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『少しだけ、おともだち』 [読書日記]

少しだけ、おともだち

少しだけ、おともだち

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/10
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより) ほんとうに仲よし?ご近所さん、同級生、同僚―。物心ついたころから、「おともだち」はむずかしい。微妙な距離感を描いた8つの物語。

「忙しい」のを盛んに言い訳にするブータン人の前ではあまり言いたくはないが、僕もここ数週間、非常に忙しくかった、というのをゆっくり本を読んでいる時間もなかった言い訳にしたい衝動に駆られる。本読んでないのに新聞記事は盛んに読んで、ブログで紹介記事を挙げてるじゃないかというツッコミは飛んできそうだが。

ちょっとキザなセリフを吐かせてもらうと、こちらに来てから日本語を使う頻度よりも英語を使う頻度の方が高くなったせいか、それとも単に加齢のせいか、とにかく日本語の文章がスラスラ書けなくなった。昔はブログで1つ記事を書こうと思うと、4パラ構成でどうやって起承転結を描くか、楽に考えることができた。ところが今では1つの記事を書くための構成を考え、文章をひねり出すのにすごいエネルギーを消耗するようになった。考えがなかなかまとまらないのはきっと加齢のせいで、スラスラ文章が書けないのは普段の会話で日本語をあまり使わないからだろう。

さらに気になっているのは、日本語の文章が書けないどころか、日本語の文章が読めなくなってきていることだ。クソ長い日本語のメールに対する拒否反応は10年以上前から僕にはあり、当時のブログではこんな冗長なメールを上司に送信してきて報連相やったと言い張る部下に対する嫌悪感をあからさまに述べたこともある。そんなことで時間を費やすぐらいなら、サシで議論した方がよほど本人のためにも良いが、残念ながら報連相や意見交換をメールで行う人は今でも多い。それが行動様式化して染みついてしまっているのだろうから仕方がない。

あれ?また下手な駄文を書いてしまったかも。問題は、このクソ長いメールの文章に対する拒否反応は、単に書き手のためにならないということではなく、僕の頭の中にスラスラ入って来ないという読み手側の事情もある。メールを開けて、文章がクソ長かった時点で既に僕の心が閉ざされてしまうというのもあるが、辛抱して読もうとしても、集中力が続かない。きっと加齢(また)のせいもあるのだろう。

お待たせしました。そこでようやく本題である―――。

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『海外でデザインを仕事にする』 [読書日記]

海外でデザインを仕事にする

海外でデザインを仕事にする

  • 編者: 岡田 栄造
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 単行本
内容紹介
自分なりのスケールで世界に確かな存在感を示す14人のデザイナーによるエッセイ。
IDEOの欧米オフィスを渡り歩いた職人的仕事術、Googleのアートディレクターに至る紆余曲折、テキスタイルの可能性を探る北欧のアトリエ風景、制約だらけの途上国のファブラボでの奮闘・・・
フィールドに飛び込み領域を切り拓く先駆者からのメッセージ。

1月に出たばかりの本だが、知り合いの方が2人、本書にエッセイを寄稿されているので、2月に日本に帰った時に1冊購入してブータンに持って来ることにした。大きくは欧米で働いておられた方と、中国、シンガポール、フィリピン、ガーナ等の国々に足を運んだ方々とに分けられる気がする。

僕ら中年世代は「デザイン」というと本当に狭い意味でのデザインしかイメージできないことが多いが、2年ほど前に大騒ぎになった新国立競技場の建設問題でもちょっとだけ垣間見れたように、1つの建物が出来上がるためには様々なステークホルダーとの調整も出てくる。単に建造物のデザインだけでなく、それに関わる人々全ての役割を定義して、全体を俯瞰できるデザインである必要がある。

本書で登場する多くの執筆協力者が、大学でデザインを勉強して、取りあえずメーカーに就職して働き始めてみたものの、全体の中の一部のみのデザインをやらされていて、そのうちに全体のデザインをやりたくなって会社を辞め、海外に飛び出していったという点では共通性がある。単に白い画用紙の上にスケッチを描くだけでなく、実際のステークホルダーとの調整も入ってくる。デザイナーというよりも、ひょっとしたら「トータルコーディネーター」と言った方がいいのかもしれない。

どこの国に行っても、何をやろうとしても、本当にそこに必要と思われる仕事は、複数のステークホルダー、省庁、企業、住民/市民等にまたがることが多い。それまでつながっていなかったもの、なかなかつながれなかったものをつなぎ合わせることで、今までとは違う何かが生まれてくる―――そう思えることは多いけれど、実際にそれを実現させるのは大変なことだと思う。当事者はわかっていてもできてこなかったケースも少なくない。そういうことはブータンに住んでいてもよく直面する。必要なのにできてないのがわかっているから、政府は「コーディネーション」や「コラボレーション」を強調するのだろう。

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『アメリカは食べる。』 [読書日記]

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカじゅうのどこの食堂でも朝食のメニューの中身がほとんど同じなのはなぜか? アメリカ料理に季節感や地方色が希薄なのはなぜか? アメリカに醗酵食品が少ないのはなぜか?…移民国家として独自の文化を築き上げたアメリカ合衆国の食にまつわる数々の謎を、アメリカ文化に精通した著者が、みずからの旅を通じて一つひとつ紐解いていく。食の百科全書!

今回の一時帰国の往路、最初の本を読み終わり、次に手を付けたのが本書である。736ページと大部な1冊を、そもそもなんで米国と縁もゆかりもない、国交すらないブータンに持って行っていたかというと、昨年4月の赴任の直前、義理の父から「読んだら」と餞別代りに手渡されたからであった。

なんで義父がこの本を僕に渡されたかというと、学生時代の僕の留学先がルイジアナ州であり、本書の中でも度々取り上げられる、ガンボーやジャンバラヤ、ボー・ボーイ、グリッツといった南部ならではの料理を、半ば日常的に食べていたことを、義父はご存知であったからだろうと思われる。僕がこのブログを始めたのは今からちょうど12年前であるが、ブログが急速に普及する以前、僕は米国に3年間駐在した経験があり、その時にも義父は僕らを訪ねて米国に来られ、その際にニューオリンズからミシシッピー・リバーロードのプランテーションを旅した。そうしたご記憶もあっての、本書の推薦だったことだろう。

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『本当の強さとは何か』 [読書日記]

本当の強さとは何か

本当の強さとは何か

  • 作者: 増田俊也X中井祐樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
格闘技界最大レジェンドの「真の強さ」に、大宅賞作家が肉薄する最強本! 柔道と柔術を極めた伝説の格闘家と、木村政彦の遺志を伝え続ける作家による最強対談。相手の反則により、24歳で片目失明により総合格闘家を引退するも、数年後には柔術家として復活。日本柔術界トップとして多くの弟子を育てている中井の「強さ」の神髄に増田が迫る。二人が共に汗を流した、七帝柔道(北大)の秘話も満載!

先日の『VTJ前夜の中井祐樹』ご紹介の際に書かなかったが、僕の友人で世代的には既に40代を間違いなく迎えているのに、今も総合格闘技の試合に出ている人がいる。なんで中高年になっても格闘技が続けられるのか、それが剣道や合気道だったらわかるのだが、総合となるとキックやパンチが飛んでくるんだろうから、相当な覚悟がいると思う。友人といっても今はお互い異国に住んでいるので接点は多くはないが、最近Facebookでシェアされた映像を見ていると、MMA(混合格闘技)用のマットで、時にパンチグローブやキック用のパッドを付けて練習していたり、かと思うと柔道に似た道着を着用して寝技の練習をしていたりする。「総合」というからにはどんな格闘技にも対応できる幅の広いテクニックが求められるのだろう。

さて、本日ご紹介の本は、先日の『VTJ前夜の中井祐樹』のバーリトゥード・ジャパン・オープン95の惨劇から後の中井祐樹の歩みを垣間見ることができる1冊である。また、ある意味では、『七帝柔道記』以降の増田俊也の歩みを知ることのできる1冊ともいうことができる。

本書の前書きで、増田は「対談しているときから感じてはいたが、こうして活字になると、中井の言葉の切れ味の凄みはあらゆる人生啓蒙書を圧倒している。(中略)私としてはそういった専門誌で語っている言葉を少しレベルを落として一般向けに語ってくれればと思っていたが、実際には中井は格闘技雑誌にさえ語っていない厳しい言葉を、核心をついて語っている」と書いている。上記の書籍紹介にも、「中井の「強さ」の神髄に増田が迫る」とある。

この言葉を鵜呑みにして読み始めると、冒頭から随分と戸惑いを感じる。対談となっているが、全体の7~8割は増田がしゃべっている。中井が寡黙だというのもあるのかもしれないが、増田の問いかけが「俺は~~だと思うんだけど違うか」ってな自分の持つ仮説を先ず述べて、それに対して中井の同意を求めるパターンがだいたい決まっている。中井が「そうですね」と短く答えるセリフが頻繁に出てくる。中井の生の言葉の切れ味がどうこうって、そもそも中井の言葉を引き出せていない。むしろ、増田が持つ「中井祐樹」観、あるいは格闘技観等を確認、実証している1冊となっている気がする。だからといって、本書が読む価値がないとは全く思わないが。

1995年のVTJで右目を失明してからの中井祐樹の歩みを知ることができたこと、それと、中高年になっても総合格闘技の試合に出場している僕の知人がなぜそれができるのか、その理由を垣間見ることができたことが本書の収穫だといえる。なお、増田はパラエストラをWindowsに例えているが、僕はむしろiPhoneのオープンソースに似てるかなという気がした。全国各地にパラエストラの道場ができ、各々がその技術を磨いて独自の発展を遂げ、それが短期間で普及してしまうというのも、ブラジリアン柔術のオープンソースの性格を如実に示しているようで面白かった。
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『VTJ前夜の中井祐樹』 [読書日記]

VTJ前夜の中井祐樹

VTJ前夜の中井祐樹

  • 作者: 増田俊也
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2014/12/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
格闘技史に残る伝説の大会を軸に、北大柔道部の濃密な人間関係を詩情豊かに謳いあげた『VTJ前夜の中井祐樹』。天才柔道家・古賀稔彦を8年かけて背負い投げで屠った堀越英範の生き様を描いた『超二流と呼ばれた柔道家』。さらに、ヒクソン・グレイシー、東孝、猪熊功、木村政彦ら、生者と死者が交錯する不思議な一夜の幻想譚『死者たちとの夜』。巻末に北大柔道部対談を併録。人間の生きる意味を問い続ける作家、増田俊也の原点となる傑作ノンフィクション集。

今から3年前、このブログで『七帝柔道記』をご紹介した時、「本書は著者の大学2年目の7月までしか描かれていないが、その後の著者がどうなっていったのか、登場した人々がその後どうなったのかについては全く言及がない」と僕は述べている。また、「寝技中心の柔道―――もし七帝柔道出身者がその後プロレスの門を叩いたら、「関節技の鬼」藤原喜明や、当時新日本プロレスが招聘していた旧ソ連のサンボ出身のレスラー達とも相当いい勝負をしていたに違いない。立ち技中心の格闘技と違い、絞め技や関節技は地味でわかりにくく、面白くないのかもしれないが、当時は既に関節技やガチンコ勝負に関心も集まり始めていたので、旧帝大出身のプロレスラーも注目を集めていたことだろう」とも書いていた。

僕の不明を恥じた。著者増田俊也の3期後の副主将に、その後総合格闘技に進んだ中井祐樹がいたことを、その時にはあまり知らなかった。しかも、著者はその後もこの「七帝柔道サーガ」とも呼べる人間模様を、様々な形で描き続けていた。著者の在学中、北大は念願だった七帝戦最下位脱出を著者4年目の代で果たし、それから3年後、久々の七帝戦優勝を勝ち取る。中井はその年の副主将で、七帝戦優勝を機に北大を中退し、佐山聡(初代タイガーマスク)が立ち上げた「シューティング」の門を叩いている。プロシューターとしては短命に終わってしまうが、日本の格闘界に与えたインパクトは非常に大きかったらしい。

僕は中井がジェラルド・ゴルドーと対戦してゴルドーのサミングによって右目を失明する事態に陥りながらも勝利し、決勝で当時最強と言われたヒクソン・グレイシーと対戦するに至った「バーリ・トゥード・ジャパン・オープン95」というのを、僕は覚えていない。結婚の準備に忙しかった頃だし、それ以前に当時それほど総合格闘技というものに興味もなかったので、注目して見ていなかったのだろう。僕が総合格闘技を見始めたのは、2003年末に須藤元気がバタービーンを下したK1-Dynamiteの1戦からなので、約10年くらいのブランクがある。その間にどのような出来事があったのかは、本書を読むまで知らなかった。

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『武曲』 [読書日記]

武曲 (文春文庫)

武曲 (文春文庫)

  • 作者: 藤沢 周
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
羽田融はヒップホップに夢中な北鎌倉学院高校二年生。矢田部研吾はアルコール依存症で失職、今は警備員をしながら同校剣道部のコーチを務める。友人に道場に引っ張られ、渋々竹刀を握った融の姿に、研吾は「殺人刀」の遣い手と懼れられた父・将造と同じ天性の剣士を見た。剣豪小説の新時代を切り拓いた傑作。

先週の今頃、雑誌Numberのウェブ版で本書が紹介されているのを見て、週末読書で読んじまおうと思って電子書籍版を早速購入、読み始めた。文庫版でも490頁もある大作であること、加えて作品に硬派感を出すためかやたらと画数の多い漢字を多用していて、読んでてゴツゴツ躓くことも多く、意外と読み進めるのに時間がかかってしまった。一気読みというわけにはいかなかった。

あらすじはNumberのウェブ版の書評をご覧いただければなんとなくイメージできるのではないかと思う。また、この作品は今年6月に綾野剛、村上虹郎主演で映画化されるらしいので、その作品紹介動画でもイメージしやすいのではないかと思う。
http://number.bunshun.jp/articles/-/827176



さて、肝心の中身であるが、難解な漢字表記、剣道で使われている四字熟語を多用していて、かなり硬派な内容になっている。また、編集者もおそらくそれが作品世界を表現する最適な道だと認めて、難しい漢字も敢えてそのまま載せているのだろう。これだけ硬派な仕上がりにしても、コアな読者は必ずついてくるだろうという強い確信があってのことだろう。

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タグ:剣道
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『マラソンマン』 [読書日記]

高木一馬は、負けず嫌いの小学3年生。その父・勝馬は、かつてはマラソンのトップ・ランナーだったが、今は酒とギャンブルの負け犬人生を送っている。そんな2人に、突然、離別の危機がおとずれた。父と子の絆と、過去の栄光をとりもどすため、勝馬は、ついに再起の道を歩みだす!幻のランナー、奇跡のカムバックなるか!?井上正治の情熱のマラソン・ストーリー、スタート!

10月末、第1巻を読んでから、ここまで約2カ月かけて全19巻を読み切った。この作品が週刊少年マガジン誌に連載されたのは1993年半ばで、僕は一念発起して出場した1992年12月の第20回ホノルルマラソンを走り終え、次の目標と定めていた、「30歳で伊良湖トライアスロン挑戦」という夢に向けて、準備を重ねていた頃のことだった。

当時は未だ独身だったし、残業が多い会社から転職して比較的時間の融通が利く会社に移った頃だったから、朝6時台で10kmを走ってから出勤するというのがいつものパターンで、月間走行距離は200kmを越え、しかも懸案だったオーシャンスイミングに向けて、プールでの練習も相当積んでいた。

当時の日本の陸上長距離界は、92年のバルセロナ五輪で男子は森下、女子は有森が銀メダルを獲得し、世界最強のマラソン王国と見られていた。東京マラソンが火をつけたランニングブームは今も健在だが、当時はこうした陸上長距離界の活況が市民のマラソン熱を引っ張っていたように思う。僕の場合は、26歳(1989年)の初秋、季節の変わり目で体調を崩して寝込んでいた時にテレビで見た伊良湖トライアスロンが自分のだらしなさを痛感させ、1991年の秋に始まった第1回東京シティマラソン(ハーフ)の募集が、具体的に大会出場を目標にして、走り込みを始めるきっかけだった。東京シティマラソンは申込みが間に合わなかったので、代わりに出た最初のマラソン大会が1992年1月のサンスポ千葉マリンマラソンだった。

当時はランニングの月刊誌は読み漁っていたし、そういった中で連載が始まった『ランニングマン』も、第1部の高木勝馬の復活劇から、第2部で大学生になっていた息子・一馬のライバルとしてY学院大学のロジェ・ミルバが登場するところまでは、少年マガジンで読んでいたように思う。僕がマガジンと縁を切るきっかけは1995年の結婚と海外赴任だったので、全19巻中、9巻から10巻あたりまでが、僕の記憶で辛うじて残っているギリギリのところだといえる。

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『みかづき』 [読書日記]

みかづき

みかづき

  • 作者: 森 絵都
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/09/05
  • メディア: 単行本
内容紹介
「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」――昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。
阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」
驚嘆&絶賛の声、続々!昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。

「驚嘆&絶賛の声」に参加させて下さい。本当は週末読書は前回ご紹介した『X'mas Stories』に限定するつもりだったのだが、久し振りにジムでトレッドミルに乗るにあたって、1時間ゆっくり走りながら読める本ということで、土曜日に『みかづき』のKindle版を購入して読み始めたところ、日曜午後に続きを読み始めてそのままハマってしまい、日曜午後の予定をすべてキャンセルして読み続け、夜20時前にようやく読了した次第。それほどにのめり込む作品。

お話はほとんどが千葉県内、八千代、習志野、船橋、津田沼あたりで完結しているが、話のスケールは壮大である。ストーリーの始まりは昭和36年(1961年)。そこから、55年にもわたる長いお話であるが、実際には赤坂家の千明と父親との戦前のやり取りの回想シーンなども出てくるので、さらに20年近く長い。当然、その間に政府がその政策遂行の柱として教育制度をどのように捉え、どのようにそれを操作していったのかも描かれている。途中何が何だかわからなくなったが、それは僕自身がこの国の教育政策の変遷と、それが社会からどのように見られていたのかをしっかり知らないで読んでいるからそういう事態に陥るのである。

特に千明さんが何故そこまで文部省を敵視するのか、なぜそれが千明さんだけだったのか、同じ世代で教員をやっているような人は、同じように感じたりはして来なかったのか。また、千明さん絡みで言えば、吾郎さんが千明さんや事務室長の策謀により塾長を追われて退場する前と後で、千明さんの描かれ方に大きな変化が見られて戸惑った。吾郎さん目線で見た千明さんて、目が鋭すぎて鋭利な刃物みたいだったとあるが、吾郎さん退場の後、話が千明さん目線に移った途端、鋭利な刃物というよりは、きついオバサンという感じで捉えられてしまうようになった。この目線の変更には正直戸惑った。

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タグ:千葉 森絵都
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『X'mas Stories』 [読書日記]

X’mas Stories: 一年でいちばん奇跡が起きる日 (新潮文庫)

X’mas Stories: 一年でいちばん奇跡が起きる日 (新潮文庫)

  • 作者: 朝井リョウ・あさのあつこ・伊坂幸太郎・恩田陸・白河三兎・三浦しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/11/14
  • メディア: 文庫
内容紹介
もう枕元にサンタは来ないけど、この物語がクリスマスをもっと特別な1日にしてくれる――。6人の人気作家が腕を競って描いた6つの奇跡。自分がこの世に誕生した日を意識し続けるOL、イブに何の期待も抱いていない司法浪人生、そして、華やいだ東京の街にタイムスリップしてしまった武士……! ささやかな贈り物に、自分へのご褒美に。冬の夜に煌めくクリスマス・アンソロジー。

クリスマスがどうのこうの言える年齢では既にないし、とりわけクリスマスとは縁のない仏教国で12月25日を迎えようとしているわけなので、今年は特にケーキとも縁遠い。単身赴任だとささやかながらの家族との団欒もない。ましてや一番下の子供も中学に上がってしまった今となっては、プレゼントをせがまれることもなくなった。(そういうのは爺ちゃん婆ちゃんからもらえるお年玉だけにしておけということになる。)

こんなクリスマスを題材にしたアンソロジーを買って、一時帰国から戻ってきた理由は、ひとえに朝井リョウ君の作品が収録されているからであった。中身を確認せずに書店で購入してしまったので、こちらに持ってきて目次を読んでビックリしてしまった。ここに収録されている「逆算」って、今年9月に出た『何様』に収録されていた作品である。

こう書いてしまうとネタばらしになってしまうが、そういう意図ではないのでお許し下さい。この3カ月の間に、「逆算」を二度読んだことになるが、実は印象としては今回の方が良かった。世代の違いなのかもしれないが、朝井君の作品は、セックスへの言及が当たり前のように出てくる。そこは彼独特の表現で描かれが、実際の行為の描写がそんなにあるわけではなくても、それを主人公がどう捉えているのかは朝井作品にはありがちな描写だ。(だから、「水曜日の南階段はきれい」がかえって新鮮に感じるのだろう。そういう描写がないから。)

『何様』のように、『何者』に登場する人物を随所に配置したスピンオフ作品を並べられた著書の中では、作品の中の登場人物のほとんどが僕らの次の世代の人たちばかり、ややもすると自分の子供たちの世代の人たちの、親としては見たくない世界の話がこれでもかこれでもかと繰り返される。そんな作品群の中にポンと置かれると、「逆算」に対する印象も決して良くはなかった。同じような理由で、「水曜日の南階段~」も、初めて読んだ時と比べると、良くはなかったのである。単発で読んだ時はとても新鮮だったけど。

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『真実の10メートル手前』 [読書日記]

真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/12/21
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは「恋累心中」と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執―己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、本書のために書き下ろされた「綱渡りの成功例」など。優れた技倆を示す粒揃いの六編。

この週末2冊目の読書。一時的にSo-netブログにログインできなくなり(後に妻がIDを変更していたことが判明)、余暇と言ってもSNS以外あまりやることもないブータンでの完全フリーの週末に、やれることといったら本を読むことだった。

米澤穂信作品は、7月に『王とサーカス』が最初。岐阜県出身の作家なのに、これまであまり読んでこなかった。『王とサーカス』は舞台がカトマンズだったから読んだわけだが、登場する主人公が東洋新聞で、大垣支局にもいたことがあるとなったら、そりゃ今後も太刀洗万智登場作品は読まねばならんだろう。多分、「東洋新聞」って、「東京新聞(=中日新聞)」がモデルでしょう?それに、実は僕の小中高の同級生にも同じ名前の女子がいた。米澤さんは年齢的には僕よりも10歳以上若いし、斐太高校ご出身だそうだから、単なる偶然だと思うが。

ただ、少なくともそうした経緯もあって、せめて太刀洗万智登場作品ぐらいはちゃんと読んでおこうと前々から思っていた。今回のこの短編集は、週刊誌でも紹介されていて、週刊文春ミステリー年間ベスト10で、『満願』、『王とサーカス』に続き、3年連続1位になるかという高い評価を受けていた。(残念ながら2票差で2位だったらしい。)その作品紹介の中で、大垣が登場しただけでなく、吉祥寺も登場するという。これは読まねばということになったわけである。

太刀洗万智は、『王とサーカス』では東洋新聞の記者を辞めてカトマンズに渡っているので、本書に収録されている「真実の10メートル手前」のエピソードの後に『王とサーカス』(時期は2001年6月)が来て、そしてそれ以降の短編につながっていく(多分、この短編は太刀洗万智の成長過程を時系列的に追った形にはなっていないように思うが)。「真実の10メートル手前」と次の「正義漢」の間での太刀洗万智の変化はあまり気にならないが、こういう順番で続けて読んでみたら、何か新しい発見があるかもしれない。

この歳になるとあまりミステリーは読まないので、久々のミステリーは新鮮だったことを最後に付しておく。

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