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安全な工事現場実現への長い道のり [ブータン]

職場の安全・衛生が施工業者の評価基準に
Workplace health, safety likely to become criteria for evaluating contractors
BBS、2017年12月9日、Phub Gyem記者
http://www.bbs.bt/news/?p=85988

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【ポイント】
国内の建設業者は、建設開発庁(CDB)の仕事を受注するために、もう1つ新たな分野での契約履行能力を証明できなくてはならなくなりそう。それは作業現場の安全衛生基準である。建設業者は、作業員の安全や衛生に配慮するだけでなく、それを実践することでCDBを説得する必要がある。そうしないと、プロジェクトへの参加が認められなくなる。

公共事業省道路局は、工事現場の安全衛生に関する記録はきちんととっておく必要があるとする。これは、プロジェクト発注前に請負業者を評価する基準となる見込みだ。これは、建設業界で働く人々の健康と安全が無視されないようにすることを目的としている。現在、CDBに登録されている多くの建設業者のうち、ほんの一握りだけしか真剣に取り組んでいない。

建設開発公社(CDCL)は、JICAが支援する建設事業以外でこの基準の順守に取り組む数少ない建設業者の1つで、作業員の安全と衛生に関するガイドラインを策定している。

一方、労働省は建設部門の作業員の安全を監視している。しかし、職員が不足しているため、現場での実地検査はほとんど行われていない。また、訓練を受けた有能な検査員もいない。しかし、作業員の安全に関する法制度の整備は既に行われているという。労働省のソナム・タシ氏は、「我々は労働安全衛生と福祉に関する規制を持っており、建設業のための個別規制も整備しています。建設業だけでなく、民間企業に対しても、これらの規制と雇用法を適用してきました」という。同氏によると、安全装置の整備には莫大なコストが伴うため、雇用者と被用者の両者が協力していないという。しかし、彼らは、こうした措置を取らないことで、長期的には被用者の健康に悪影響を及ぼす可能性があるということに気付いていない。

保健省公衆衛生局のカルマ・ワンディ氏は、工事現場作業員は多くの危険にさらされる可能性があると述べる。 「例えば、採光が十分でない場合、それが危険をもたらす可能性があります。同様に、作業環境があまりにも騒々しい場合も危険をもたらすでしょう。作業員が溶接作業やハンマー打ちを繰り返す環境にある場合も危険です。ほとんどの産業では化学物質を使用しており、その中のいくつかは危険であり、不適切な管理では呼吸器疾患や癌の発症につながります」と語る。

JICAブータン事務所長は、日本のベストプラクティスを採用することでブータンが改善できる分野がいくつかあると述べた。日本では、施工業者が要求される安全基準を満たしていないと、次の入札プロセスに参加する資格を失うという点で、 「報酬と罰則」の体制ができていると語った。「ブータンの請負業者に日本で行われているのと同じレベルの実践を再現することまでは期待していませんが、日本の実践をこうして共有することで、すべてのステークホルダーが彼らの作業現場の将来像について、真剣に考え、取り組むための環境を作っていきたい」と述べた。

道路局では現在、入札参加企業の能力評価基準として安全衛生管理を含める予定にしている。テンジン局長は言う。 「請負業者の評価基準の1つはその業者の過去の業績です。その業者が施工した過去10回の建設作業のパフォーマンスを評価する上で、安全管理記録に10ポイントの評点を配分することが考えられます。」

現在、CDBに登録されている建設業者4000社以上にのぼる。

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BBSの報道内容では問題提起だけがされていて、そのインタビューがいつどこでなされたのかが述べられていないので補足しておくと、公共事業省道路局とJICAブータン事務所は、12月7日(木)、ティンプー市内で「建設作業現場の安全と衛生に関するセミナー」というのを開催した。ドルジ・チョデン公共事業大臣が主賓として出席して開かれたセミナーには、BBSの報道でも出てきた公共事業省、労働人材省、保健省だけではなく、教育省や経済省、ティンプー市役所も参加したし、CDBやCDCLといった業界団体、発注側となる電力業界、ブータンテレコム等も参加した。建設セクターというところでの縛りはあったにせよ、それなりに注目の高さが窺える参加者の顔ぶれだ。それが、メディアの手にかかるとその肝心なところが置き去りになってしまう。主催者の面目は丸つぶれだろう。

報道の中で労働省の人が発言している内容の中にある、「建設業のための個別規制」というのは、実は昔労働局に派遣されていたJICAのシニアボランティアの方が法制化に尽力されたもので、日本の建設工事の安全衛生基準にかなり近いものだと聞いている。問題はその普及にある。労働基準監督署はブータン国内にはティンプーを除けば4カ所しかなく、監督官は14人しかいないらしい。これではちゃんと監督できないというのが労働局の言い分であるが、人が少ないなら少ないなりの工夫は、労働局自身にも求められるように思う。

人材不足だとはいっても、それはこうした基準が他省庁のエンジニアらにほとんど認知されていないという実態の言い訳にはならないと思う。労働人材省が作っているこの基準の周知を図るというのが、道路局とJICAがこのセミナーを開催した1つの目的だったと聞く。

そしてもう1つの目的は、このテレビ報道ではJICAの所長がちらっと言っているだけで終わってしまっているが、「日本のグッドプラクティス」を知ってもらうというところにもあったのではないかと思う。日本の無償資金協力で整備が進められてきた国道1号線(東西ハイウェイ)の3つの橋の架け換えがもうすぐ終わるので、その現場で日本の施工業者が行ってきた具体的な安全管理の取組みを、忙しくて現場に足を運べなかった政府の役人や国内の建設業者にも知ってもらう機会を作ろうと考えられたのだろう。実際、この建設現場を通るたびに、安全器具の装着や安全監視員の配置はすぐに確認できるし、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の実践、朝の準備体操やミーティング、毎日の作業終了後の後片付け等、現場で1日過ごせば、日本人だったらすぐに腑に落ちるような取組みがそこらじゅうにある。

セミナーの後半が安全器具や機材など、金のかかる話に引っ張られてしまった感があり、フロアからの質問も、「金がかかることをやるには限界もある」的なネガティブ発言も聞かれた。「だから援助してくれ」という発言にまでは至らなかったのが救いだが。国道1号線の橋梁架け換え工事現場で見られる実践の中には、そもそも金の問題ではなく意識の持ち方の問題だと思わせるような取組みが多いのに、その部分に注目が集まらなかったことは、ちょっと残念だ。それに、安全器具にしても、海外の高価なものを最終製品として輸入してこればそれは高いに決まっているが、安全器具やヒューマンエラーを回避するためのデバイス等の研究開発は、ファブラボの施設を利用すればブータン国内でだってできないことはない。

既報の通り、10月末に国連とGNH委員会は「2016年版ブータン脆弱性分析レポート」というのをリリースした。その中で、両者はブータン国内の14の「脆弱なグループ」を特定しているが、その中に建設作業員は含まれていない。ちゃんと働いて収入を得ているのだから脆弱とは言えないと思われているのだろうが、実際は違う。彼らはちょっとした不注意でケガをするリスクには常にさらされているし、一つ間違えば大惨事を招き、本人の一生どころか、その家族全員の生活が奈落の底に叩き落される。「人間の安全保障」で言うところの「ダウンサイドリスク」にはさらされているのである。

しかも、そのリスクは、本人たちの配慮や工夫と、雇用者側の環境整備、それを取り巻く社会や制度の環境整備により、かなりの部分は軽減することが可能である。実際、日本は統計上はその成果が出てきている。なぜこの現場作業員が脆弱なグループとして認知されなかったのかはよくわからないが、インフラ整備での協力をやっていて、かつ「人間の安全保障」をミッションステートメントに掲げるJICAなら、当然着目しなければならないポイントだ。

そうした主催者の意図を、メディアが適切に汲み取れなかったことは残念だ。クエンセルも建設工事現場の安全に対する問題提起は12月8日(金)の第1面で取り上げ、週刊タブロイド紙The Bhutaneseも9日(土)の紙面で取り上げているが、いずれの論調もほぼ同じである。「安全第一」を職業訓練施設や交通安全等、社会の様々な側面に適用し、「ANZEN」という言葉をそのままブータンに根付かせるぐらいのつもりで、JICAはもっとキャンペーンを繰り広げたらいいと思う。

建設セクターの貧弱な安全措置
Poor safety measures in construction sector
Kuensel、2017年12月8日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/poor-safety-measures-in-construction-sector/

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