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『花のあと』 [読書日記]

花のあと (文春文庫)

花のあと (文春文庫)

  • 作者: 藤沢 周平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1989/03
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
娘ざかりを剣の道に生きたある武家の娘。色白で細面、けして醜女ではないのだが父に似て口がいささか大きすぎる。そんな以登女にもほのかに想いをよせる男がいた。部屋住みながら道場随一の遣い手江口孫四郎である。老女の昔語りとして端正にえがかれる異色の表題武家物語のほか、この作家円熟期の秀作7篇。

最近、ブータンネタを連発していたところに、なぜ藤沢周平?しかも、これまで一度もブログで藤沢周平作品を紹介したことがないのに、なぜ今なのか?しかもなぜ『花のあと』なのか?

実は、最近のブログ記事で何度か話題に出している、在ニューデリー日本大使館主催の「日本週間(Japan Week in Bhutan)」のイベントの1つとして行われた日本映画上映会で、9月29日、『花のあと』(2010)が上映された。主演は北川景子。解説がないとただでもブータン人の観客には理解が難しいであろう江戸時代の映画を、なんでまた主催者は選んだのか、それはよくわかりません。上映会自体は、上映開始前に主催者によって作品解説が行われ、当時の結婚はアレンジされていたので、他の人を好きになっても、一緒になることはほとんどなかったことや、稽古と練習試合、そして果し合いで使用される刀が違うこと、そして最後は短刀が鍵を握ることなど、事前に説明があったので、観客にはわかりやすかったのではないかと思う。

映画自体は良かった。剣を握った役者さんの左足の極端な開き方とか、突っ込みどころはないとは言わないけれど、剣を交わすシーンはふんだんに登場し、現役剣士としては嬉しい内容。殺陣にそれほど違和感はなく、北川景子よくやったと褒めたくなる。それ以上に、この役者スゲェと思ったのは、片桐才蔵役の甲本雅裕。すっとぼけた表情で観客の笑いを取っていた。自分の許嫁・以登が江口孫四郎に特別な感情を抱いていることを承知していながらも、以登に代わって探偵活動を行い、果し合いの後始末までしてしまう。

そんな映画の余韻に浸りながら、なんとなく原作を読んでみたくなって、それで電子書籍版をダウンロードしたという次第。

強いて言うなら、もう1つの具体的な理由として、映画の中で、江戸城での超官僚的なしきたりの話が出てくる。ひょっとして藤沢周平作品で面白いのって、そういう、僕らが日本史の教科書で習ったような通り一辺倒な江戸時代の政治史だけではない、官僚制度の話や市井の人々の日常生活、飲み屋の様子、商売のあり方等が描かれていて、読むだけでもかなり勉強になるところがあるのではないか―――そう思い、一度作品読んでみようかとなったのである。

そして、期待は裏切られることはなかった。

収録されている7編の作品の間で、登場人物に共通性は少ないが、それだけにお得感はあったし、なによりも短編だから、読みやすい。江戸時代も居酒屋的なお店が結構あって、仕事終わったらちょっと飲みに行こうとか、まっすぐ家に帰らずに途中で一杯入れて体温めておこうかとか、やってることが今のサラリーマンとよく似ている話が出てくる。そういうお店での客と店員の会話がまた面白い。しかも、ほぼすべてが良い話の終わらせ方になっていて、読後にはほのかな幸福感に満たされる。

長編だととても手を出しにくい話が、短編であるおかげで「取りあえずは1冊読んでみようか」という気にさせられる。すぐに2冊目、3冊目ということにはならないだろうけど、時々手持無沙汰を感じるようなら藤沢周平はありかなという新たな発見があった。

さて、肝心の映画化もされた「花のあと」だが、原作と映画ではちょっと描かれ方が違うというシーンが幾つかあった。だからどうということではないが、元々短編だったものを107分の長尺にするために、映画ではいろいろ追加で描いたシーンがあるように思えた。特に、原作での江口孫四郎の自決はあまりにもあっさりと描かれていたが、映画では江口にもそれなりにスポットを当てていたようだし、同様に片桐才蔵も、すっとぼけたところは原作も映画も似通ってはいたけれども、映画の方がうまくその役どころを活用しきているように思えた。

ということで、こと短編「花のあと」だけで比較するなら、映画の方に軍配を上げる。

花のあと [DVD]

花のあと [DVD]

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2010/09/23
  • メディア: DVD
内容紹介
『山桜』に続く「海坂藩大全」からの映画化第二弾!! 藤沢周平の珠玉の名作「花のあと」完全映画化! 最後の恋 最初の愛。藩の要職を務める寺井家の一人娘として生まれ、幼い頃から父に剣の手ほどきを受けてきた以登(いと)。下級武士の三男だが、藩内随一の剣士と噂される江口孫四郎(まごしろう)。初めて出逢った満開の桜の下で、二人は試合を約束する。数日後、竹刀を合わせた瞬間、以登の胸は熱く震えた。女の剣と侮ることも、その家柄に阿ることもなく、まっすぐに自分の剣と向き合ってくれた孫四郎。それは以登にとって生涯ただ一度の、しかし決して叶うことのない恋だった。以登にはすでに決められた相手があり、孫四郎もまた、上士の家の婿となる日が迫っていた。自らの運命を静かに受け入れ、想いを断ち切る以登。やがて遠く江戸から届いた、孫四郎自害の報……。激しい動揺を抑え、以登は婚約者・片桐才助(さいすけ)の力を借りて、その真相を探る。孫四郎の死の陰に、藩の重鎮・藤井勘解由(かげゆ)の陰謀が潜んでいることを突き止める二人。そして、以登はあの日以来遠ざけていた剣を手に、静かに立ち上がる――。


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