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人口ボーナス格差のとらえ方 [少子高齢化]

このAFPの記事についてはよく指摘されていることであり、長期的に見てその国の人口動態にどのような影響を及ぼすのかを論じた論文をちょっと探してみたいと思っているところである。こんな極端な男女比の国にうちの娘が旅行に行きたいなどとほざくようなことがあったら、親としては相当心配しなければならないだろう。誘拐されてしまいはしないかとか…。

さて、久し振りにインドの人口動態について論じた論文を1つ紹介してみたい。

Shekhar Aiyar and Ashoka Mody,
"The Demographic Dividend: Evidence from the Indian States"
IMF Working Paper, WP/11/38, February 1, 2011

URL: http://www.imf.org/external/pubs/ft/wp/2011/wp1138.pdf

Summary:
Large cohorts of young adults are poised to add to the working-age population of developing economies. Despite much interest in the consequent growth dividend, the size and circumstances of the potential gains remain under-explored. This study makes progress by focusing on India, which will be the largest individual contributor to the global demographic transition ahead. It exploits the variation in the age structure of the population across Indian states to identify the demographic dividend. The main finding is that there is a large and significant growth impact of both the level and growth rate of the working age ratio. This result is robust to a variety of empirical strategies, including a correction for inter-state migration. The results imply that a substantial fraction of the growth acceleration that India has experienced since the 1980s - sometimes ascribed exclusively to economic reforms - is attributable to changes in the country’s age structure. Moreover, the demographic dividend could add about 2 percentage points per annum to India’s per capita GDP growth over the next two decades. With the future expansion of the working age ratio concentrated in some of India’s poorest states, income convergence may well speed up, a theme likely to recur on the global stage.
要約をそのまま英語で転載してしまってごめんなさい。

この論文に注目する最大の理由は、人口ボーナスの州間格差を取り上げていることにある。しかも、これまでにこのブログでご紹介してきた論文の多くは、享受できる人口ボーナスの違いがその地域の成長格差にも繋がり、1国内での地域間格差を拡大すると結論付けているのに対し、この論文は、政策的に何もしなくても格差は縮小していくという逆の結論を導き出している。

今週末三鷹に講師としておいでいただく大泉啓一郎さんは、その著書の中で、都市・農村間で人口ボーナスがもたらす「機会(windows of opportunities)」には違いがあり、都市部では農村の過剰労働禄を効果的に活用することで人口ボーナスの効果を集中的に享受して成長を持続できるのに対し、農村部では出稼ぎ労働者の流出により年少人口と高齢者人口の割合が高い人口構成になり、人口ボーナスの効果が早く薄れるので、都市と農村の所得格差は拡大する可能性が高いと指摘している。また、「人口ボーナス」という概念を初めて提示したデビッド・ブルーム教授も、以前このブログでもご紹介した2011年の論文の中で、インドは種々雑多な州から構成されていてとりわけ人口の多様性(population heterogeneity)が高く、国内に東アジアとサブサハラ・アフリカを同時に抱えているような状態にあり、これは社会的政治的不安定性をもたらしかねないと指摘している。

ところが、本日ご紹介する論文は、南インドは人口転換を終えて人口ボーナスを使い果たしているから、これから人口転換が本格化する北インドの方が、今後の人口ボーナスから得られる利得が大きく、よって北インドの方が急速に経済成長すると主張しているのである。

もう1つの論点は、人口ボーナスはそれを活用して労働力を積極的に労働市場に参加して雇用機会を得させるような政策が取られないと現実には享受できないという指摘で、これはブルーム教授の最初の論文(Bloom-Williamson 1996)から比較的新しい論文(Bloom-Canning 2004)まで一貫して指摘されているポイントである。人口ボーナス効果は必然的にもたらされるものではなく、人口転換が生み出す潜在力を顕在化させるような社会経済政治制度を構築し、諸政策が人口構成の変化に適していた結果だとしている。これはインドでもよく耳にした議論である。

本日ご紹介する論文は、なんとこの点にもチャレンジしている。著者は、ブルーム教授らが指摘するような、人口ボーナスが特定の政策や社会環境を条件としていることを示す証拠を見つけることはできないと主張している。

計量経済学の手法を用いているので、100%理解した上でこの論文を紹介しているわけではないが、これまで通説と思われていたことに対して全く異なる結論を持ってきているという点では非常に新鮮で、細かく吟味する前にこんなのもあるよということで一応ご紹介しておきたいと思った次第である。

高齢化に関しては、最近AFPが2つほど興味深い報道をしていたので併せて紹介しておく。高齢化に絡んでは、どうしたら100歳まで長生きできるのかといった長寿学もインドでは行なっている研究者グループがいたのが印象的だったが、今日の論文はもっと経済学的なもので、しかも高齢者だけにスポットを当てているわけではない。
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