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『上京物語』 [読書日記]

私事だが、うちの長男が7日に大学の入学式を迎えた。昨年全滅した大学受験。捲土重来を期して臨んだ今年は、1校を除いて全て合格し、第二志望だった大学に入学することになった。異国で単身赴任中の父親としては何も力になってやれなかったけれど、自分自身の力でここまでやってきたことは称賛に値する。失敗も良い経験として、これからの大学生活に臨んでくれるものと期待したい。

以前、喜多川泰著『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』をご紹介した際、この本、浪人生活確定で高校卒業を迎えた長男に、気分転換で読んでみたらと言って薦めたと書いた。結局読んでくれたのかどうかはいまだにわからない。それから1年経ち、大学生になった長男に、父親として贈ることができそうな気の利いたメッセージは僕自身の言葉としてはなかなか思いつかない。やっぱり喜多川泰の著書でも読んでみたらとは言いたい気持ちはある。押し付けがましさは多少あるけれど、今の長男の境遇からすればそれも許されるタイミングだろう。一浪の末に大学に合格し、親元を離れて東京に向かう「祐輔」が主人公となるこんな本がいいかなと思う。

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

  • 作者: 喜多川 泰
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2009/02/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
夢を夢で終わらせないために……。自分にしかできない生き方を見つけたいあなたに贈る、五つの新常識と三つの方法。魂を揺さぶるメッセージで読者の心を惹きつける喜多川泰氏の最新刊!
<こんなストーリー>
成功を夢見て上京した青年、祐介。いい暮らしがしたい。かっこいい車に乗りたい。自分の家が欲しい。誰もが思い描く「理想の人生」を追い求めていたはずだったのだが……。大きな希望に胸を膨らませながら人生のスタートラインに立ったのに、みんなが当たり前だと思っている常識に流されて生きていくうちに、いつのまにか夢を忘れ、「こんなはずじゃなかったのに……」と後悔する。そんな多くの人が陥りがちな生き方を打ち破るには、何をすべきなのか?本当の幸せをつかむための考え方、心の持ち方とは?父から息子へ贈る渾身の手紙によって、夢を実現する「成功者」の生き方が少しずつ解き明かされていく!

1つだけうちの長男と置かれた状況が違うのは、本書で出てくる「祐輔」というのは、地方出身者で親元を離れて一人暮らしを始めることになっていること。うちの長男は東京生まれで、大学も都内なので、取りあえずは自宅から通学するらしい。「祐輔」の父親が息子に贈った手紙の中で出てくる架空の人物「祐介」が羨んだ、自宅通学、自宅通勤でお金が貯まりやすいという状況にはうちの長男はあるわけだが、だからといって本書が読者に伝えたいメッセージが、うちの長男には当てはまらないというわけではない。

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タグ:喜多川泰
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『なぜデータ主義は失敗するのか?』 [読書日記]

なぜデータ主義は失敗するのか?:人文科学的思考のすすめ

なぜデータ主義は失敗するのか?:人文科学的思考のすすめ

  • 作者: クリスチャン・ マスビェア
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
ブレインストーミングからデザイン思考、ビッグデータまで、魔法のビジネスツールはどうして難局を乗り越えられないのか。人文科学的思考法をビジネスの場で用いるというのは、具体的にはどういうことなのか。データ分析だけでは激動の状況に対応できない。ならばどうすればいいか…多数の一流企業と協働するコンサルタントが明かす、難局を乗り越える思考法。

今週、春休み期間中の新中学二年生の次男からLINE電話で取材を受けた。お父さんの仕事について話を聞かせて欲しいとのこと。春休みの宿題というやつで、仕事について考えるという企画だったようで、いろいろ聞かれたが、その中の1つに、「お父さんのような仕事をするには、大学でどんなことを勉強したらいいのか」というのが含まれていた。

僕は、「(うちの三人兄弟の中で最も人たらしである)君に最も向いているのは文化人類学か社会学だろう。それに統計学をちゃんと勉強しておくとよい」というような回答をした。加えて歴史に関する深い造詣があるとお父さんの仕事にはかなり役に立つけど。

歴史の部分はともかくとして、ここで僕が愚息に対して言わんとしたことが、決して僕の今やっている仕事に直結してくるわけではない。僕は文化人類学も統計学も、系統立った勉強をしてきたわけではなく、必要に駆られて後から自分でかじったという程度のものでしかない。ただ、後者に関しては、今の世の中がこれだけ「ビッグデータ」「オープンデータ」と言われている中で、どの業界を目指すにしてももそれなりに必要とされる知識であろうというのは理解されやすいだろう。

では文化人類学はどうか。僕の今身を置く業界では大学時代に文化人類学を勉強したという人は結構多い。統計学的に有意に多いだろう。でも、「父親と同じような仕事を目指すなら」という仮定を取り除いても、文化人類学の適用可能範囲はもっと幅広いのではないかと思う。

本書はまさにそこの部分を主張している。タイトルが「データ主義=失敗」を想起させる点については納得いかないが、内容的には人の行動の背景を理解することも重要だということで、二者択一ではなくどちらも必要ということを言わんとしているのではないかと思える。

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『少しだけ、おともだち』 [読書日記]

少しだけ、おともだち

少しだけ、おともだち

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/10
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより) ほんとうに仲よし?ご近所さん、同級生、同僚―。物心ついたころから、「おともだち」はむずかしい。微妙な距離感を描いた8つの物語。

「忙しい」のを盛んに言い訳にするブータン人の前ではあまり言いたくはないが、僕もここ数週間、非常に忙しくかった、というのをゆっくり本を読んでいる時間もなかった言い訳にしたい衝動に駆られる。本読んでないのに新聞記事は盛んに読んで、ブログで紹介記事を挙げてるじゃないかというツッコミは飛んできそうだが。

ちょっとキザなセリフを吐かせてもらうと、こちらに来てから日本語を使う頻度よりも英語を使う頻度の方が高くなったせいか、それとも単に加齢のせいか、とにかく日本語の文章がスラスラ書けなくなった。昔はブログで1つ記事を書こうと思うと、4パラ構成でどうやって起承転結を描くか、楽に考えることができた。ところが今では1つの記事を書くための構成を考え、文章をひねり出すのにすごいエネルギーを消耗するようになった。考えがなかなかまとまらないのはきっと加齢のせいで、スラスラ文章が書けないのは普段の会話で日本語をあまり使わないからだろう。

さらに気になっているのは、日本語の文章が書けないどころか、日本語の文章が読めなくなってきていることだ。クソ長い日本語のメールに対する拒否反応は10年以上前から僕にはあり、当時のブログではこんな冗長なメールを上司に送信してきて報連相やったと言い張る部下に対する嫌悪感をあからさまに述べたこともある。そんなことで時間を費やすぐらいなら、サシで議論した方がよほど本人のためにも良いが、残念ながら報連相や意見交換をメールで行う人は今でも多い。それが行動様式化して染みついてしまっているのだろうから仕方がない。

あれ?また下手な駄文を書いてしまったかも。問題は、このクソ長いメールの文章に対する拒否反応は、単に書き手のためにならないということではなく、僕の頭の中にスラスラ入って来ないという読み手側の事情もある。メールを開けて、文章がクソ長かった時点で既に僕の心が閉ざされてしまうというのもあるが、辛抱して読もうとしても、集中力が続かない。きっと加齢(また)のせいもあるのだろう。

お待たせしました。そこでようやく本題である―――。

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タグ:朝倉かすみ
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『海外でデザインを仕事にする』 [読書日記]

海外でデザインを仕事にする

海外でデザインを仕事にする

  • 編者: 岡田 栄造
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 単行本
内容紹介
自分なりのスケールで世界に確かな存在感を示す14人のデザイナーによるエッセイ。
IDEOの欧米オフィスを渡り歩いた職人的仕事術、Googleのアートディレクターに至る紆余曲折、テキスタイルの可能性を探る北欧のアトリエ風景、制約だらけの途上国のファブラボでの奮闘・・・
フィールドに飛び込み領域を切り拓く先駆者からのメッセージ。

1月に出たばかりの本だが、知り合いの方が2人、本書にエッセイを寄稿されているので、2月に日本に帰った時に1冊購入してブータンに持って来ることにした。大きくは欧米で働いておられた方と、中国、シンガポール、フィリピン、ガーナ等の国々に足を運んだ方々とに分けられる気がする。

僕ら中年世代は「デザイン」というと本当に狭い意味でのデザインしかイメージできないことが多いが、2年ほど前に大騒ぎになった新国立競技場の建設問題でもちょっとだけ垣間見れたように、1つの建物が出来上がるためには様々なステークホルダーとの調整も出てくる。単に建造物のデザインだけでなく、それに関わる人々全ての役割を定義して、全体を俯瞰できるデザインである必要がある。

本書で登場する多くの執筆協力者が、大学でデザインを勉強して、取りあえずメーカーに就職して働き始めてみたものの、全体の中の一部のみのデザインをやらされていて、そのうちに全体のデザインをやりたくなって会社を辞め、海外に飛び出していったという点では共通性がある。単に白い画用紙の上にスケッチを描くだけでなく、実際のステークホルダーとの調整も入ってくる。デザイナーというよりも、ひょっとしたら「トータルコーディネーター」と言った方がいいのかもしれない。

どこの国に行っても、何をやろうとしても、本当にそこに必要と思われる仕事は、複数のステークホルダー、省庁、企業、住民/市民等にまたがることが多い。それまでつながっていなかったもの、なかなかつながれなかったものをつなぎ合わせることで、今までとは違う何かが生まれてくる―――そう思えることは多いけれど、実際にそれを実現させるのは大変なことだと思う。当事者はわかっていてもできてこなかったケースも少なくない。そういうことはブータンに住んでいてもよく直面する。必要なのにできてないのがわかっているから、政府は「コーディネーション」や「コラボレーション」を強調するのだろう。

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『アメリカは食べる。』 [読書日記]

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカじゅうのどこの食堂でも朝食のメニューの中身がほとんど同じなのはなぜか? アメリカ料理に季節感や地方色が希薄なのはなぜか? アメリカに醗酵食品が少ないのはなぜか?…移民国家として独自の文化を築き上げたアメリカ合衆国の食にまつわる数々の謎を、アメリカ文化に精通した著者が、みずからの旅を通じて一つひとつ紐解いていく。食の百科全書!

今回の一時帰国の往路、最初の本を読み終わり、次に手を付けたのが本書である。736ページと大部な1冊を、そもそもなんで米国と縁もゆかりもない、国交すらないブータンに持って行っていたかというと、昨年4月の赴任の直前、義理の父から「読んだら」と餞別代りに手渡されたからであった。

なんで義父がこの本を僕に渡されたかというと、学生時代の僕の留学先がルイジアナ州であり、本書の中でも度々取り上げられる、ガンボーやジャンバラヤ、ボー・ボーイ、グリッツといった南部ならではの料理を、半ば日常的に食べていたことを、義父はご存知であったからだろうと思われる。僕がこのブログを始めたのは今からちょうど12年前であるが、ブログが急速に普及する以前、僕は米国に3年間駐在した経験があり、その時にも義父は僕らを訪ねて米国に来られ、その際にニューオリンズからミシシッピー・リバーロードのプランテーションを旅した。そうしたご記憶もあっての、本書の推薦だったことだろう。

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タグ:米国 東理夫
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『本当の強さとは何か』 [読書日記]

本当の強さとは何か

本当の強さとは何か

  • 作者: 増田俊也X中井祐樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
格闘技界最大レジェンドの「真の強さ」に、大宅賞作家が肉薄する最強本! 柔道と柔術を極めた伝説の格闘家と、木村政彦の遺志を伝え続ける作家による最強対談。相手の反則により、24歳で片目失明により総合格闘家を引退するも、数年後には柔術家として復活。日本柔術界トップとして多くの弟子を育てている中井の「強さ」の神髄に増田が迫る。二人が共に汗を流した、七帝柔道(北大)の秘話も満載!

先日の『VTJ前夜の中井祐樹』ご紹介の際に書かなかったが、僕の友人で世代的には既に40代を間違いなく迎えているのに、今も総合格闘技の試合に出ている人がいる。なんで中高年になっても格闘技が続けられるのか、それが剣道や合気道だったらわかるのだが、総合となるとキックやパンチが飛んでくるんだろうから、相当な覚悟がいると思う。友人といっても今はお互い異国に住んでいるので接点は多くはないが、最近Facebookでシェアされた映像を見ていると、MMA(混合格闘技)用のマットで、時にパンチグローブやキック用のパッドを付けて練習していたり、かと思うと柔道に似た道着を着用して寝技の練習をしていたりする。「総合」というからにはどんな格闘技にも対応できる幅の広いテクニックが求められるのだろう。

さて、本日ご紹介の本は、先日の『VTJ前夜の中井祐樹』のバーリトゥード・ジャパン・オープン95の惨劇から後の中井祐樹の歩みを垣間見ることができる1冊である。また、ある意味では、『七帝柔道記』以降の増田俊也の歩みを知ることのできる1冊ともいうことができる。

本書の前書きで、増田は「対談しているときから感じてはいたが、こうして活字になると、中井の言葉の切れ味の凄みはあらゆる人生啓蒙書を圧倒している。(中略)私としてはそういった専門誌で語っている言葉を少しレベルを落として一般向けに語ってくれればと思っていたが、実際には中井は格闘技雑誌にさえ語っていない厳しい言葉を、核心をついて語っている」と書いている。上記の書籍紹介にも、「中井の「強さ」の神髄に増田が迫る」とある。

この言葉を鵜呑みにして読み始めると、冒頭から随分と戸惑いを感じる。対談となっているが、全体の7~8割は増田がしゃべっている。中井が寡黙だというのもあるのかもしれないが、増田の問いかけが「俺は~~だと思うんだけど違うか」ってな自分の持つ仮説を先ず述べて、それに対して中井の同意を求めるパターンがだいたい決まっている。中井が「そうですね」と短く答えるセリフが頻繁に出てくる。中井の生の言葉の切れ味がどうこうって、そもそも中井の言葉を引き出せていない。むしろ、増田が持つ「中井祐樹」観、あるいは格闘技観等を確認、実証している1冊となっている気がする。だからといって、本書が読む価値がないとは全く思わないが。

1995年のVTJで右目を失明してからの中井祐樹の歩みを知ることができたこと、それと、中高年になっても総合格闘技の試合に出場している僕の知人がなぜそれができるのか、その理由を垣間見ることができたことが本書の収穫だといえる。なお、増田はパラエストラをWindowsに例えているが、僕はむしろiPhoneのオープンソースに似てるかなという気がした。全国各地にパラエストラの道場ができ、各々がその技術を磨いて独自の発展を遂げ、それが短期間で普及してしまうというのも、ブラジリアン柔術のオープンソースの性格を如実に示しているようで面白かった。
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『VTJ前夜の中井祐樹』 [読書日記]

VTJ前夜の中井祐樹

VTJ前夜の中井祐樹

  • 作者: 増田俊也
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2014/12/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
格闘技史に残る伝説の大会を軸に、北大柔道部の濃密な人間関係を詩情豊かに謳いあげた『VTJ前夜の中井祐樹』。天才柔道家・古賀稔彦を8年かけて背負い投げで屠った堀越英範の生き様を描いた『超二流と呼ばれた柔道家』。さらに、ヒクソン・グレイシー、東孝、猪熊功、木村政彦ら、生者と死者が交錯する不思議な一夜の幻想譚『死者たちとの夜』。巻末に北大柔道部対談を併録。人間の生きる意味を問い続ける作家、増田俊也の原点となる傑作ノンフィクション集。

今から3年前、このブログで『七帝柔道記』をご紹介した時、「本書は著者の大学2年目の7月までしか描かれていないが、その後の著者がどうなっていったのか、登場した人々がその後どうなったのかについては全く言及がない」と僕は述べている。また、「寝技中心の柔道―――もし七帝柔道出身者がその後プロレスの門を叩いたら、「関節技の鬼」藤原喜明や、当時新日本プロレスが招聘していた旧ソ連のサンボ出身のレスラー達とも相当いい勝負をしていたに違いない。立ち技中心の格闘技と違い、絞め技や関節技は地味でわかりにくく、面白くないのかもしれないが、当時は既に関節技やガチンコ勝負に関心も集まり始めていたので、旧帝大出身のプロレスラーも注目を集めていたことだろう」とも書いていた。

僕の不明を恥じた。著者増田俊也の3期後の副主将に、その後総合格闘技に進んだ中井祐樹がいたことを、その時にはあまり知らなかった。しかも、著者はその後もこの「七帝柔道サーガ」とも呼べる人間模様を、様々な形で描き続けていた。著者の在学中、北大は念願だった七帝戦最下位脱出を著者4年目の代で果たし、それから3年後、久々の七帝戦優勝を勝ち取る。中井はその年の副主将で、七帝戦優勝を機に北大を中退し、佐山聡(初代タイガーマスク)が立ち上げた「シューティング」の門を叩いている。プロシューターとしては短命に終わってしまうが、日本の格闘界に与えたインパクトは非常に大きかったらしい。

僕は中井がジェラルド・ゴルドーと対戦してゴルドーのサミングによって右目を失明する事態に陥りながらも勝利し、決勝で当時最強と言われたヒクソン・グレイシーと対戦するに至った「バーリ・トゥード・ジャパン・オープン95」というのを、僕は覚えていない。結婚の準備に忙しかった頃だし、それ以前に当時それほど総合格闘技というものに興味もなかったので、注目して見ていなかったのだろう。僕が総合格闘技を見始めたのは、2003年末に須藤元気がバタービーンを下したK1-Dynamiteの1戦からなので、約10年くらいのブランクがある。その間にどのような出来事があったのかは、本書を読むまで知らなかった。

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『武曲』 [読書日記]

武曲 (文春文庫)

武曲 (文春文庫)

  • 作者: 藤沢 周
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
羽田融はヒップホップに夢中な北鎌倉学院高校二年生。矢田部研吾はアルコール依存症で失職、今は警備員をしながら同校剣道部のコーチを務める。友人に道場に引っ張られ、渋々竹刀を握った融の姿に、研吾は「殺人刀」の遣い手と懼れられた父・将造と同じ天性の剣士を見た。剣豪小説の新時代を切り拓いた傑作。

先週の今頃、雑誌Numberのウェブ版で本書が紹介されているのを見て、週末読書で読んじまおうと思って電子書籍版を早速購入、読み始めた。文庫版でも490頁もある大作であること、加えて作品に硬派感を出すためかやたらと画数の多い漢字を多用していて、読んでてゴツゴツ躓くことも多く、意外と読み進めるのに時間がかかってしまった。一気読みというわけにはいかなかった。

あらすじはNumberのウェブ版の書評をご覧いただければなんとなくイメージできるのではないかと思う。また、この作品は今年6月に綾野剛、村上虹郎主演で映画化されるらしいので、その作品紹介動画でもイメージしやすいのではないかと思う。
http://number.bunshun.jp/articles/-/827176



さて、肝心の中身であるが、難解な漢字表記、剣道で使われている四字熟語を多用していて、かなり硬派な内容になっている。また、編集者もおそらくそれが作品世界を表現する最適な道だと認めて、難しい漢字も敢えてそのまま載せているのだろう。これだけ硬派な仕上がりにしても、コアな読者は必ずついてくるだろうという強い確信があってのことだろう。

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タグ:剣道
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『マラソンマン』 [読書日記]

高木一馬は、負けず嫌いの小学3年生。その父・勝馬は、かつてはマラソンのトップ・ランナーだったが、今は酒とギャンブルの負け犬人生を送っている。そんな2人に、突然、離別の危機がおとずれた。父と子の絆と、過去の栄光をとりもどすため、勝馬は、ついに再起の道を歩みだす!幻のランナー、奇跡のカムバックなるか!?井上正治の情熱のマラソン・ストーリー、スタート!

10月末、第1巻を読んでから、ここまで約2カ月かけて全19巻を読み切った。この作品が週刊少年マガジン誌に連載されたのは1993年半ばで、僕は一念発起して出場した1992年12月の第20回ホノルルマラソンを走り終え、次の目標と定めていた、「30歳で伊良湖トライアスロン挑戦」という夢に向けて、準備を重ねていた頃のことだった。

当時は未だ独身だったし、残業が多い会社から転職して比較的時間の融通が利く会社に移った頃だったから、朝6時台で10kmを走ってから出勤するというのがいつものパターンで、月間走行距離は200kmを越え、しかも懸案だったオーシャンスイミングに向けて、プールでの練習も相当積んでいた。

当時の日本の陸上長距離界は、92年のバルセロナ五輪で男子は森下、女子は有森が銀メダルを獲得し、世界最強のマラソン王国と見られていた。東京マラソンが火をつけたランニングブームは今も健在だが、当時はこうした陸上長距離界の活況が市民のマラソン熱を引っ張っていたように思う。僕の場合は、26歳(1989年)の初秋、季節の変わり目で体調を崩して寝込んでいた時にテレビで見た伊良湖トライアスロンが自分のだらしなさを痛感させ、1991年の秋に始まった第1回東京シティマラソン(ハーフ)の募集が、具体的に大会出場を目標にして、走り込みを始めるきっかけだった。東京シティマラソンは申込みが間に合わなかったので、代わりに出た最初のマラソン大会が1992年1月のサンスポ千葉マリンマラソンだった。

当時はランニングの月刊誌は読み漁っていたし、そういった中で連載が始まった『ランニングマン』も、第1部の高木勝馬の復活劇から、第2部で大学生になっていた息子・一馬のライバルとしてY学院大学のロジェ・ミルバが登場するところまでは、少年マガジンで読んでいたように思う。僕がマガジンと縁を切るきっかけは1995年の結婚と海外赴任だったので、全19巻中、9巻から10巻あたりまでが、僕の記憶で辛うじて残っているギリギリのところだといえる。

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『みかづき』 [読書日記]

みかづき

みかづき

  • 作者: 森 絵都
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/09/05
  • メディア: 単行本
内容紹介
「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」――昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。
阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」
驚嘆&絶賛の声、続々!昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。

「驚嘆&絶賛の声」に参加させて下さい。本当は週末読書は前回ご紹介した『X'mas Stories』に限定するつもりだったのだが、久し振りにジムでトレッドミルに乗るにあたって、1時間ゆっくり走りながら読める本ということで、土曜日に『みかづき』のKindle版を購入して読み始めたところ、日曜午後に続きを読み始めてそのままハマってしまい、日曜午後の予定をすべてキャンセルして読み続け、夜20時前にようやく読了した次第。それほどにのめり込む作品。

お話はほとんどが千葉県内、八千代、習志野、船橋、津田沼あたりで完結しているが、話のスケールは壮大である。ストーリーの始まりは昭和36年(1961年)。そこから、55年にもわたる長いお話であるが、実際には赤坂家の千明と父親との戦前のやり取りの回想シーンなども出てくるので、さらに20年近く長い。当然、その間に政府がその政策遂行の柱として教育制度をどのように捉え、どのようにそれを操作していったのかも描かれている。途中何が何だかわからなくなったが、それは僕自身がこの国の教育政策の変遷と、それが社会からどのように見られていたのかをしっかり知らないで読んでいるからそういう事態に陥るのである。

特に千明さんが何故そこまで文部省を敵視するのか、なぜそれが千明さんだけだったのか、同じ世代で教員をやっているような人は、同じように感じたりはして来なかったのか。また、千明さん絡みで言えば、吾郎さんが千明さんや事務室長の策謀により塾長を追われて退場する前と後で、千明さんの描かれ方に大きな変化が見られて戸惑った。吾郎さん目線で見た千明さんて、目が鋭すぎて鋭利な刃物みたいだったとあるが、吾郎さん退場の後、話が千明さん目線に移った途端、鋭利な刃物というよりは、きついオバサンという感じで捉えられてしまうようになった。この目線の変更には正直戸惑った。

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タグ:千葉 森絵都
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