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今頃再読?『未来国家ブータン』 [ブータン]

未来国家ブータン (集英社文庫)

未来国家ブータン (集英社文庫)

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/06/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
「雪男がいるんですよ」。現地研究者の言葉で迷わず著者はブータンへ飛んだ。政府公認のもと、生物資源探査と称して未確認生命体の取材をするうちに見えてきたのは、伝統的な知恵や信仰と最先端の環境・人権優先主義がミックスされた未来国家だった。世界でいちばん幸福と言われる国の秘密とは何か。そして目撃情報が多数寄せられる雪男の正体とはいったい―!? 驚きと発見に満ちた辺境記。

この本を単行本の時に読んだのは2013年2月だった。その時のブログ記事を読んでいただければおおよその紹介文にはなっていると思う。「教育は伝統を破壊するよ。確実に。中等以上の教育を受けたら、牛やヤクの世話をしたり、畑を耕したりはしなくなるもの」という引用のくだりは、ブータンに来て2年以上が経つ今読み直しても心に刺さる。今もまさにその方向に進んでいると思うし。地方には仕事がないとよく言われるが、正しくは、学校教育が活かせるような「よい仕事」がないのだと著者は言う。僕に言わせると、「よい」だけではなく「クールな仕事」という要素も重要な気がする(笑)。

さて、初めて読んでから5年以上経過して改めて今回読み直してみたのは、あの、ニムラ・ジェネティック・ソリューションズ(以下、NGS)の仕事はその後どうなったのか知りたかったからだ。本書の読者ならご存知だと思うが、著者の未確認生物(UMA)ハンター高野秀行氏のブータン入りを依頼したのは、NGS代表取締役の二村聡という方で、NGSのHPを見れば、2009年8月17日付で、ブータン農業省と同社が、生物資源探索を共同で実施する契約を締結したとある。5年間の契約だから、既に2014年に終わっている筈である。本書の中では結局著者の雪男探査の旅になってしまっているが、著者は少しはブータンの薬草について調べることができたのか、それが知りたくて、もう一度読み直してみたのである。(当然のことながら、NGSのHPを見ても、その後この契約に基づいてNGSがブータンで何をやったのかは書かれていない。)

もっといえば、今頃なんでそんなことが気になったのかといえば、欧州の大手化粧品メーカーがブータンの薬草を使った製品開発に関心を示していると耳にしたからだ。社会インパクト投資の観点から農家と直接委託生産契約を結びたいようなのだが、具体的に作物を何にするのかは絞り切れていない由。僕も問い合わせを受けたのだが、ハーブティーの原料となる南部自生のモリンガやドチュラ峠の向こうのティンレイガンあたりでYDF(Youth Development Fund)が栽培しているお茶(杜仲茶の一種?)、それに、東部のモンガル、タシガンあたりでは作られているレモングラスぐらいしか思い付かなかった。

ラヤの冬虫夏草というのも思い浮かんだのだが、冬虫夏草を採取しているラヤの人々は結構それで儲けていると聞くし、ラヤのあるガサ県はそのために県民1人あたりの所得水準が結構高いので、社会インパクト投資と言われるとちょっと違うのではないかと思う。だったら、そういう生物資源探索を過去に行ったNGSなら、そういうネタを少しぐらいは持っているんじゃないかと期待し、それで高野氏の著書を再読したというわけ。

よ~く読んでいくと、ネタがないわけではない。1つは、前述の冬虫夏草で有名なラヤで、「プティシン」という小さい木の根があり、風邪の時にちょっとその根をちぎってすり潰して煎じて飲むと、苦いけれどよく効くのだそうだ。プナカあたりでも手には入るらしい。

もう1つはグーズベリーで、これを食べてから湧き水を飲むと、水が甘く感じられるらしい。これはティンプー周辺でもあちこちに生えている。グーズベリーは既にお茶になって商品として市中に出回っているが、あまり甘くなるという印象はないお茶だった。でも、結構甘味料としてのニーズはあるのかもしれない。「化粧品」メーカーが関心持つのかどうかはわからないが。

そんなネタをいろいろ仕入れつつ、化粧品メーカーが興味を持ちそうな化粧品の材料ということになると、何なんでしょうね~。養蜂なんかは可能性あるのかもしれないですね。お香なんかはちょっと違うのかなという気がする。何せ、人づてで耳にしただけの話なので、この欧州のメーカーの商品ラインナップがわからないと何を薦められるのか、イメージがしづらい。でも、このメーカーのビジネス可能性調査がもし本当に始まるようであれば、ちょっとぐらいはネタの提供でもしたいところではある。

さて、それはともかくとして、本書のネタとなったブータン現地調査は2010年4月頃のことで、1カ月の調査を終えてティンプーに戻ってきた頃には、ジェ・ケンポがプナカからティンプーに移動される日に重なっていたようだ。さらにこの時期は、プナサンチュ第1水力発電所の建設工事が始まろうとしていた時期だったらしい。そのために、なんと著者御一行は、「ケッパ(首狩り人)」の噂話にも出会っている。そう、今年5月初旬に東部で流布した「ケッパ」の話と酷似。著者が聞いたのは、ワンデュポダン県で間もなく始まるダム建設のために、人が拉致されて首を斬られて人身御供にされるという噂で、親が子どもを外に出したがらないので、小学校が続々と休校になり、新しく赴任した公務員がケッパと間違えられて、捕まって監禁された挙句、あやうく殺されそうになったという報道もあったらしい。

歴史は繰り返す―――ですね。
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こんにちは。
その二村です。
当社とブータンの共同プロジェクトは
その後世界銀行傘下の、環境に特化した資金援助部隊である地球環境ファシリティ(GEF)からの援助を受け、今年の4月についに初めての伝統的知識に関わる製品を上市するに至りました。
フランスの某企業とのプロジェクトも進んでおり、なかなかいい感じですよ。
興味を持っていただき、ありがとうございます。

当社も何度か現地で技術指導ワークショップを開催したり、ブータンの人達の来日をお手伝いしたり。
良い関係が続いております。
by お名前(必須) (2018-11-29 04:50) 

ニムラ

こんにちは。
そのニムラです。
当社とブータンの共同プロジェクトは
その後世界銀行傘下の、環境に特化した資金援助組織である地球環境ファシリティ(GEF)からの援助を受け、今年の4月についに初めての伝統的知識に関わる製品を上市するに至りました。
フランスの某企業とのプロジェクトも進んでおり、なかなかいい感じですよ。
興味を持っていただき、ありがとうございます。

当社も何度か現地で技術指導ワークショップを開催したり、ブータンの人達の来日をお手伝いしたり。
良い関係が続いております。
12月下旬には生物多様性センターの皆さんが来日予定です。
高野秀行と旅したチェンチョ君も来日します!
by ニムラ (2018-11-29 10:45) 

Sanchai

ニムラさん、コメントありがとうございました。
しばらくブログ更新をサボっていたので、コメントに気づきませんでhした。失礼しました。
by Sanchai (2018-12-15 13:08) 

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