So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

『江戸開城』 [読書日記]

江戸開城 (新潮文庫)

江戸開城 (新潮文庫)

  • 作者: 海音寺 潮五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/11/26
  • メディア: 文庫
内容紹介
革命の名の下に、血の犠牲を要求するため、官軍を率いて江戸に入った西郷隆盛。動揺する徳川慶喜と幕閣の向背に抗し和平の道を模索する勝海舟。両巨頭が対峙した歴史的二日間は、その後の日本を決定づける。幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面の、千両役者どうしの息詰まるやりとりを巨匠が浮かび上がらせる。奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く、傑作長編。

NHK大河ドラマ『西郷どん』は、16日放送回が「龍馬暗殺」なんだそうだ。僕は一時帰国中に第1回を見たっきりで、その後の進展については全く知らない。でも、先月離任されたJICAの専門家の方から最後の最後にいただいたのが、西郷と勝海舟、山岡鉄舟らを描いた海音寺潮五郎の『江戸開城』だった。僕は海音寺潮五郎といったら、このブログを開設するよりもずっと昔に読んだ平将門主人公の作品しか記憶にないので、そもそも鹿児島出身のこの作家が、西郷隆盛を主人公にした小説や史伝を多く発表されていること自体を全く知らなかった。なにせ僕が海音寺潮五郎という名を知ったのは、同じNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』(1976年)であった。だから、海音寺というと僕にとっては「平将門」だった。

それはそうと、僕が大河ドラマのフォロワーかどうかはともかく、本書は面白かった。時期としては、大政奉還、王政復古、鳥羽・伏見の戦い等が起こった後、徳川慶喜が鳥羽・伏見敗戦から海路江戸に逃げ帰り、朝廷に対して恭順の姿勢を見せ始めた頃からの話で、その後江戸城引渡しに納得しなかった幕府派の浪人が結成して新政府軍に抵抗を企てた彰義隊が、新政府軍に敗れて江戸から撤退するまでの話となっている。ちょうど、これから大河ドラマが描いていく部分だろう。なんとなくの予想では、西郷・勝の面談から無血開城、彰義隊撲滅までの3カ月ほどの話は1話か2話で一気に走るような気はする。その中での西郷や勝の駆け引きはある程度は端折られるのではないかと思う。

そこを、当時の書簡や関係者の日記、回顧録等を丁寧に調べ、著者なりの仮説を設けて描いている。著者のライフワークともいえる(らしい)西郷隆盛の人となりだけでなく、勝海舟や山岡鉄舟といった幕府方の人物もクローズアップされ、特に勝海舟については定説とは異なる評価を下している。(勝は徳川慶喜とはそりが合わなかったと言われているが、生涯を通じて徳川家の地位確保に奔走したと著者は評している。)新政府軍側も、大河ドラマでも出てくる海江田武次とか大村益次郎とかの人物像に、本書はよく切り込んで描いている。

但し、この本は小説とは違うようだ。本書の解説で尾崎秀樹がこのように書いている。「彼は(中略)いずれも彼の歴史小説および史伝にたいして高い評価が与えられているが、その作品は小説と史伝ものに大別されるようだ。つまり小説はフィクションによって人物像を具象化するが、史伝は歴史上の素材をふまえながら、史書と史書の間にかもし出される微妙なくい違いをとらえて歴史の軌跡をたどり、追体験する魅力をうかがわせるところに特長があるといえよう。」(p.371)―――すなわち本書は後者にあたり、「作者の歴史にたいする該博な知識を裏づけとして、歴史上の人物や事件を自由に論断するおもしろみを持っており、あつかう諸人物をすべて自家薬籠中のものにしているだけに、読者の信頼感を誘う面がある。」(p.372)と評している。

そう、信頼を持って読める作品で、かつ意外感も秘めている。

それにしても、よくもまあこれだけの書簡や日記、回顧録が残されているものだと思う。それを調べつくした著者もすごいが、そういうのを残した当時の人々、それをきっちり保管し続けた後世の人々の意識にも頭が下がる。今ならメールでポンのものを、これだけの長い手紙を書いて送っていたりする。それを書くのに要した時間は大変なものだと思える。日記もまたかなりの詳細であるが、僕がミクシィで毎日日記を付けているのにしても、変に考察を入れたりすると途端に長くなり、日記を入力し終わるのに1時間以上かかったりする。

そう考えると彼らはすごく多大な時間をかけて文章に落していたのではないかと思える。なぜそこまでしようとしたのだろうか。そして、そうして受け取った書簡を保管しておいた人々も、なぜそれをずっと保管しておこうと考えたのだろうか。その辺のこと、当時の人々に訊いてみたいと思った。

書簡に代わって現代はメールが使われているわけだが、こらえ性のない僕は、あまりに長いメールは読む気がしなくて、「読むのは3段落まで、それ以上は読まない」と公言している。また、それはビジネスメールとしては当たり前のことだと思われている。僕らが取り組んでいる仕事も、何十年もしたらその歴史的位置付けを再検証する作業が行われるのかもしれないが、その時にあまりにシンプルなメールばかりが並んでいると、あまり歴史的価値はないデータに終わっちゃうかもしれない。最も、僕がこうしてダラダラ書いている文章が、何十年もして歴史的価値が出てくるとも思えないが(笑)。

大河ドラマのそのシーンの前に、本書はありでしょう。『西郷どん』フォロワーの方々にはお薦めします。ま、それ以前に、フォロワーなら海音寺潮五郎の西郷隆盛ものはどれもおススメですが。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント