So-net無料ブログ作成

Social Pensionって何だ? [少子高齢化]

cover-social-protection-older-persons.jpg

Social Protection for Older Persons: Social Pensions in Asia

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Asian Development Bank
  • 発売日: 2012/07
  • メディア: ペーパーバック

「Social Pension」―――聞き慣れない用語である。日本語に訳すと「社会年金」ということになるが、日本では一般的には「社会保険」や「老齢年金」の方がよく聞かれる。但し、「社会保険」は負担と給付が繋がっていると思うし、日本でいう「老齢年金」も、給付の方に注目していても、社会保険料の負担と繋がっていることは暗黙の了解事項だろうと思う。

ちょっと調べてみたけれど、「Social Pension」に定訳はないみたいだ。高齢者の最低所得を保障し、貧困削減を狙った一般歳入による定額現金給付のことを指すため、日本でいう「老齢年金」とは財源が一般歳入であるという点で制度が異なる。

このSocial Pensionについては、2000年代最初の10年の後半ぐらいからよく耳にするようになってきた。最初は国際NGOであるHelpAge Internationalのレポートが2007年に出て、国連において議論が喧しくなった。次は2008年に世界銀行が『カバレッジギャップを狭めるために(Closing Coverage Gap)』というレポートを出した。本日ご紹介するのは、こうした流れを受けて、アジア開発銀行(ADB)が今年7月に発表した、アジアでのSocial Pension導入推進に向けたレポートである。

全部で300頁近くもあるレポートを全部読むわけにはいかないので、第1章「アジアにおける年金制度改革の政治経済学(The Political Economy of Social Pension Reform in Asia)」(Katja Hujo and Sarah Cook)だけを読んで、この記事をアップすることにした。

世界の高齢者の80%が年金給付へのアクセスを持たない。アジアでは、拠出型社会年金制度によるカバレッジが狭く、インフォーマルな家族や地域コミュニティによる支援に依存してきたが、この支援が、長寿化、労働移動、感染症、貧困等の理由により弱体化しつつあり、高齢者に対する社会的保護は必要性を増しているのが現状だという。

Social Pensionは、老後の消費を最低限の水準で維持したり、小規模な経済活動への投資に活用したり、あるいは世帯全体で給付金を活用してショック緩衝剤にしたりして、ミレニアム開発目標(MDG)達成のためのツールとなり得るという。

但し、その制度設計は国によって異なる。特に、一定年齢に達した場合はすべからく給付対象となるケース(ボリビア、ボツワナ、ブラジル、モーリシャス、ナミビア、ネパール等)と、資力度調査等を行なって給付対象を絞り込むようなターゲッティングが行なわれているケース(ラテンアメリカ、中欧・東欧・ロシア、中央アジア、南ア、バングラデシュ、インド、タイ、ベトナム、エジプト等)がある。給付開始年齢も国によって異なる。

では、なぜアジアの国々はSocial Pensionを採用したか。その制度設計にはどのような要因が影響を与えたのか。これに対する本稿の答えは、政策選択は各国特有の文脈によるところが大きいというものである。高齢化が進んでいない低所得国では、高齢者以外の社会的グループに向けられた政策の方が優先される。

しかし、低所得国であってもSocial Pension制度導入が政策アジェンダとなることもある。Social Pensionが、貧困率が高い国では誰もが裨益する魅力的な政策ツールとなりうるからである。ターゲットグループを明確に絞り、給付負担を管理することが容易で、世代間、都市・農村間の所得再分配が可能で、貧困対策がより効果的になり得る。

明快な問題分析を行い、改革手段を束ねて国の貧困対策アジェンダとリンクさせ、政治的なサポートが得られれば、Social Pension導入を柱とする年金改革は有効性を増す。但し、これをアジア地域で普及させる際の課題として、低所得者と都市非正規労働者の基礎的保護の提供や、一般市民のサポート、政治的意思決定における高齢者支援の確保、包括的統合的な制度の設計等が挙げられる。

制度自体が初耳に近いので、やや無責任はコメントになってしまうが、アジアでは今後の導入が課題と認識されている割に、第1章の付録で掲載されている各国の導入状況の比較表を見ていると、制度導入が1990年代や2000年代序盤である国が結構多くて、既に導入済みじゃないかというのが気になった。今後の導入が課題だというのはせいぜいカンボジア、ラオス、ミャンマーあたりである。あとの国々では、給付開始年齢とか給付額とかの変更とか、そもそも負担と給付がリンクしていない制度であるだけに、他の拠出型年金制度との整理統合なんてのも今後の課題といえば課題なんだろう。

Social Pensionというのが為政者受けする制度だというのはちょっと新鮮な視点だった。インドのIGNOAPS(インディラ・ガンジー全国高齢者年金制度)なんかはまさにSocial Pensionだと思うが、制度設計に関する議論とか制度の評価についてはあまり調べてみたことがないので、もう少し勉強してみたいと思う。時間があれば…。

レポート全文は、下記URLからダウンロードできます。
http://www.adb.org/publications/social-protection-older-persons-social-pensions-asia

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0