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『新解さんの謎』 [読書日記]

新解さんの謎 (文春文庫)

新解さんの謎 (文春文庫)

  • 作者: 赤瀬川 原平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
辞書の中から立ち現われた謎の男。魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない―。「新解さん」とは、はたして何者か?三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。紙をめぐる高邁深遠かつ不要不急の考察「紙がみの消息」を併録。
先月中旬、僕が腰椎椎間板ヘルニアを悪化させて身動きが取れなかった週末に、リビングルームの床に仰向けになりながら読んだ文庫本である。随分と笑わせてもらったが、お陰で腰には響いた。腰が痛い、腰が痛いとほざいているオヤジが、寝転びながら笑いをこらえている構図は、あまり様にはならない(苦笑)。

『新解さんの謎』は、単行本として1990年代半ばに発刊された時にかなり話題になった。僕はそれで国語辞典を新調しようかとすら思ったことすらあるが、結局購入しなかった。当時所属していた市民ランナーズクラブの会長さんが国語にうるさい人で、毎年クラブの活動への貢献度が高かった会員を独断で選んで表彰し、その記念品が旺文社の国語辞典だったため、僕もいずれは贈呈される順番が来るのではないかと思い、買い控えたのである。その会長さん曰く、「国語辞典は旺文社のものがよい」とのこと。受賞者選考の基準もよくわからなかったが、なぜ国語辞典は旺文社のものなのかの基準も明快ではなかった。ただ、いずれにしても僕も旺文社の国語辞典を贈呈され、三省堂の新明解国語辞典は使ったことはない。

ただ、新明解国語辞典が面白いと言われたのは第三版、四版の頃で、今の最新版はその点ではトーンダウンしていると聞いたことがあるので、買う時にはご注意(?)下さい。

とにかく、1990年代半ばに一時話題になった『新解さんの謎』を、今回は初めて読んだわけだが、実は『新解さんの謎』はこの文庫版の前半部分だけで、後半には「紙がみの消息」という別のエッセイ集が収録されている。僕もちゃんと気付けばよかったのだが、知っていたら買っていたかどうかわからない。どうも他人のエッセイというのが後でまとまっているものを集中して読むというのが僕は苦手で、読み飛ばしてしまった。エッセイというのは書かれた時が旬であって、それが掲載された雑誌をたまたま読んだ時が読むのに最もふさわしいタイミングだ。それを後からまとめて本にしたって、書かれた当時の空気もわからない中で読もうという気にはならない。1つ目のエッセイで早々に挫折して、結局1つも読まなかった。それだったら、なんで「新解さん」がここまでハチャメチャだったのか、国語辞典の収録単語の用例はどのように決められるのか、誰があのノリノリの用例を考えたのか、その辺のからくり、国語辞典製作の舞台裏のようなものを解説してくれた方がよほど有難い。

赤瀬川原平という芸術家(ずっと作家だと思っていた)は、1990年代前半には「トマソン」(なぜそこにそのような姿で存在するのかがわからない無用の長物)を路上で探し出しては茶化したひと言解説をつける「路上考現学」で数冊本を出していた人で、当時から流行っていた宝島社の『VOW』シリーズなんてのにもよく登場していた人だが、そこに存在するトマソンについて、とりあえず気の利いたコメントはつけるが、なぜそのようなものが作られたのか、誰が作ったのかという背景のところまで調査で突っ込まない軽さを常に持っていた芸術家だった。だから、「新解さん」についても、意味不明な部分は茶化しても、意味不明になってしまった背景には立ち入らないというのが彼のスタイルなのだろう。

でもね、こういう本は取りあえずその場での笑いにはなるけれど、読んでいて笑いをこらえるのに必死になっているのは読んでいる読者だけで、周囲の人を巻き込んで笑いの渦にはなかなかなりにくいなとも思う。笑いをこらえている人は通勤通学列車の中でもたまに見かけるが、その人の自分だけの世界の中での笑いで、それを見ているこちらは結構しらけている。それに、喉元過ぎれば熱さを忘れるのも早く、「新解さん」の笑いも一回知ってしまうと二度味わいたいとはなかなか思えない。

「トマソン」もそうだった。僕は『VOW』シリーズを2、3冊買って持っていたが、当時は通勤に1時間半もかかる埼玉の奥地に住んでいたので、通勤列車の中で時間つぶしに読もうと思って買ってはみたものの、笑いをこらえながら1回読み終えたら、後は書棚に眠らせてしまい、その後結婚した妻に「何、これ?」と白い目で見られたことがあった。

その時々には面白かった本も、時間が経って自分が歳を重ねてそれなりに社会的責任がついてくると、蔵書として保有していることが重荷になってきたりもする。こういう本を子供達に見られると、父親としての威厳にも響くかもしれない。赤瀬川原平の著書や『VOW』シリーズって、時間が経つとそれ自体が「トマソン」化してしまうのではないかとふと思った。
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