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『我が家のヒミツ』 [奥田英朗]

我が家のヒミツ

我が家のヒミツ

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
笑って泣いて、人生が愛おしくなる家族小説。どこにでもいる平凡な家族のもとに訪れる、かけがえのない瞬間を描いた『家日和』、『我が家の問題』に続くシリーズ最新作。笑って泣いて、読後に心が晴れわたる家族小説、全6編を収録。
「虫歯とピアニスト」:結婚して数年。どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにないことに気づいてしまった妻の葛藤。
「アンナの十二月」:16歳の誕生日を機に、自分の実の父親に会いに行こうと決意する女子高生。
「正雄の秋」:53歳で同期のライバルとの長年の昇進レースに敗れ、これからの人生に戸惑う会社員。
「手紙に乗せて」:母が急逝。憔悴した父のため実家暮らしを再開するが。
「妊婦と隣人」:産休中なのに、隣の謎めいた夫婦が気になって仕方がない。
「妻と選挙」:ロハスやマラソンにはまった過去を持つ妻が、今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出した。

この本は昨年9月に新刊で出てから、いつか図書館で借りて読んでやろうと、近所のコミセン図書室に行くたびに新着図書コーナーを物色して、結果空振りに終わるというパターンを4ヵ月も繰り返してきた。こんな場でアナウンスするのも変だが、最近、僕が再び海外に赴任することが決まった。時期は4月だそうだ。こうして後ろが決まってしまうと、これまで読みたくても読んでなかった本はどんどん片付けてしまおうとの衝動が強まり、僕は遂に図書館で借りるという選択肢を放棄し、書店で購入する道を選んだ。

あとがつかえているのでさっさと読んだ。僕は奥田英朗の作品の中でも、「我が家」シリーズは特に好きなので、今回も楽しみにしていたのだが、期待感が膨らみ過ぎて、いざ読んでみたら「あれ?」と思える軽さが気になった。収録作品の1つ「妻と選挙」に出てくる夫は50代の元直木賞作家だが、最近は出版社の編集者からいてもいなくてもいいようなぬるい扱いを受け、自分が時代のニーズに合わなくなってきたのではないかと不安に陥るシーンが描かれている。これ、どうも著者本人のことを自虐的に描いているような気がしてならなかった。

これに限らず、「え~、なんでそうなるの?」という意外感を伴う終わり方になっている作品は今回は少ない。なんとなく盛り上がりに欠ける中であっけなく「なるほどね」というような終わり方をする作品が目立った。ちょっとハラハラさせられたのは「妊婦と隣人」ぐらいだろうか。

ただ、今の僕自身の境遇と照らし合わせて、ちょっと身につまされる感覚も味わった。例えば「虫歯とピアニスト」、ちょうど本書を読んでた時に次の海外赴任が決まり、僕は歯医者に歯のチェックのためのアポを入れたところだった。正直言うと、1本痛い歯がある。それも治していかないと。現地でまともな治療が受けられない国だから。

それに、「正雄の秋」。主人公の年齢がほとんど僕と近い。僕は別に同期のライバルに競り負けたわけじゃないが、この2年ほど、僕よりも年下の上司の下で仕事してきた。2つの別の組織が経営統合してできた組織なので、人事の体系そのものが異なり、僕の出身の組織に比べて、上司の出身の組織の方が元々早めに社員の昇進をさせてきた。それが経営統合のあおりで僕らの世代が溢れてしまい、今のような逆転現象が生じてしまったのである。実は僕は自分の上司が明確に自分より年下だと認識したのがつい最近で、それまで、なんで僕に仕事を回さなかったり、僕に断りもなく直接僕の部下に作業の指示をしちゃうのか、戸惑うことが多かった。僕より年下なんだと知り、合点が行った。こちとら別にライバルだとは思っちゃいないが、お互いやりづらかったであろうことは間違いない。だから、この作品に出てくるようなぎこちなさはよくわかる。

ものすごく面白いというわけではないけれど、佳作が揃っているという印象。個人的には「虫歯とピアニスト」がいちばん良い作品だと思ったが、それが1本目に出てきていしまうと、後が尻切れトンボになってしまった感じがする。このあたりは、読者の境遇に左右されるところだとは思うが。

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