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『転換期を迎えるインド』 [インド]

転換期を迎えるインド―変化をチャンスに変える日本企業の戦略

転換期を迎えるインド―変化をチャンスに変える日本企業の戦略

  • 編者: 中島久雄・岩垂好彦
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2012/08
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
日本企業は成長と革新の「新沃野」でいかに戦うべきか。なされるべき戦略転換の実相と近未来市場の展望を克明に解説。
1つの対象を見るには、2つの異なる見方がある。コップに水が半分入っているのを見て、「こんなに水が入っている」と考える人もいれば、「これだけしか水が入っていない」と考える人もいる。若い部下を見て、「長所」を伸ばそうと考える先輩もいれば、「短所」を直そうと考える先輩もいる。1つの対象をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは、それを見る人の基本的な立場によって異なる。

インドを対象とした場合も同様である。潜在的な巨大市場というポジティブな捉え方と、汚職や女性への暴力、差別などのダークサイドに注目する捉え方と、2通りがあると思う。本書は明らかに前者で、ダークサイドには目をつむり、日本企業に「チャンスを逃すな」と問いかけるレポート内容になっている。そして、そういう考え方の読者のニーズには十分応えられる内容だと思う。

これからインド市場に参入し、先行している企業に追い付くには、先発企業と同程度の販路、製品・サービス、価格、プロモーションに追い付くために、思い切った投資で一気呵成に体制を整えるのが理想で、投資額を小出しにしてリスク分散を図るやり方は良くないという主張には頷けるものはある。(ただ、思い切った投資を上層部に説得できるだけのインド市場向け人材を長年にわたって育ててこなかったというウィークポイントが、日本企業にはあるような気がするけど。)

また、インドの富裕層が大都市だけでなく、それに次ぐ規模の都市や地方にも幅広く分散し、しかも大都市中心部の富裕層の市場は底が浅いという分析も、興味深い。そこからは、投資余力が限られているからはじめはデリー、ムンバイ、チェンナイ、バンガロールといった大都市から参入していこうという事業展開のあり方に対する批判にも繋がっていく。この辺の分析は、さすがは日本随一の民間シンクタンク・野村総研だ。

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インド女性の現実 [インド]

May You Be the Mother of a Hundred Sons

May You Be the Mother of a Hundred Sons

  • 作者: Elisabeth Bumiller
  • 出版社/メーカー: South Asia Books
  • 発売日: 1998/02/28
  • メディア: ペーパーバック

インド駐在員時代に購入したペーパーバックの中には、現在に至るまで積読状態のものが何冊かある。少しぐらい片付けないといけないと思い、2週間ほど前から読み始めた。読み始めて早々、訳本が出ているのを知った。近所の市立図書館で蔵書検索したら、入手できたので、手っ取り早く訳本から読み、必要に応じて原文を当たるという方法を取った。

本書は1998年発刊とあるが、初版刊行は1990年。実際には1980年代半ばから88年にかけて、夫のインド赴任に伴い3年間インドで生活した元ワシントンポストのレポーターが、滞在期間中に行なったインドの女性へのインタビューを再構成し、1冊の本にまとめたものである。それがいまだにペーパーバックとしてインドの書店で売られているというのだから、この本の賞味期限の長さは驚異的であり、今でもインドの女性が置かれた状況にさほど大きな変化がないということを示している。ここで書かれていることは、僕の限られたインド駐在員生活の中で知り得た女性のイメージともかなり近く、今でも説得的だと思う。インドについてジェンダー研究をやろうと思うなら、本書は必須アイテムだ。

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ジュガード・イノベーション [インド]

Jugaad Innovation: A Frugal and Flexible Approach to Innovation for the 21st Century

Jugaad Innovation: A Frugal and Flexible Approach to Innovation for the 21st Century

  • 作者: Navi Radjou, Jaideep Prabhu and Simone Ahuja
  • 出版社/メーカー: Random House, India
  • 発売日: 2012/06/01
  • メディア: ハードカバー
内容紹介
伝統的な組織の思考や行動のあり方に対して問題を投げかける1冊。フェースブックやフューチャー・グループ、GE、グーグル、ペプシコ、フィリップス、日産ルノー、シーメンス、スズロン、タタ・グループ、YES銀行といったリーディング企業は、既に「ジュガード(jugaad)」(小さな創意工夫)を実践し、独創性あるアイデアを創出して、企業の成長に繋げている。世界的規模での競争が激化し、研究開発予算が膨張を続ける中、本書では、どのようにイノベーションを起こすか、どのようにして融通性を確保するか、そしてどのようにして少ない投入でより大きな成果を挙げるかが述べられている。アフリカやインド、中国、ブラジルといった新興国のイノベーティブな企業家の事例をふんだんに盛り込んだ本書は、この複雑で資源が希少になりつつある世界をブレークスルーして成長をもたらす途を描いたものである。
今年8月下旬にインドを訪れた際、バンガロールの空港の書店で平積みになっていたので購入した。探していた本で、出張中に見つけたら買うつもりでいたのだ。11月下旬に行なわれた母校の大学院開設10周年記念行事の準備で、インドの農村開発について少し新ネタを仕入れておこうと考えて、この行事を目標に据えて直前2日ほどで集中的に読んだ。というか、インドの草の根イノベーションの事例だけ拾っておきたかったので、かなりの拾い読みだった。

「ジュガード(jugaad)」というヒンディー語は、このブログの過去記事の中で最もヒット数が多い『3 Idiots』(3人のおバカ)を書く際に初めて知った言葉である。その経緯からして、僕は「ジュガード」という言葉には、草の根レベルの日常の小さな問題を解決するための創意工夫というイメージなのだと勝手に考えていた。インドの農村にそんな創造性豊かな農民発明家が大勢いるというのには憧れる。外部からどんな援助をすればいいかではなく、地元で手に入る材料を用いれば生活をちょっとだけ良くすることができるという、内発性に富んだ発想だ。そうした草の根の発明の中には、うまくいけは村の問題どころか、地域や国全体の問題解決にも大きく貢献できるものもあるかもしれない。

Mitti-Cool-Refrigerator.jpgその1つの例が、粘土製の簡易冷蔵庫『ミッティクール(Mitticool)』だ。グジャラート州のテラコッタ職人が考案したこの冷蔵庫は、上部に水を入れるとその水が粘土に浸透し、その気化熱で中の食材を冷やす。原理などは簡単だ。水の入ったペットボトルを濡れタオルで巻いておくと中の水がひんやりするという発想は、インドの庶民だったら誰でも知っている。その原理を冷蔵庫に生かしたこの製品は大ヒットした。電気を使わない冷蔵庫だ。しかも材料の粘土はそこらじゅうにある。このテラコッタ職人はミッティクールがヒットしたことで、さまざまなタイプの冷蔵庫を製作・販売し始めた。今やインドでも有名なサクセスストーリーの1つである。

しかし、実用化量産化に向けては幾つかのハードルをクリアしていかなければならない。研究開発にはお金もかかるし、量産化するための設備投資にも外部資金を取り入れる必要がある。原理が簡単なだけに、意匠登録をしておかないと、類似の製品がすぐに出回る。大企業が目をつけて即量産すれば、草の根企業家はたちうちできない。

「ジュガード」の付いたタイトルを見て、僕はそんなストーリーを想像し、本を即購入したわけだ。ミッティクールのケースは、本書の第1章の冒頭で出てくる。「ジュガード=草の根発明」というイメージは、あながち的外れではない。

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日印国交60周年セミナー第2弾のご案内 [インド]

知り合いから集客を頼まれて、下記のセミナーについてご案内させていただきます。私のブログの読者で、東京周辺に在住の方がいらっしゃったら、是非会場に足を運んでやって下さい。

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申込みは、JICA地球ひろば/研究所のホームページからできるそうです。
http://jica-ri.jica.go.jp/ja/announce/post_31.html

インド農業を改革する [インド]

Reforming Indian Agriculture: Towards Employment Generation and Poverty Reduction Essays in Honour of G K Chadha

Reforming Indian Agriculture: Towards Employment Generation and Poverty Reduction Essays in Honour of G K Chadha

  • 編者: Sankar Kumar Bhaumik
  • 出版社/メーカー: Sage Publications Pvt. Ltd
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: ハードカバー
先週、母校の大学院開設10周年記念行事で、デリーにある南アジア大学のG.K.チャダ副学長が来日された。母校では2回の海外スクーリング参加が必須となっており、僕は当時関わっていた仕事との兼ね合いでインドスクーリングには参加してみたかったのだが、それはチャダ教授が現地コーディネーターを務められるからではなく、単にインドに興味があったからである。(残念ながら、初年度は印パ緊張関係悪化の影響でインドスクーリングは中止となり、翌年は僕自身のスケジュールの関係で参加できなかった。)

10年を振り返ってみると、インドスクーリング参加者はそれほど多くない。しかし、チャダ教授のインド経済学界における立場を知るにつれ、本学がチャダ教授に無理もお願いできるような関係を構築していることは、相当大きなアドバンテージであると思えてきた。幾つかのエピソードを紹介しよう。

①チャダ教授は、インドにおける農業経済学の第一人者で、マンモハン・シン首相の経済顧問も務めておられた。

②2008年だったと思うが、世銀が「成長と開発に関する報告書(Growth Report)」を発表し、世界各地で報告書のブックローンチを行なったことがある。デリーでもローンチが行なわれたので、僕は興味本位でセミナーに出席した。発表者は2001年のノーベル経済学賞受賞者であるマイケル・スペンス教授だ。そのセミナーで、来賓席の最前列に座り、多くの来賓の方々と握手を交わしていたのがチャダ教授だった。

③これはある年のインドスクーリング参加者から訊いた情報だが、その方は日本の公用旅券を所持しており、インド入国のビザを事前取得せず、入国時に取得することを考えていたらしい。日本からインドに渡航する人にはお馴染みの話だが、インドのビザ政策は朝令暮改状態で、入国時に発給なんてことはほとんどあり得ない。その受講生は国外退去の瀬戸際に追いやられた。別室でいろいろ事情聴取を受ける中で、彼は、デリーでの連絡先として、チャダ教授の名前を口にしたらしい。すると、空港係官の応対ぶりが急変し、ビザが即発給されたという。

僕自身は、インドスクーリングを経ずに修士課程を修了したが、縁あってデリーで駐在する機会があり、2008年のインドスクーリングは、オブザーバー参加を許していただいた。スクーリングは、ネルー大学(JNU)での連続講義とフィールドワークから成り、講師の先生方やフィールドに同行して下さる先生方は全てチャダ教授から声がかかって選ばれている。2008年の時には、インド労働経済学会の当時の会長だったT.S.パポーラ教授や、少数民族関係省の諮問委員会である「多様化社会委員会(Diversity Commission)」の委員長を務めておられたアミターブ・クンドゥ教授が含まれていた。僕が当時最も感銘を受けたのはクンドゥ教授の「都市ガバナンス」に関する講義だった。驚いたことに、クンドゥ教授は、2010年に僕がインドを離任する際に開いた謝恩夕食会にお越し下さった。今年のフィールドワークには、ネパールのB.R.バッタライ現首相のJNU留学当時の論文指導教官だったアティヤ・ハビーブ・キドウェイ教授が同行されたと聞く。

そのチャダ教授から薦められて、個人的に購入したのがこの1冊である。この論文集は、教授の薫陶を受けたインド人研究者や盟友が寄稿して編集されたもので、「インド農業を改革する」という主題の後に、「チャダ教授に敬意を表して」とひとこと添えられている。ただ、何しろ600頁近くもある大部な論文集だけに、最初の1頁を開くのに相当な勇気が必要だった。

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日印国交60周年セミナー第1弾のご案内 [インド]

知り合いから集客を頼まれて、下記のセミナーについてご案内させていただきます。私のブログの読者で、東京周辺に在住の方がいらっしゃったら、是非会場に足を運んでやって下さい。

JICA地球ひろば日本インド国交60周年関連セミナー
演題1:「草の根海外協力―インド農村に40年生きて―」
     牧野 一穂氏(NPO法人「アーシャ=アジアの農民と歩む会」理事長)
演題2:「お母さんと赤ちゃんの相談役VHV(農村保健ボランティア)が
   起こす村落女性のエンパワーメント」

     三浦 孝子氏(保健師、助産師、開業助産院「たんぽぽ母乳育児相談室」主催)

  日時:11月29日(木)18時30分から20時15分
  場所:JICA市ヶ谷ビル 6階 セミナールーム600
  定員:90名(先着順)
  住所: 東京都新宿区市谷本村町10-5
  会場への行き方:
    JR中央線・総武線 「市ヶ谷」 徒歩10分
    都営地下鉄新宿線 「市ヶ谷」A1番出口 徒歩10分
    東京メトロ有楽町線・南北線 「市ヶ谷」4番/6番出口 徒歩10分
  地図:http://www.jica.go.jp/hiroba/about/map.html
  主催:JICA地球ひろば
  申込:下記まで電話またはEメールにて、お名前、連絡先・ご所属を お知らせください。
     ホーム―ページからもお申込みいただけます。
  問合・申込先:JICA地球ひろば 地球案内デスク (tel:0120-767278 、
       e-mail:chikyuhiroba@jica.go.jp)

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『リバース・イノベーション』 [インド]

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション

  • 作者: ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
リバース・イノベーションとは「途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させる」という、従来の流れとまったく逆のコンセプトであり、時に大きな破壊力を生み出す。そのインパクトとメカニズムを、シンプルな理論と豊富な企業事例で紹介。
僕が学生の頃は、レイモンド・ヴァ―ノンの「プロダクトライフサイクル論」が流行していた時代だった。日本の企業の海外直接投資が盛んになり、世界規模での生産立地の再編が進む中で、市場に近い場所で最終製品は生産が行なわれるようになり、それでも最後に本国に残るのは製品研究開発部門だと考えられていた。

本書は、ヴァ―ノンの理論に対して、21世紀になってにわかに脚光を浴びてきた新興国の台頭を背景にした、新たな理論枠組みが提案されている、注目すべき新刊だ。先進国の企業が途上国で成長しつつある中間層をターゲットにした商品開発をターゲット市場に近い場所で進めて、その結果生まれたイノベーションが、はね返って他国の市場でも受け入れられるという話だと理解した。

僕は経営学の専門ではないので、本書の第1部の理論構築編は飛ばし読みで済ませた。興味があったのは第2部の事例分析編。当然ながら新興国市場をターゲットに開発される商品なのだから、インドの中間層をターゲットに開発された製品の事例もいくつかある。インドに住んでいた頃には何気なく見ていたGEの携帯型心電計とかペプシコのスナック菓子「Kurkure」や「Aliva」とか緑と黄色のカラーが特徴的なジョン・ディア(John Deere)の農機具とかが本書では紹介されているが、そうした製品がヒットした背後で、こうした企業のたゆまぬ努力があったのだというのを学べたのが良かった。

ただし、本書はいわゆるBOPビジネスのお話とはちょっと違うので注意。あくまでも新興国で小金持ちになりつつある人々をターゲットにした商品の話で、BOP層の購買力ではまだまだ手が届かない商品である。それに、そこでヒットした商品とそのイノベーション創出メカニズムをその先のグローバル市場にも適用しようと指向する点でも、ちょっとBOPビジネスとは違う空気を感じる。

ただ、日本企業がインドに進出してインド市場向けの商品開発を考える上では参考となる点は多いと思う。日本企業はBOPビジネス開拓といいつつも、日本で開発プロジェクトチームを編成し、検討作業は日本で行なわれているところが多いように思うが、本気でBOP市場開拓をインドで指向するなら、商品開発チームをインドに常駐させないといけないのではないかと僕は漠然と感じていたが、本書を読んで、その思いをいっそう強くした。

タグ:新興国 BOP

映画館で会いましょう [インド]


現在渋谷オーディトリウムで上映中のインド・ドキュメンタリー映画『ビラルの世界』で、ご縁あって上映後のゲストトークに呼んでいただくことになった。先週から話が進んでいたが(週報を書かなかったので紹介していなかった)、10月8日(月)の体育の日に一度映画館に出かけ、ゲストトークがどのように行なわれるのか、実際に見学をさせていただいた。

『ビラルの世界』は、コルカタの低所得層が密集して住むスラム街で盲目の両親と住む3歳の男の子ビラル君の日常を描いたドキュメンタリーである。既に映画館に足を運ばれた方はお感じになられたと思うが、この映画はスラム街の貧困の実態をありのままに描いている割には悲壮感もなく、日常が淡々と描かれていて、むしろビラル君を含めてそこに住む人々の力強さを感じさせるとてもいい作品だ。ゲストトークに向けた作品のリサーチは直前に再度行なうつもりでいるが、暗さなど微塵も感じさせず、むしろビラル君を取り巻く人々の温かさ、やさしさ、たくましさを感じずにはいられない秀作だと思う。未だご覧になっていない方は、だまされたと思って是非一度映画館に足を運んでみて下さい。

冒頭申し上げた通り、僕は近々ゲストとして映画館で登壇する予定である。このブログでは実名を明かさないのが僕のルールであるだけに、いつというところは申し上げられない。どこかの首相の言い回しだが、「近い将来」としか申し上げようがないが、映画館でお目にかかれることを楽しみにしています。(僕の素性をご存じの方は、個別で僕にお問い合わせ下さい。)

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『アサー家と激動のインド近現代史』 [インド]

アサー家と激動のインド近現代史

アサー家と激動のインド近現代史

  • 作者: 森 茂子
  • 出版社/メーカー: 彩流社
  • 発売日: 2010/07/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
インドはどのような苦悩を乗り越えて経済発展をとげたのか?いまだ深刻な格差の状況は?
世界銀行、アジア開発銀行でのキャリアをもち、インド人と結婚した女性が、急変するインドの代表的都市(ムンバイ、プーネ)の発展の軌跡と人々の営み、信念、希望、失意、困難の歴史をミクロの視点で生き生きと描く
発刊当時ちょっと話題にはなった本である。激動のインド近現代史を、タタ財閥と同じくグジャラートのパルシーであるアサー家を先々代まで遡ってその生き方を描き、それに絡めて、アサー家三代が生活の拠点としたムンバイ、プネの歴史と街並みの変遷を描いている。

読んでみるとちょっと拍子抜けする。自分の結婚相手の一族や使用人、友人などのライフヒストリーの部分はミクロすぎて「へぇ、そうなの」というぐらいの感想しかなかった。いろいろな人から聞き取りをして、しかもインドの近現代史を相当に勉強され、その大きな歴史の流れの中でのパルシーの一家族の生きざまや、インドの経済発展の過程で、使用人にまでスピルオーバーで恩恵が行きわたって生活が急速に改善しているということを描きたかったのだろう。ただ、インドの近現代史を描きたかったのか、自分の結婚相手とそのファミリーを紹介したかったのか、どちらなのかがはっきりしていなかったように思う。

ひとつ間違えば、インドの豪商のファミリーと縁ができ、国際金融機関での仕事を通じて知己を得たインド高官とのネットワークを自慢しているのかとのうがった見方もされかねない。ムンバイといえば、以前日本人駐在員妻のムンバイ生活を描いた本をこのブログで酷評したことがあるが、自分の生活を取り巻く様々な人々にスポットを当てる手法は共通していても、本書はそれなどが足元にも及ばない深みがある本だといえる。それは、本書の著者が単に対象者のライフヒストリーだけにとどまらない、歴史の流れというマクロな視点をしっかり踏まえているからであるが、個々人のライフヒストリーからあまりにも離れてマクロな話だけで一部のセクションは書かれていて、バランスの悪さは本書にはある。

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タグ:森茂子

インドの若者が求めるもの [インド]

What Young India Wants

What Young India Wants

  • 作者: Chetan Bhagat
  • 出版社/メーカー: Rupa & Co
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: ペーパーバック

内容説明
インドの学生はなぜいつも自殺するのか?インドにはなぜ汚職がこんなに多いのか?インドの政党は協働することができないのか?我々の投票は何も変化を起こさないのか?我々は自分達のインドと言う国を愛している。でも何かが違うのでは? 我々はみなこうした問いを投げかける。インドで最も愛読者が多い作家チェタン・バガットもその1人である。 バガットの初めてのノンフィクションである『What Young India Wants』は、売れっ子作家でありかつ聴衆にやる気を起こさせるスピーカーでもある彼の豊富な経験にもとづいて書かれている。明瞭かつ簡潔にその考えを表し、彼は現代のインドが直面する複雑な問題について分析し、解決策を提示し、その解決策について議論を求めている。そして最後に、彼はこの重要な質問を投げかける。「この国を良くするのに何が必要かについて皆で合意できないのであれば、物事はどうやったら変えられるのか?」今日のインドとそのインドが直面する問題について知り、その解決の一翼を担いたいと思っているならば、『What Young India Wants』はそういうあなたのための本である。
インドから買って帰った本を先ず1冊読み切った。新進気鋭の売れっ子作家チェタン・バガット初のエッセイ集である。チェタン・バガットはこれまでに5本の小説を書いており、そのうち2本がボリウッドで映画化されている(『HELLO』、『3 Idiots』)。これらの映画はちゃんと見たことがあるが、実は原作を読んだことがなかった。

本書は、著者が全国紙Times of Indiaで連載していたコラムをまとめたものである。いつ連載開始したのかは定かではないが、扱われている出来事は意外と古いのもあり、僕が未だインド駐在していた2年以上前の話も当然ある。例えば、インド人民党(BJP)の重鎮ヤシュワント・シン元蔵相が書いたムハンマド・アリ・ジンナーの伝記本でのジンナーの描き方がけしからんとBJPを除名されたという出来事は2009年頃の話だったと思う。そういう、現地に住んでいてその出来事について予備知識を持っていると、本書はとても親しみやすいに違いない。

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