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『日本経済の心臓 証券市場誕生!』 [仕事の小ネタ]

日本経済の心臓 証券市場誕生!

日本経済の心臓 証券市場誕生!

  • 作者: 日本取引所グループ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
江戸時代の堂島米会所から明治期の取引所設立、戦後の証券市場復興とバブル期の隆盛まで、「証券市場の歴史」決定版!世界初の先物市場は17世紀に大阪米市場から生まれた。将軍さえも思いどおりにはできなかった米市場の実態とは?明治維新後の動乱期に、証券所設立のために政府と民間の立場を超えて協力した渋沢栄一や今村清之介、田中糸平。彼らの生涯とは?戦後のGHQとの証券市場復活交渉における意外な秘話や、バブル期のエネルギーあふれる市場の活況まで、人と人のつながりが育ててきた証券市場の物語。

昨日17日、ブータンに戻ってきた。これからしばらくはここに腰を落ち着けて、仕事頑張りたいと思う。
今回の一時帰国では、既報の通り、読みたいと思っていた本、長らく積読放置しておいた本を、片っ端から読むという作業に相当な時間を費やしたが、蔵書として付け足したい本を調達する3週間でもあった。その中でも、昨年末に出たばかりの本書は、最高のタイミングで出会えた1冊だった。日本経済新聞に広告が載った瞬間に即買いに書店に走った。

年末、「中小企業向け資本市場」というブログ記事でもご紹介した通り、ブータンもブータン独自のペースで証券市場の整備は進めているところである。また、「ブータン幸福証券取引所」構想なるものの提案書を作って昨年末に政府関係者にばらまいた張本人としては、「日本ってどうやって証券市場の整備を進めてきたのか」という、今年は間違いなく訊かれる、或いは間違いなくそれを踏まえた発言を求められると思っていたので、日本の証券市場史というのをある程度知っておく必要があった。また、そこまで行かなくとも、ある程度歴史が俯瞰できるコンパクトな文献を座右に置いておく必要があった。

そんなところにポンと出てきたのが本書である。これぞまさに福音だったというわけだ。しかも、256頁もありながら、挿入された口絵はカラーの写真が多く、それでいて2000円(税込み)というのはコスパがめちゃくちゃ良い。日本取引所グループが相当な冊数を買取りすることで書籍の単価を落としたのに違いないが、このパッケージであれば想定読者のボリューム自体が相当なもので、おそらくはベストセラーになるものと思う。

近頃社史編纂が流行っていると聞くが、そういうものとはちょっと違う。日本取引所グループの前身は明治初期にできた東京株式取引所らしいが、本書の記述はそこからではなく、そもそも日本で、というか世界で最初にできた証券先物市場・堂島米市場の、その前の江戸初期の米切手と蔵屋敷の話から始まっている。社史というよりはやっぱり証券市場史、もっと言えばそれにまつわる様々な出来事にも触れることのできる、一種の日本経済史だとも言える。

江戸時代の各藩の経済力がお米の石高で表現されていて、実際に年貢も米何俵と言う形で収められていたと思うが、それがどうやって貨幣に換金されていたのかという、根本的なところに疑問を抱かずに今までいたことの無知を恥じた。また、そうして集められた米俵を幕府に納めるのも、いちいち江戸まで運んでいたのだと漠然と思っていたが、そういえば大坂に大きな米市場があったと聞いたが、どんなふうに機能していたのか、思いをはせる良い機会になった。以前、僕は金融業界に身を置いていた頃、「酒田五法」なるものを何度か耳にしたが、その由来に関する諸説も本書の中で言及されている。

また、幕末から明治の頃の話になってくると、漠然と知っていた秩禄公債や金禄公債が、証券市場形成の必要性を高めたという話とか、以前どハマりしていろいろ関連文献を読んだ渋澤栄一について、彼が株式会社制度の導入に果たした役割を特出しして描かれた記述とか、これまた僕が以前蚕糸業について徹底して調べて本を書こうとしていた時期に少しだけかじった横浜の生糸取引や蚕種取引の様子が詳述されている記述とか、なんだかこれまでに僕自身がやってきた幾つかの取組みをつなぎ合わせたような記述が多くて、むさぼるように読むことができた。

それらに比べると昭和期の記述は、証券取引所再開に向けたGHQとの交渉や、今はなくなった立会所での取引の様子等は臨場感があって面白かったが、全体的にはちょっと散漫な感じはした。そうは言っても僕自身の問題意識が証券市場の国際化というところにあるため、外国人投資家の参加や外国企業の上場に向けた環境整備の部分や、世界各国の証券市場との連携に関する話等は、詳述とは言わないまでも、せめて言及ぐらいはして欲しかった。

ついでに言うと、本書が出たこともあるのだが、東京証券取引所では、年末12月26日から1月25日までの予定で、「証券市場の歴史展」というのを開催している。この企画展は、本書でも口絵紹介されている当時の貴重な資料がナマで見られて、本書の内容をコンパクトに説明している良い展示になっているが、加えて歴史セミナーのようなものも行われていて、僕が東証を見学した1月10日は、「株式会社誕生」というテーマで1時間ほどの公開講座を飛び入りで受けることができた。

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