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特別教育学校制度の課題 [ブータン]

視覚障害を持つ生徒、一般学校で苦戦
Visually impaired students struggle in regular schools
Kuensel、2018年4月25日、Younten Tshedup記者(カリン)
http://www.kuenselonline.com/visually-impaired-students-struggle-in-regular-schools/

2018-4-25 Kuensel.jpg

【ポイント】
カリン(タシガン県)のムンセリン盲学校(Muenselling Institute)の生徒は、クラス6までを修了すると、近くにあるジグミ・シェルブリン・セントラルスクールのミドルキャンパス(クラス7ー8)に進級する。同セントラルスクールは、教育省が定めた特別教育ニーズ(SEN)学校の1つである。ムンセリン盲学校は、ブータン唯一の盲学校として1973年に開校、これまでに187人の卒業生を輩出してきたが、2013年にセントラルスクールに統合された。

しかし、実際に盲学校で初等課程を終えてミドルキャンパスに進んだ生徒は、授業やテストなど、学校生活で苦戦を強いられている。例えば、ナムゲ・デマさん(20歳)は現在クラス7に在籍しているが、盲学校を出てミドルキャンパスに進むと、両者の間での学習到達度で大きなギャップがあり、追いつくのに戸惑っているという。弱視なので黒板に書かれることがよく見えないし、一部の教員を除いて、点字教科書が読めない教員ばかりなので、学習補助の役も果たせていない。同じ教室で勉強するニマ・ヤンキさんも同じく弱視だが、教員が点字を使えないので、教えた内容がテキスト化されて生徒の手元に届くまでに相当な時差があると指摘する。テストの時は、自分たちが点字で解答した答案用紙はいったんムンセリン盲学校に送付され、盲学校の教員が翻訳して、ミドルキャンパスに返送され、それから評価が行われる。時にはこの作業だけで1カ月がかかってしまうこともある。

ミドルキャンパス担当のタシ副校長によると、視覚障害を持つ生徒がいるクラスには補助教員を配置し、学習進捗に支障を来す場合は教室外での補修も行っているという。SEN校指定を受けて以降、特別教育ニーズのある生徒の支援のためのSENコーディネーターが配置されている。テスト期間中は、1科目につき30分追加され、生徒は時間をかけて回答することができる。また、理科や数学など、図表を用いる問題は、他の問題に差し替えてテストは実施される。弱視の生徒のためには、問題用紙のフォントを大きくし、拡大鏡も配備しているという。

しかし、問題は教員不足で、同キャンパスには視覚障害を持つ生徒が10人(全盲5人、弱視5人)おり、1対1対応がなかなかできない。また、同セントラルスクールのジグミ・ヤンツェ校長によると、教員側もSENに不慣れで、どう接していいのかがわからないでいるという。

盲学校のドルジ・ワンドゥップ校長は、同校とミドルキャンパス、アッパーキャンパス(クラス9-12)とは緊密に連携しているが、盲学校での初等課程の中で、ミドルキャンパスへの進級に必要な知識やスキルを身に付けるのは難しく、盲学校は盲学校で教育省の直轄にした方がいいと述べている。セントラルスクール傘下となったことで、予算が盲学校に十分配分されていないと指摘する。現在、盲学校には31人の視覚障害児が在籍しているが、特別教育の実施には費用がかかるという点に配慮して欲しいと訴える。

◇◇◇◇

このところ、クエンセルは連日、教育の課題を取り上げて1面トップで報じている。国民評議会(上院)議員選挙期間中、クエンセルの記事はほとんどが各県の選挙情勢で占められてしまい、あまり読む気になれなかったのだが、そんな中で久々に選挙と関係のない記事だなと思ったら教員による不祥事のお話で、選挙報道がひと段落した今週に入ると、「教育省の第12次五カ年計画ではこんなことが掲げられているが」というのが増えた。SENについては、全国20県、各県に1校、SEN指定校を設けるというのが計画のようだが、こうして記事を読んでみると、制度移行に向けては幾つかの課題があるように見受けられる。

第1には教員側の受入れ準備。接したことがないからどう振る舞えばいいのかわからないというところにどう応えていったらいいのだろうかというだけでなく、点字を読み書きできるようになってもらうことも必要だ。また、カリンの場合は元々盲学校があったところなので、セントラルスクールの生徒の障害が視覚障害に偏っている傾向があるから、SENといっても視覚障害生徒のニーズにある程度は特化が可能だろうが、これから設置が進む全国のSEN指定校の多くは視覚障害生徒が固まっているわけではないから、考えられる全ての障害に対して対処が求められる。カリンと比べて人数は少ないかもしれないが、生徒一人一人に合わせたきめ細かい補助や支援が求められてくるだろう。

第2には、これは盲学校のあるカリンや、ワンセル聾学校のあるパロあたりでは特有の課題だろうと思うが、障害種別毎に作られていた学校をセントラルスクールに統合していく場合に、どこまでが盲学校、聾学校でやるべきことで、どこからがセントラルスクール全体でやるべきことなのかが、うまく線引きされていない感じがしてしまう。カリンの場合、ムンセリン盲学校でクラス6まで終えた生徒が、近隣の初等学校でクラス6を終えた生徒と学力が同じであるという保証はないわけで、そのあたりのギャップはどう埋めるのかがまだまだはっきりしていないんだなというのがわかる。

第3には、この記事には明記されていないので、取材した記者自身も気付いていない可能性があるが、実はこのジグミ・シェルブリン・セントラルスクールという学校、教育省の理科教育強化指定校になっていて、一種のエリート教育が行われている学校だと聞く。視覚に障害を持った生徒が理科実験のような視覚がものを言う授業について行けるか、図表や口絵が多い教科書を理解できるかという課題もあるのだが、教育省はその辺をあまり考えずに、理科エリート校とSEN校の指定をやってしまったふしがある。インクルーシブ教育だと言われてSEN指定校を定める一方で、教育省はこういうエリート校の指定も全国数カ所でやっていて、僕自身も調べてはいないが、指定が重なっているところもカリンの他にもあるかもしれない。

特定課題への取組みを狙った部分最適化の施策が、全体最適を生む保証は必ずしもない。SEN指定校の現状は、そんな制度のひずみを物語っているように見える。時が解決していくとも言えるのかもしれないが、その過渡期の影響をもろに受けるのは生徒たちである。

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