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インド農村のサブプライム危機(1) [インド]

年20%超金利にもうけすぎ批判
インドやバングラ、規制強化の動き

日本経済新聞、2010年12月20日、ニューデリー・長沢倫一郎
 インドでは年間のマイクロファイナンスの融資件数が8000万件を超えるほど普及が進んだ。だが今、貧困層向け金融のあり方を問い直すような事態が起きている。
 南部アンドラプラデシュ州の州議会は15日、貸し手側が借り手の自宅を訪問する形の融資回収を禁じるなどマイクロファイナンス会社の活動を規制する州法を可決した。同州で今年、強引な取り立てが原因とされる借り手の自殺が相次いだ。
 マイクロファイナンス会社への反発が渦巻き、借入金の返済自体を拒否する利用者も増えているという。業界団体MFINのビジェイ・マハジャン会長は「このままでは資金繰りに行き詰まり破綻する会社が続出する」と嘆く。規制強化は東部オリッサ州も検討中で各地に飛び火しそうだ。
 マイクロファイナンスへの理解を高めた功績でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏の活動拠点バングラデシュ。”本拠地”でも政府が貸出金利に上限を設ける方向で検討に入った。
 規制強化論の根底にあるのは「マイクロファイナンス会社はもうけすぎている」との疑念だ。マイクロファイナンス会社の貸出金利は高利貸よりも低いとされるが、インドとバングラデシュでは年率20%を超える。8月に上場したインドのマイクロファイナンス大手SKSの創業者が保有株の売却で潤ったと報じられ、「もうけすぎ批判」に油を注いだ。
 適正利潤はどの程度か――。NPOも手掛けるマイクロファイナンスは適正な金利水準の判断が難しい。過度の規制は貧困者向け金融の芽を摘みかねない難しさもある。同様の問題を各国とも抱えているとみられインドの対応に注目が集まる。
先日、ある援助機関が開催したマイクロファイナンスのセミナーを少しだけ覗かせていただいた。演台に立たれた発表者の方が、「今インド・アンドラプラデシュ州で起きているような問題」と度々AP州のことが言及されており、AP州のような問題を避けるためにも信用情報の共有のような金融インフラの整備やマイクロファイナンス機関間の競争促進策が必要と仰っていたのが印象的だった。

技術協力を行なう援助機関が金融セクターの制度構築のようなお話をされたので、この分野で技術協力を行なえるような人材が日本に沢山いるのだろうかと僕は疑問に思ったが、会場はほぼ満員で、関心を持っている人が大勢いらっしゃるところからみても、そういう人材もいらっしゃるのだろう。単に僕が知らないだけかもしれない。ただ、元々この援助機関が強かった筈の、金融サービスのユーザー側の能力強化の部分では、まだまだやれることがいっぱいあるのではないかとも思う。同じAP州で僕の敬愛する黄門様がご経験されたことから見ても、何か事業を立ち上げようにも精緻な需要予測をして、原材料を幾らで仕入れ、幾らなら売れるのかを決めるような経験はSHGに参加している多くのオバチャンはしたことがない。原価計算はおろか、卸しの業者との値段交渉もやったことがないのだから、儲けをちゃんと出すのがいかに大変なことなのかをこれから収入向上活動をやろうという人々にわかってもらうのがいかに大変か、そしてその部分であれば、NGOの力も借りながらも、元々この援助機関がもっとやれる分野だと僕には思える。

そのセミナーの議論を聞いていても、そしてこの種の報道を目にする時にはいつでも、その前提としてマイクロファイナンスとは小口の融資を貧困層に対して行なうことだという認識があるようだ。演台に立たれた方は、マイクロファイナンスとは貧困層向けの小口金融サービスの総称だと、僕らが元々は預金口座を開設するところから金融機関との取引を開始した経験を引き合いに出して再三強調された。でも、そのすぐ後に「返済率が9割を超える」とか言われると、なんだ結局融資のことを言っているではないかという気持ちにさせられる。冒頭紹介した日経の記事にしても同様だ。逆に、マイクロファイナンス普及のメリットとして、貯蓄がこれだけ動員されますという預金サイドの指標の話は殆ど聞いたことがない。

だったら融資を前提として議論を進めたいと思うが、そもそもの疑問として、そんなに借り込んで貧困層が行なう事業がどれほど収益性が高いものなのか、そんなに商売のタネがそこらじゅうに転がっているものなのか、ということがある。今まで商売をやったことがない人が起業する際のボトルネックは、単に資金へのアクセスの問題だけではなく、その事業で収益を挙げられるだけの能力というところにもあると思う。その能力に不安があるために、事業の収益性にも自信が持てないということにも繋がるのではないだろうか。僕だって今は会社勤めだからいいが、今すぐ独立して起業しろと言われたら、今思い温めている事業がどれくらい収益性があるものなのかどうかは正直言って自信がない。それを途上国の農村に住む人々にやらせようというのだから、金融機関側の視点に立って金を貸すことを考えること自体がおかしい。利用者の側が必要とする時に、必要とするサービスが得られればそれでいいではないか。

それを、企業的な論理に立って金融機関がどんどん貸して事業拡大を図ろうとしたところにAP州の問題の本質がある。SHGの連合組織のようなものが信用組合のようなものを作って、組合員が必要な時に必要な資金を融通するような程度の金融サービスをやっているところであれば、AP州内でもそんなに問題は起きていない。黄門様が組織強化に協力をされたビシャカパトナムのVVKなんてその典型例だろう。それなのに、民間金融機関がそれまで信用組合に貸していたのを直接SHGに貸し込むような形に方針転換して事業拡大を図ったことが、1年で54人もの自殺者を出す事態に繋がったのだと僕は思っている。

さて、日経新聞の記事をもとに口火を切ってみたこのAP州の農村の「サブプライム危機」、隔週刊誌『Down To Earth』の記事から、その概要をもう少し詳しくご紹介していくことにしたい。
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