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『門田先生の3Dプリンタ入門』再読 [仕事の小ネタ]

門田先生の3Dプリンタ入門 何を作れるのか、どう役立つのか (ブルーバックス)

門田先生の3Dプリンタ入門 何を作れるのか、どう役立つのか (ブルーバックス)

  • 作者: 門田 和雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/21
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
技術教育講座の准教授で、ものづくりの市民工房「ファブラボ」のディレクターでもある著者が、3Dプリンタの原理や構造、利用法などを一般向けにやさしく解説する。3Dプリンタの普及と共に盛り上がる「ものづくり」の現状や今後の展望もひと通り理解できる。これ一冊であなたも「メイカーズ」の仲間入り。

2年前のちょうど今頃、本書については一度ブログで紹介したことがある。ブータンに来たばかりの時期で、今読み返してみてもちょっと恥ずかしい。もっと言うと、当時はブータンにはファブラボもなく、3Dプリンタも存在しなかった。そういう時期に書いた記事だ。
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2016-05-13

それが2年後の今、僕の知る限りだが、僕の自室にブータン初号機があり、プンツォリンの科学技術カレッジ(CST)には日本人の講師の方が持ち込まれた二号機があり、デワタンのジグミ・ナムゲル工科カレッジ(JNEC)にも関西大学の先生が寄贈された三号機があり、ティンプー市内にはチャンザムトク地区の経済省ビジネスサポートセンターに入居しているDurba 3D Worksという、3Dプリントやレーザー加工を請け負う企業に創業者自作の3Dプリンタがあり、そしてオラカ地区のファブラボ・ブータンにも、去年7月の創設時に2台あった。その後ファブラボではこの3Dプリンタを自作するという動きが始まっており、実際にプラスチックのパーツは既存プリンタで製作し、組み立てて2機、3機と増殖させる動きが始まっている。最近も、青年海外協力隊の方が注文したと耳にした。届くと何台目になるんだろうか。10台ぐらいになるんじゃないだろうか。隊員の方の3Dプリンタは、300ドル台だと聞いた。僕が購入したのは700ドルぐらいのものだったが、コストダウンがさらに進んでいるようだ。パーツだけ揃えて自分で組み立てれば、もっと安く上がるかもしれない。

さて、これは周辺環境の話。僕自身も、そうして3Dプリンタのブータン初号機を導入した後、かなり初期の段階で既存ファイルの3Dプリントには成功していたものの、自分で3Dデータを作るところまでに至るには少し時間がかかった。昨年2月に3D CADソフト「Fusion 360」の研修を東京で受講し、独習用教本を買い込んでブータンに戻ってきた。でも、研修で作ったSTLデータをGコードからX3Gファイルに変換する作業でスライサーソフトの操作方法が英語で理解できずスタックしてしまった。しばらくは取り組むこともままならかったが、4月になってから再び勉強を始めた。スライサーソフトの操作方法をネット検索して、YouTubeに説明を載せているサイトを幾つか発見。それでブレークスルーできた。既に自分がFusion 360でデザインしたオブジェクトを自室の3Dプリンタで印刷するところまでは到達し、いろいろなオブジェクトを3Dデザインし、プリンタで印刷するので試行錯誤しているところである。暇さえあれば土曜日はファブラボに入り浸り、Fusion 360を使える唯一の女子に教えを乞うて、少しずつ操作法にも習熟してきているところだ。

従って、2年ぶりの再読となった本書も、2年前の読み方とは全く異なり、一字一句が腑に落ちるようになった。実際に自分で3Dデータを作り、3Dプリントを試行しているので、書かれていることが非常によくわかるようになった。3Dデータの作成には、Fusion 360を使った説明が数ページにわたって掲載されているが、これ読んでどれだけの人がFusionを使いこなせるようになるのかは謎だ。何度も使っているから、描かれていることがよくわかるのである。

さて、周辺環境のところに話を戻そう。

先月中旬、トブゲイ首相が日本を訪問して安倍総理大臣と会談した際、安倍総理の側から「警察等の分野でのボランティア派遣」という話を切り出したそうである。声明文には「警察等」となっていたので、「等」には何が含まれているのかは興味津々だったが、どうやら、消防とか救急とかが含まれていたらしい。そこで連想されるのは災害発生時の救助活動なわけで、普通に消防士や救命救急スタッフにボランティアのニーズがあるのかどうかはわからないが、大地震などが起きた際の救助活動の能力強化なども含めれば、日本側の人材リクルートの余地がどれだけあるのかはともかく、ボランティアの関わる余地はあるのかもしれない。

ただ、確実に言えるのは、3Dプリンティングのテクノロジーは、この分野もサポートし得るということである。

例えば消防。ここの消防車は日本から供与された中古車か、インド製である。中古であっても日本車の方がコンディションが良いと言われているが、既に生産から20年以上経過しているものが多く、しかも複数の異なる自治体から供与されているので消防車の仕様がバラバラである。どこかパーツが壊れたりすれば、当然スペアパーツなど手に入らない。日本のメーカーは製造中止しているのだから。

それに関して、本書にはこんな記述がある。工業製品のリバースエンジニアリングに関する言及で、示唆に富むと思いませんか?
家電製品などの1つのプラスチック部品が壊れてしまうことで、全体が使い物にならないことがある。そのような場合、メーカーに問い合わせてもすぐにその製品を入手できないことも多い。このとき、壊れた部品があれば、それをつなぎ合わせてもとの形状にしたあとに、3Dスキャナを用いて3Dデータを作成し、3Dプリンタから出力すれば、自分で修理を行うことができる。なお、最近ではメーカーの方で製品の各部品の3Dデータを後悔するようなこともある。(p.82)
中古車を供与するにしても、壊れそうな部品の3Dデータを合わせて供与するとか、あるいは供与する側の自治体や日本政府が、メーカーのパーツ情報の3Dデータ化も併せて働きかけられると、この問題は少し軽減される。もしメーカー側で製造中止したパーツの3Dデータを持っていないということなら、壊れそうなパーツを、壊れる前に3Dスキャンして、当地でデータ保管しておくという対策だってあり得る。ここまでできる人は警察や消防署にはいないので、こういうスキルのある人はむしろ必要かもしれない。

でも、パーツはプラスチック製じゃない、金属製ではないかという突っ込みも喰らいそうだ。確かに今、ブータンには金属加工ができる3Dプリンタはまだない。一度インドのプネでメタル3Dプリンタを見かけたことがあるが、世界的に見ても、強度のある金属製品を素早く出力できる3Dプリンタは未だ実用化には至っていないようである。
2014年、経済産業省は金属粉末を積層造形する産業用3Dプリンタの国家開発プロジェクトに、産業技術総合研究所や近畿大学、東北大学、東芝、三菱重工業などの30社・団体を採択した。同プロジェクトは2014年度から5年間の予定で、共同開発で2020年の商品化を目指している。(中略)従来の欧米製より製品精度で5倍、造形速度で10倍、価格は5000万円以内を目指すという。(p.26)
先は長いけれど、今からデータを作っておけば、いざという時には当地で必要なパーツをすぐ作れるようになる可能性があるということだ。

もう1つの可能性は、まさに被災地での救助活動に役立ちそうな部品を、現地でクイックに作ってしまう手法だ。これは先日訪れたネパールのカトマンズで、実際に取り組んでいる団体がある。元々は2015年のネパール大地震の際にデジタル工作機械を持ち込み、必要なものをその場でこしらえるというのをやっていた欧米の団体が始めたもので、今はネパール人の若者もスキルを相当身に付け、これらの取組みに関わっている。

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ネパールの場合は実際に大災害を経験したので、こういう取組みが先行して進んでいるのだが、ブータンだっていつ大地震が起きるかわからないわけで、いつかわからないその日に備えて、必要なものをちゃちゃっと作れる人の育成や、実際に必要になりそうな資機材のプロトタイプ製作等を今からでも始めておく必要がある。

日本にも多くのものづくりの愛好家がいる。本書の著者である門田先生もそうだが、僕の長男も機械工学専攻で、いずれはこういう世界に入ってきてくれるのだろうと期待している。僕が3Dプリンティングの入門書を読んでお遊び程度にやっていることよりも、はるかに専門性の高いことを、僕らの次の世代の若い人たちならできると思う。

消防や災害救助を例に取り上げたが、開発途上国にはこうした小さな開発のタネがいっぱいある。僕自身も少しずつ勉強しているところだけれど、僕がファブラボに行っていつもスタッフに言っているのは、「こんなの作れないかな」という、身の回りの課題を解決してくれそうなものの試作だ。そして、それは3Dプリンタで相当できるということなのである。

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