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女性企業家を阻む壁 [ブータン]

金融アクセスが女性企業家にとっての障害
Access to financial capital a major impediment to women in business
Kuensel、2018年8月22日、Nima記者
http://www.kuenselonline.com/access-to-financial-capital-a-major-impediment-to-women-in-business/

経済的必要性が女性をビジネスに駆り立てる
Economic necessity drive women into business
Kuensel、2018年8月25日、Nima記者
http://www.kuenselonline.com/economic-necessity-drive-women-into-business/

◇◇◇◇

女性のビジネスに関する記事が立て続けに2つ、クエンセルに掲載された。いずれも同じ記者で、情報源も同じ全国統計局(NSB)のレポートである。

NSBのHPを覗いてみると、どうやら元ネタは5月30日に掲載された「Challenges Facing Bhutanese Businesswomen in Micro and Small Enterprise Sector(小規模零細企業部門の女性が直面する課題)」と題したレポートらしい。それが3カ月近くの時差を置いて今頃メディアに取り上げられたのは、このレポートの製本版が、最近NSBから関係各機関に配布されたからである。

著者にはLham Dorji、Cheda Jamtsho、Tashi Norbu、Cheku Dorjiという方々が名を連ねている。うち、主筆はLham Dorji氏のようだ。レポートの冒頭謝辞を読むと、この方、幕張のアジア経済研究所に半年ほど研究フェローとして滞在して、そこでこのレポートの原型とも言える別のディスカッションペーパーを書いておられる。「Women-owned micro and small enterprises in Bhutan : what major obstacles impede their growth and innovation?(ブータンの女性小規模零細企業:成長とイノベーションを妨げているのは何か?)」というタイトルで、これまた今年5月にアジ研から公開されている。

今回この2つの記事に注目してブログでもご紹介しておきたかったのは、このアジ研研究フェローの書かれた第二弾のレポートも、アジ研から研究助成が出ているからだ。アジ研の方がどれくらいの頻度でブータン入りされているかは僕は存じ上げないが、こういう、日本とつながりをお持ちのブータン人研究者の方を、大使館なりJICAなりは、もっと現地でサポートすべきだと思う。「すべての女性が輝く社会づくり」(首相官邸HP)なんて安倍首相が言っているぐらいなんだから、そういう視点で事業を構想していくべきだ。

さて、記事の内容を少しだけ紹介してみよう。

最初の記事は女性が感じているビジネス上の障害が何かという点に焦点を当てている。見出しが示す通り、「金融アクセス」を課題として挙げたのは全体の49.3%に達したという。なるほどこれは文句なしに高い。ただ、2位以下を見ていくと「顧客に注目してもらうことの難しさ」(31.7%)、「インフォーマルな競争」(22.1%)、「優れたスペースの確保」(21.9%)、「税率」(15.7%)などが続いている。なるほど、このあたりまではいい。

しかし、続いてくるのが「市場」(14.0%)、「財サービスのバラエティ欠如」(10.9%)、「労働規制」(10.6%)などである。気になったのは「顧客に注目してもらうことの難しさ」と「市場」、「財サービスのバラエティ欠如」という奴で、足せば「金融アクセス」すら上回る。新聞記事を見る限りではこの問いに対する回答項目は29個もあり、しかも部分的にでも重複すると思われるものもある。回答に窮する場合、最もシンプルに回答しやすいのが「金融アクセス」だった可能性もある。

2つめの記事の方は大きくは2つのポイントがある。1つは女性が起業する動機で、「個人的興味」(47.9%)、「失業」(40.8%)、「世帯収入の補填」(38%)、「自立したい」(33.1%)、「他に収入源がない」(27.6%)、「子育てにお金が必要」(25.6%)、「両親や家族を助ける」(21.3%)などが続き、結論として、経済的な必要性に駆られて女性がビジネスを始める、ないしは従事すると結論付けている。その後、記事ではこのサンプルを取ったティンプー、ゲレフ、モンガル、プンツォリン、サムドゥップジョンカルの女性企業家についての都市別の傾向についても論じている。

もう1つはこれらの女性企業家が1日いくらぐらいの収入を得ているかという調査で、「1,000~2,500ニュルタム」(38%)、「4,500~6,500ニュルタム」(23%)、「1,000ニュルタム未満」(11%)と続くらしい。1日8万ニュルタム以上稼いでいる女性は全体の1.1%だとか。この記事では紹介されていないが、レポートを読むと、業種が挙げられているが、多くは小売店業であることがわかる。それであれば1日の売上げがこれくらいの規模になるというのも合点がいく。

当然ながら、この2つの記事が導くレポートの結論は、金融アクセスの改善というところに主眼が置かれる結果になる。

ただ、斜め読みしたレポートにはこうも書かれていた。全体の63%は起業から5年未満と比較的新しく参入しているが、同時に昔よりも売上が伸びなくなった。同じような業種の中で新規参入が増えたのだから、競争が激化するのは当たり前のことである。従って、本来なら注目すべきは金融アクセスではなく、「顧客に注目してもらうことの難しさ」―――すなわち新たな市場の創出というところにあるべきだったのではないかと思えるのである。新ビジネスのアイデアがポンポン挙がってくるようになるには、成功している企業家のカバン持ち的なことをやって修行を積むことも必要だが、そうしたロールモデルになりそうな女性企業家はまだまだ少ないし、そういうアイデア創出を近くでサポートしてくれそうなコーチもいない。そういうところがもっと指摘されると良かったのになとも思える。

それと、このレポートで感じたのは、男性企業家との比較で女性企業家に有意に不利だと考えられる障害は何かという分析がちょっと弱いのではないかという点だ。金融アクセスの話などはブータンでは一般的には頻繁に指摘されるポイントなのだが、男性と女性で明らかに女性にだけ不利ということがあるのかないのか。残念ながらこの記事を書いた記者にもこの視点はなかったようである。

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