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『地元経済を創りなおす』 [持続可能な開発]

地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)

地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)

  • 作者: 枝廣 淳子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: 新書
内容紹介
人口減少、駅前のシャッター通り、あきらめ、……。地元経済の悪循環を断ち切る方策はないのか。現状を可視化し、お金や雇用を外部に依存する割合を減らすための考え方やツール、好循環に転換した事例の数々を示す。次なる金融危機やエネルギー危機、気候変動危機に対する「しなやかに立ち直る力」(レジリエンス)をいま地元から。

来週、島根県海士町の方がブータンにいらっしゃるらしい。Facebookで友人になっている方の情報では、文部科学省の日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)から予算を取って、「「学校を核とした地域創生」の海外展開モデル事業〜ブータン学校魅力化プロジェクト〜」というのをご検討されているらしい。

海士町がブータンにご関心をお持ちであるというのはかなり前から知っていたので、ブータンで何をなさりたいのかを知るために、年明け以降、意識的に海士町に言及がある本を読み込んできた。今回ご紹介するのもそんな1冊。文科省のお金だから教育の色が付いているのは仕方ないと思うけれど、僕的には枝廣さんが本書で書かれている「漏れバケツ」という、地域からの漏れをいかに減らすかという考えの方がしっくり理解ができる。

ブータンの経済自体がまさに「漏れバケツ」状態だ。外国からの援助の受入や外国企業の誘致、観光の誘致などを行っても、国外の建設業者や建設作業員への支払いや、国外で生産されている部品の代金、国民が国外から購入する物やサービスの代金、さらには外国留学や出稼ぎ労働者として、資源が漏れていく。だから、本書で言われていることをそのままブータンに適用すれば、「いくらお金をブータンに「引っぱってくるか」「落とすか」ではなく、「ブータンからのお金の流出を減らす」こと、つまり、「いったんブータンに入ったお金を、どれだけブータン国内で循環し、滞留させるか」が大切」(p.22の記述を援用)ということになる。本書から学べることは、「いまのブータン経済の穴は大きすぎ、多すぎるのではないか、それを少しでもふさぐ努力をすることで、ブータン経済に残るお金が増え、ブータン経済の活性化やブータンの人々の幸せにつながるのではないか」(p.23の記述を援用)ということである。

100%の自給自足などは難しいと著者も認めている。ブータンを外側の世界とのつながりから遮断しようとする考え方ではないが、国内でのあらゆる投資を最大限に活用するために、国内のつながりを高めようとするものである。これでブータンはより豊かになるし、それにより、欲しいのに国内では手に入らなかった品物やサービスも、より良い形で他の国から買えるようになるだろう。さらに著者は言っている。「人も地域経済も、「まずは依存から自立へ。自立してこそ、相互依存という最も豊かな状態に向かうことができる」(p.24)。

僕は本書を読んで、「内陸国でのファブラボ」というのも、その方向を指向している取組みだと位置付けられるなとも思った。

僕は著者の提示する枠組みを勝手にブータンという1国経済にも適用してここまで論じてしまったけど、著者本来の論点は国ではなく地域のレベルにある。その視点に戻して、改めてブータンについて論じると、今度は地域間格差の問題にも適用できる。7月から始まる第12次五カ年計画で、政府は、これまでの中央と地方の7対3だった予算配分を、5対5に持って行き、より多くの予算を地方に配分するとしている。これ自体は望ましい方向性だとは言えるが、もう1つ考えておかなければならないのは、その地方から洲出する「資源」を抑制し、その地域内で資源が循環する仕組みを作ることの必要性である。公的資金は地方に流れるが、もしそこで行われる公共事業が首都ティンプーに本社があるような建設業者が担うとしたらどうだろうか。地方の経済活動が活発になったとしても、それでインドやタイの物産が流入して小売店に並ぶとしたらどうだろうか地方で教育を受けた子どもたちが、大学教育はともかくとしても、その後地方に戻ってこないとしたらどうだろうか―――。

そんなことを考えていたら、今回海士町の方々が来られてブータンで売ろうとされているのは、地域で生を受けた子どもが、地域から漏れて行かないような仕掛けを作るということなのかなという気がした。文科省の助成金だからその部分を切り出して取り組むということなのだろうが、海士町の経験は地元経済全般の漏れに対する対策も提示しているように思える。そこは長期で取り組んで欲しいところであり、いきなり国全体でというわけにもいかないだろうが、どこかの地域を決めたら、長くお付き合いをしていって欲しいと思う。

最後に1つだけ気になったのだが、第9章で紹介されている英国トットネスのケース、なんで第9章なんだろうかと思った。どこかで発表済みの論文をくっ付けたのかなとも思ったのだが、そこまで日本のケースでさんざん論じて、読者をその気にさせてきたのに、いきなり最終章で異国に飛んだので、集中力を削がれた。事例としては示唆に富んでいるのは認めるけど、こういうのはもっと前の章で取り上げて欲しかったなという気がする。

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