。2003年の日本の中南米に対するODA総額約4億6,390万ドルの約5.7倍に相当する巨大な額(米国の対中南米送金額は320億ドル)。日本に滞在する中南米移民の送金総額が分かったのはこれが初めて。

3.JICAの関与
移住者送出支援:1963年、日本の戦後移住政策を統括する組織として海外移住事業団(JEMIS: Japan Emigration Service)が設立され、74年に国際協力事業団に統合された後、1994年度に移住希望者向け訓練・送出支援サービスの停止するまでに、JEMIS及びJICAは約73,000人の海外移住を支援してきた。
本邦に在留する移住者子弟の人材育成:日本語学校生徒支援、日系人本邦就労者帰国前技術研修、日系人本邦就労者日本語研修、日系留学生研修・奨学金制度
海外での移住者・日系人社会支援:営農技術指導と普及、保健医療サービス提供、日本語教育実施などを支援
国際協力の側面強化:日系人関連事業のうち、日系研修員受入、日系社会ボランティアなどは1996年度より技術協力の一環として位置付けを整理。

あまり中身が詰まっていないけれど、横浜には移住資料館(http://www.jomm.jp/)というのがあるので少し参考になるかもしれない。


スポーツ選手の出稼ぎ送金と開発 [外国人労働者]

金曜夕方に上司から月曜朝までにアイデアをまとめておけとのキツイ伝言メモを見て暗い気持ちになって迎えたこの週末、ボクは学会出席のために東京にご出張されていた社会人大学院時代の指導教官とお目にかかり、近況報告などさせていただくよい機会を得た。土曜の夕食会は、今年同課程に入られた関幸生さんも同席され、とても楽しいお話をさせていただくことができた。6時30分から飲み始め、気付いたら10時30分を回っていた。

このブログでも以前書いた通り、ボクの仕事上の当面の課題は労働移動(Migration)にある。でも、これにはいろいろな側面があって、開発資金としての送金の可能性と不規則的な人の移動における人権配慮と移動を管理する国際的な枠組みの構築などが目下の国際社会の関心事だと思う。

関さんは日本陸連にお勤めで、アフリカの陸上関係者と幅広いネットワークをお持ちだ。ご関心分野は「スポーツと開発」なのだそうだが、最近労働移動について考えてばかりいたボクにとっては、とても興味深いテーマであるように思えた。アフリカの陸上選手が、国外の陸上大会の獲得賞金をどう母国で使っているのか―――財政規模が小さく末端の受益者にまできちんと届く行政サービスの提供がなかなかできないアフリカ諸国の政府に代わって、陸上選手が国外で稼いできたお金が個人の貯蓄ではなく社会に還元されれば、政府に代わって貧困からの脱却につなげられる可能性があるからだ。

例えば、宗兄弟や瀬古選手のライバルだったタンザニアのイカンガー選手は、自分が国外のレースを走ることによって得た賞金や世界の陸上関係者とのネットワークを活用して、ダルエスサラーム郊外に陸上スクールを開校し、次世代の陸上選手を育てる環境作りに還元している。それはただ貧しいだけのタンザニアの住民に希望を与えることになるかもしれない。アフリカの陸上選手がどれくらい国際レースで稼いでいてそれをどの程度母国に持ち帰って社会に還元しているのかは、統計ではなかなか取れない。その点で、関さんのようにネットワークをお持ちの方は、インタビューを通じて情報蓄積ができると思うので、こうしたテーマの調査研究は関さんでないとできないと思う。

関さんは、スポーツの商業化も悪いことばかりではないとおっしゃっていたが、考えようによってはその通りだなと思う。陸上から話が外れるが、米国メジャーリーグで活躍するスター選手の多くは、莫大な富を築いたものの、それを母国の貧しい社会に還元しようという取組みをしており、これも母国にとっては貴重な外貨収入源に繋がっている。出稼ぎ労働者の海外送金は、その使途が奢侈品の消費や賭博にすぐに消えてしまうとすれば問題だが、それがきちんと社会やコミュニティに還元される仕組みがあれば、開発目的にも合致する。

関さんのお話でも面白かったのは、一時女子マラソンの世界最高タイムを保持していたケニアのテクラ・ロルーペ選手の現役時代、やたらとカネ、カネ言う選手だという印象を受けていたが、引退したら自ら財団を設立して社会還元を行なっているのを見て少し見方が変わったというお話とか、そういう社会還元を行なうアフリカ人選手の多くは、欧米のフィランソロピーの影響を受けているのだというお話とかだった。

今の体型から誰も信じてくれないが、ボクも少し前までは市民ランナーで走っていたので、陸上についてはとても関心があった。関さんとお話できたお陰で、日本のフルマラソンで海外から招待されるペースメーカーのギャラが幾らくらいだとか、アフリカのトップ選手が国外の賞金レースで優勝して獲得する賞金がいくらくらいだとか、いくつも質問が湧いてきて、あっという間の4時間だった。

関さんはTBSのホームページの世界陸上サイトで実名でコラムを書いておられる。お目にかかった後でちょっと読んでみたが、陸上に多少関心があるような者にはとても面白い内容だった。(URLはhttp://www.tbs.co.jp/seriku/2005/pn/column/

こういう社会の様々な分野でご活躍されている人が集い、それぞれ独自の視点から開発を語り合える場であるから社会人大学院は面白いと改めて思った。


日本の出入国管理政策 [外国人労働者]

先日、移民と途上国の開発問題について書いてみたが、その流れで日本の入国管理政策はどうなっているんだろうと思い、ちょっと調べてみた。

1.第三次出入国管理基本計画
●出入国管理及び難民認定法に基づく我が国の5年間の基本方針を定めたもの。現在、第三次計画期間(2005~2009年)に入ったところ。

●第三次計画における主要な課題と日本政府の方針は以下の通り。但し、この方針には外国人の人権への配慮が不十分との指摘もある。
(1)我が国が必要とする外国人の円滑な受入:専門的技術的分野における外国人労働者は積極的な受入、留学生・就学生の適正な受入、研修・技能実習制度の適正化等。
(2)不法滞在者を大幅に縮減し、我が国の治安を回復するための取組:水際対策の強化、在留審査の厳格化、不法滞在者の摘発強化、収容施設の活用と早期送還の実施等。
(3)その他:歓迎すべき外国人の受入円滑化と不法就労を企図する外国人の確実な排除のための体制整備、テロ対策での国際協力、難民認定制度の適正な運用による真の難民の確実な庇護等。
●2004年の正規の入国者数は676万人で過去最高を記録。入出国手続きにおける偽変造文書発見件数は2,688件で過去最高水準に達している。在留外国人数は2003年末現在192万人、総人口の1.5%を占める。不法滞在者数は約24万人と推定されているが、これは1993年をピークに減少傾向にある。不法滞在者の出身国としては、韓国、中国、フィリピン、タイ、マレーシアが上位。

2.外国人労働者受入拡大
選別政策:我が国は、1999年、単純労働者の就労には慎重姿勢を保つ一方、専門的、技術的分野の労働者は積極的に受け入れる方針を閣議決定。現在もこの方針を維持。
対フィリピンEPA:2004年11月に締結されたフィリピンとの経済連携協定(EPA: Economic Partnership Agreement)においても、高齢化社会を背景としたフィリピン人看護師、介護士の受入を、2006年4月を目途に開始することが合意されており、今後もアジア諸国との自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)協議の過程で同様の検討が行なわれることが予想されている。
人身売買:他方、ILOが5月11日に発表した報告書”A Global Alliance Against Forced Labour”によれば、世界で約1,230万人が国際条約で禁止された「強制労働」に就かされ、うち約240万人が人身売買の被害者と推定されている。日本については、性産業に従事する女性の国際的な人身売買の「主要な目的地の1つ」と指摘。ダンスクラブなどで働くための「芸能ビザ」で合法的に入国し、実際には性的なサービスを強要される例を挙げ、東南アジアや中南米、東欧出身の女性が、人身売買の元締めとなっている犯罪組織の管理下で強制的に性産業に従事させられていると述べている。
出稼ぎ送金:2005年4月のIDB年次総会に先立って行なわれたセミナーにおいて、IDBは、日本に暮らす中南米の出稼ぎ労働者が2004年に本国の親族らに向けて行なった外国送金の総額は、26億6,500万ドル(約2,900億円)と推計され、米国に次ぐ第2位の中南米向け個人送金大国になったことを報告。2003年の日本の中南米に対するODA総額約4億6,390万ドルの約5.7倍に相当する巨大な額(米国の対中南米送金額は320億ドル)。日本に滞在する中南米移民の送金総額が分かったのはこれが初めて。

3.出入国管理及び難民認定法改正(2004年5月)
●不法滞在者の減少策強化、及び「厳しすぎる」と国際的な批判のあった難民認定制度の見直しが柱。
不法滞在者対策:2004年12月施行。不法滞在の罰金を30万円から300万円に引き上げる一方、自主出頭を促すため、一定の要件を満たす場合は身柄拘束なしに出国させ、再入国拒否期間も5年から1年に短縮。
難民認定:2005年5月16日施行。改正のポイントは以下の通り。
(1)難民申請の期間を入国後60日から6ヶ月に延長
(2)審査期間中は強制送還をせず、逃亡する恐れがないなどの要件を満たせば仮滞在を認める
(3)難民に認定され、一定の要件を満たしている人には在留資格を与える
(4)不認定の場合の異議申し立ては第三者が審査する
●米国やカナダが年間1、2万人規模で難民受入を行なっているのに対し、我が国では1982年から2004年末までに申請された3,544件中、難民認定は僅か330人に過ぎず、認定が厳しすぎることが問題の本質であるとの指摘がアムネスティなどからなされている。アフガニスタン人の難民認定は2000年から2004年までに10人前後しかない。

実際に法務省のホームページなどに出ている第三次出入国管理基本計画の原文を見ると、日本に都合の良い労働力は大歓迎で、そうでないのに勝手に入ってくる外国人にはものすごく厳しい文言だなと思う。本国に叩き返せと言わんばかりの口調だ。不法に入ってくる人々にとって、日本は魅力的な国なのかもしれないが、迫害や圧政のために祖国にいられなくなる理由もあった筈だ。簡単に強制送還してその人が本国でどういう目に遭うかもしれないか、もう少し僕たちは考えた方がよい。難民にしてもそうだ。「真の難民」なんて言葉を使っているけれど、難民認定が厳し過ぎないだろうか。

いろいろと考えさせられる内容である。


移民と開発 [外国人労働者]

1.問題意識の背景

開発資金の動員策検討:MDGsを達成するためには、援助量の増加のみならず、開発資金の途上国への流入をFDIや貿易、外国送金などの民間資金によって増額せねばならないというコンセンサスが、モンテレー開発資金国際会議(2002)以降、国際社会では共有されている。

外国送金の規模と安定性:とりわけ、途上国からの出稼ぎ労働者が本国にもたらす外国送金は、2003年の純流入額が1,159億ドルとなり、ODAの690億ドルを大きく上回っている。また、外国送金は受入側の先進国の景気に左右されにくく安定的な増加傾向を示している。このため、外国送金を開発資金としていかに有効に使うかに注目が集まっている。

政策の一貫性:米シンクタンクであるCenter for Global Development(CGD)は、途上国の開発に向けたDAC加盟国の政策の一貫性を比較するため、「開発コミットメント指標(Commitment to Development Index: CDI)を2003年より発表。この中で「移民」は主要7項目の1つを占めている。評価は、外国人労働者、留学生、難民受入数によるため、我が国に対する評価は厳しい。

Global Commission on International Migration(GCIM):2002年の国連総会で移民が重点分野と位置付けられたのを受け、①移民を国際的アジェンダとして取り上げ、②現在の政策・アプローチ間に見られる齟齬を分析して論点を整理し、③事務総長宛提言をまとめること、を目的として2003年12月にGCIMが設置された。各地域でのマルチステークホルダー対話と数次のコアグループ会議を経て、2005年末までに最終報告書をまとめる予定。

移民(Migration)の特徴
Castles and Miller(1998)によれば、近年の移民の特徴は以下の5つのキーワードに集約されるという。
Globalization:より多くの国の間で移民が起きるようになってきている。
Acceleration:交通手段の発達とともに移民の数が急増している。
Differentiation:移民の性格が多様化している(出稼ぎ労働、難民、定住など)。
Feminization:女性労働力の移動が増加している。
Politicization:移民問題は、国内政策の範疇を超え、域内、さらには全世界的規模での政策との整合性が求められるようになってきている。

2.主要な論点

(1)外国送金の貧困削減効果

送金の円滑化:単純な経済モデルでは、送金が行なわれることによってはじめて送出国側にプラスの利得が発生することが示されている。このため、世銀などでは現在、外国送金を円滑に行ないその規模を拡大するため、銀行業務の改善や貯蓄性を向上させる金融商品の開発などを含めた銀行・金融セクターの改革、中間搾取を行なうブローカーなどの介在抑制といった方向性が議論されている。

送出国国内雇用機会不足への対応:外国送金は、国内に十分な雇用機会がない小国や島嶼国などにとっては貴重な雇用機会と外貨の獲得手段となっている。

送金の使途:他方、送金の受け手は、これを食料や衣服、耐久消費財の購入、土地・住宅取得、補修、建設などに充て、起業のような生産的な活用があまり行なわれず、民間セクターの活性化には繋がらないとする見方がある。このため、貯蓄性向改善に向けた銀行・金融セクター改革や起業家育成セミナーの強化などが必要と考えられている。

出稼ぎ労働者の出身階層:国外に出稼ぎに出られる労働者は最下位の所得階層出身者ではなく、学歴も高いと見られており、外国送金がむしろ生活格差の拡大に繋がる恐れがある。

(2)送出国の社会的コスト

都市化:国外出稼ぎの前にいったんは都市に人口が流入するため、移民は急速な都市化と都市の失業率上昇、生活コスト上昇などの問題を助長すると考えられる。

頭脳流出:国内で熟練労働者が不足する。また、最も生産性の高い階層が国外に流出するために送出国経済の潜在成長率に悪影響を及ぼすことが懸念される。

家庭・家族への影響:長期間家族と別れて暮らすことにより、家庭不和、精神的不安定といった問題を引き起こす恐れがある。特に、先進国の高齢化や女性の社会進出を背景とした途上国女性の看護・介護分野での出稼ぎは、送出国の家庭内の役割分担に影響を及ぼす。また、男性の出稼ぎが長期間にわたる場合、送出国に残された配偶者・家族が不意の送金停止によって困窮するリスクも懸念される。


(3)先進国の受入政策と途上国開発支援政策との整合性

選別:CDIは移民の受入数が多い国に高い評価を与えるが、多くの先進国の受入政策は自国経済の発展に都合が良い職種の「選別」(熟練労働者の定住、未熟練労働者の一時的受入れ)を行なっているという点では共通しており、途上国の開発や貧困削減を上位目標と定めているわけではない。

二極化:土木・建設といった未熟練職種での労働者受入れは、先進国・途上国間の賃金格差だけでなく、先進国内でも高技能職種と未熟練職種の間の賃金格差をも拡大し、生活の二極化が進むと懸念される。


(4)変則的移民(Irregular Migration)

受入国に関する課題:受入国側では、亡命や不法移民のような変則的な移民と通常の移民の受入手続き間で政策的な整合性を取る必要性が指摘されている。変則的な移民は国家主権に対する脅威と見られることが多いが、他方で低廉な労働力への需要(プル要因)も大きい。

送出国に関する課題:貧困や生計機会の制約など、変則的な移民送出が発生するメカニズム(プッシュ要因)を理解する必要性が指摘されている。送出国側の状況が、移住労働者の帰還・再定住や人身売買といった問題への取組みを困難なものにしている。


(5)地球規模で整合的な移民政策の形成

様々な利害関係者:移民は、送出国、受入国の双方において所得と生活の格差を拡大する可能性があるため、双方の政府間だけではなく、双方の雇用者団体、労働者団体、外国人労働者擁護団体、NGOなど、様々なステークホルダーが参加し、地球規模で整合性の取れた移民政策の導入促進を図る必要がある。

新たな制度的枠組み:IOM(International Organization for Migration)、ILO、UNHCRなど、人の移動に関連した諸課題を取り扱う国際機関が既に存在する現状、当事国の多くは、地球規模で整合性の取れた移民政策の導入促進に向けて新たな国際的制度枠組みを構築することには懸念を持っている。

3.問題提起
長期の社会的コストの重視:外国送金のマクロ経済的側面を見て評価するだけではなく、移民のもたらす長期の社会的コストについても注意する必要がある。受入国における移住労働者の処遇、送出国に残された配偶者・家族への影響、国外での雇用機会を得られる階層と得られない階層の格差等にも十分な配慮をすべき。

途上国側のプッシュ要因の重視:援助実施機関としては、移民を送出する途上国側のプッシュ要因に対する取組みが必要。即ち、投資環境の整備や雇用状況の改善により自発的移住の相対コストを高めるとともに、低所得者や政治的社会的弱者が非自発的移住を行なう根本要因にどう取り組むのかが問われている。

政策の一貫性:政策の一貫性は先進国に限った問題ではなく、移民を送出する側の途上国においても、移民送出政策と他の開発計画、特にPRSPとの整合性の確保が求められる。国の置かれた状況にもよるが、国内雇用機会の創出を図るのか、国外雇用機会の獲得行為を促進するのか、プライオリティをよく見極め、援助もこれを支援する方向で実施することが肝要。

以上

参考資料
Castles, Stephen and Mark Miller (1998), The Age of Migration, Guilford Press
Global Commission on International Migration (GCIM) HP: http://www.gcim.org
Ito, Chiaki (2005), International Labor Migration and Its Effect on Poverty Reduction: Critical Review on the Current Literature, 1st draft, IFIC-JICA
World Bank (2003), Global Development Finance 2003, The World Bank
---------------. (2004), Global Development Finance 2004, The World Bank


外国人労働受け入れは送出国にも恩恵をもたらすのか [外国人労働者]

2004年9月に月刊誌「正論」に投稿したものです。案の定ボツにされましたが、今の日本の外国人労働者受け入れの議論が日本側の事情が先行していて、途上国側の国内事情があまり考えられていないのではないかと疑問に思い、書いてみることにしました。

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「外国人労働受け入れは送出国にも恩恵をもたらすのか」

 外国人労働の受け入れの是非を巡っては、少子高齢化がもたらす我が国の経済社会の変化をその受け入れによってどう食い止めるか、そして受け入れ自体が私たちの社会にどのような影響を及ぼすのかを予想して行なわれている議論が圧倒的に多いように思うが、本稿ではやや視点を変えて、外国人労働者の受け入れが送出国の開発に対して与える影響の検討を通じて、受け入れの是非について考えてみたい。

 世界銀行が今年4月に発表した『世界開発金融2004』によると、出稼ぎ労働者の海外送金による途上国への資金流入は2003年に930億ドルに達しており、ODAによる資金流入280億ドルを大きく上回ったとされる。出稼ぎ送金がODAをはるかに上回る現状に、出稼ぎ送金が経済開発に与える効果にも注目が集まっている。世銀の発表と同じ時期、米国シンクタンクである世界開発センター(CGD)は、「開発コミットメント指数(CDI)」の2004年版を発表した。CDIは先進国の開発への総合的取組みを示す分野として七つを挙げているが、平和構築やODA、貿易開放度、環境対策等と並び、「移動人口の受け入れ」も指標に取り上げられた。

 民間レベルで先進国から途上国に向けて行なわれるこのような所得移転は、確かに途上国の開発プロセスに必要な資源動員のチャンネルとして重要ではあろう。しかし、それが途上国の貧困削減に貢献するものなのか、明確な結論は出ていない。

 外国送金は短期的には途上国の所得格差を拡大させる方向に向かうと考えられる。第一に、途上国の労働者が海外に出稼ぎに出るためには、仲介者に対して相当巨額な手数料を納めなければならない。自己資金に乏しい場合は借金をして渡航するのであるが、それには資金を集められるだけの信用力が当該労働者になければならない。海外渡航可能な労働力は、当該送出国における最貧困層に属しているわけではないと考えられる。第二に、渡航が実現して海外送金を母国に向けて始めたとしても、元々最貧困層に属さない出稼ぎ労働者が行なう母国の家族向け送金は、最貧困層に属さない家族の中での資源の移転に過ぎないため、所得階層的には中下位以上に相当する層の生活向上には繋がるが、最貧困層との生活格差はかえって拡大する恐れがある。民間レベルでの所得移転が送出国国内に乗数効果をもたらし、国内経済全体が成長することでその恩恵は最貧困層にも波及するかもしれない。しかし、出稼ぎ送金は少なくとも送出国の最貧困層への直接所得移転ではない。

 我が国の外国人労働受け入れ容認論で想定されている看護・介護分野の労働者の送出国はフィリピンであるが、現在日本政府側が主張している日本の資格取得という条件には、それを取得するのに必要な費用が当然かかることを考慮すべきである。資格を取得するのに必要な人的投資が可能な可処分所得を持つ階層は中下位よりもさらに上の所得階層と考えられるため、こうした条件を付けることはフィリピン国内の所得格差を何も条件を付けない時以上に拡大させるのではないかと懸念する。

 さらに、フィリピン国内の空洞化の懸念もある。フィリピンの看護・介護分野の最も優れた人材が比較的恵まれた他国の賃金に惹かれて海外流出すると、残るのは渡航機会に恵まれない質がやや劣る人材であり、渡航した労働者が以前勤めていた職場を直ちに国内の残留労働力で代替することは難しく、生産能力の低下を免れないのではないか。実際、フィリピン看護師の海外流出の原因は国内外の賃金格差に加え、自国内の劣悪な就労環境にあるといわれている。看護師1人が世話をする患者数は1シフト当り100人以上で、理想とされる15人を大きく上回っている。フィリピンから看護師として出稼ぎに出る労働者数は約1万3500人で国内での就業は数百人程度であり、この職種は専ら海外での就業機会狙いであることは明らかであるが、その中で最も劣悪な労働力がフィリピンに残留するとしたら、我が国のフィリピン人労働受け入れは同国の看護サービスの劣化を助長するのではないか。

 こうして見てくると、送出に積極的な政府の姿勢とは裏腹に、フィリピンの社会構造を勘案しても我が国の受け入れは慎重に行なう必要があるように思う。経済学では、資本や労働力といった生産要素の完全可動性は生産要素の価格を世界的に均等化する方向に機能すると言われているが、要素価格の均等化は、貿易が完全に自由に行なわれることでも実現可能である。自由貿易によっても途上国の賃金上昇と雇用機会創出が得られるのである。そもそも、労働移動が増える理由は途上国国内での投資不足や雇用不安といった問題にある。投資増と雇用促進を促すために我が国にできることは、輸出産品に対する市場開放やではないか。


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