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スタートアップという名の熱病 [ブータン]

起業イノベーション週間が夢ある企業家を力づける
Startup innovation week to encourage aspiring entrepreneurs
Kuensel、2018年11月19日、Rinchen Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/startup-innovation-week-to-encourage-aspiring-entrepreneurs/

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【ポイント】
11月12日、ティンプーでスタートアップ・イノベーション週間が開幕、最終日の16日には、3つのベストアイデアが認定された。主催は労働人材省雇用人材局。CEFE Unicornと共催で行われた。「若者と技術革新」をテーマとして開催されたイベントには、83人が事前参加登録したが、実際に会場に来たのは約50人だった。

1位となったのは、ポーラーブレズ(Polar Brezz)チーム。干し草や葉など地元で調達可能な原材料を使用して作られたクーラーを発表した。ポーラブレズの発起人であるロシャン・ラザリーは、インド留学後ゲレフの両親の下に戻った際、両親が異常な暑さの中でもクーラーを購入していないのはなぜか理解できなかったという。「母はクーラーが持病の副鼻腔炎を悪化させるんじゃないかと懸念してました」とロシャン君は言う。それ以来、彼は自分の健康状態に影響を与えない材料を使用したクーラーを作るために日夜努力を重ねた。「試作品を1つ作ると、我が家を訪れる人々は、この製品に興味を持ってくれました。」

2位は田植え機。アイデアを思い付いたのはディーパック・ゲレ君。農村の課題に取り組むこと狙ったという。 「農家の息子として、私は両親が野外で働いているのを見て育ちました。特に田植えに駆り出されるのは女性で、非常に退屈な作業でした」とディーパック君。彼は機械化した方が楽になると考えた。伝統的な田植え作業は、激しい腰痛を引き起こし、農家にはさらに出費がかさむことになる。このアイデアを形にするには2年かかったと彼は言う。

3位はナチュラルピグメントの創業者であるペンジョル・ドルジ君。民間企業で働いていた時、観光客から伝統的塗装に使われる原材料について尋ねられたことがある。「それで、私はすべてが輸入されていたことに気づきました」とペンジョル君。ブータンは豊かな環境で知られており、顔料や染料を外国から輸入していては意味がないという。

優勝チームは10万ニュルタム、準優勝者には7万5000ニュルタム、第3位には5万ニュルタムの賞金が手渡された。イベントに参加した起業家は、製品のブラッシュアップと市場に出すための3カ月間の加速化研修プログラムを受講できる。

労働人材省起業・自己雇用部門のラム・バハドゥル・グルン次席事務官によると、この1週間のイベントは、起業家にアイデアを与え、製品やサービスを立ち上げるためのプラットフォームを提供することを目的に行われた。過去にはスタートアップ・ウィークエンドが54時間にわたって開催され、各グループはアイデアを出してプログラムの最終日に参加者にそれを問うようなイベントもありました。しかし、今回、このイベントは5日間に延長して行ったという。

雇用人材局のシェラブ・テンジン局長は、こうしたプログラムに参加することの重要性を指摘する。「そうでなければ、プログラムはムダになってしまう。起業家精神は失業問題を解決するための重要な活動の1つであると私たちは考えています。」テンジン局長は、起業家が雇用創出の重要な役割を果たしているだけでなく、社会のニーズや問題に取り組む点でも重要だと述べた。 「今日の大半のアイデアは、高収益が期待できるわりにリスクは少なく、妥当性が高い。」

◇◇◇◇

去年の11月第3週といったら、ブータンでは「グローバル企業家週間」というイベントが行われた。その時の主催はローデン財団と経済省が、国連開発計画(UNDP)の支援を受けて開催していた。2年連続開かれたので、今年もあるのかなと思っていたら、「グローバル企業家週間」は中止となり、代わりに労働人材省が「スタートアップ・イノベーション週間」というのを開いた。一方で、経済省小規模零細企業局は、この裏日程で、チャンリミタンスタジアム東側駐車場を会場に、「CSIフェア」という小規模零細企業の見本市のようなイベントを開いていた。それをもって、「グローバル企業家週間」と呼んでたメディアもあった。

ついでに言えば、その翌週、11月23日(金)から25日(日)までは、民間ビジネスインキュベーションサービスを提供するiHUBという企業が有志と募って、「女性版スタートアップ・ウィークエンド」というのを開催している。この記事で出てくる労働人材省の次席事務官はスタートアップ・ウィークエンドを他人事のように述べているが、iHUB自体が労働人材省とすごく近い組織なので、関係がないわけがない。実際、この記事の写真に登場してプロダクトを力説している若者は、ハッピーデリバリーというLPGガスシリンダーの宅配サービスを始めた起業家であるが、彼はiHUBで起業アイデアを孵化させた。

さらに言えば、今週末はティンプー・テックパークが「コーディング・チャレンジ」という名のハッカソンをやっている。確かに「ハッカソン」という名前を使って行われる公開イベントとしてはブータンでは初めてだろうが、僕らから見ればスタートアップ・ウィークエンドは建付け自体がハッカソンみたいなものだ。実際これを主催している人々はだいたい顔ぶれが共通する。

結構なことです。個々のイベントの趣旨を聞く限りにおいて、その目的や問題意識は正しいと思う。ただ、僕が気になるのかその乱立ぶりである。若者の失業問題が深刻なのに公務員採用の増枠などできないし、雇用吸収できそうな製造業は育っていない、農業や建設業は人手不足だというのに若者は3K仕事はやりたがらない。だから民間企業育成が必要で、そのためには若者に起業を考えさせよう―――そういうことになっている。間違いじゃないんだけど、小さな国なのに、皆がバラバラにそれに取り組んでいる。

挙句の果てに、集客の奪い合い、来賓客の奪い合い、これに動員されるリソースパースンとしての若手起業家の奪い合いである。こんな小さな国で「スタートアップだ、スタートアップだ」と叫んだところで、参加者も観客もそのパイ自体が小さい。それを奪い合っているように見える。ハッピーデリバリーの創業者なんか、こうこう毎週のように駆り出されて、本業の方はどうなってんだと心配になる。サービス劣化について顧客からクレームが来たら、「忙しかった」と言い訳するのだろうか。それでは役人と一緒だ。

イベント開催自体が目的化していないか?もうちょっと落ち着け、交通整理せよ、と言いたくなる。それと、重要なのはこうして光が当たった起業アイデアの「その後」である。アイデアをピッチすることばかりに皆の注目が集まっているが、実際にこのアイデアが起業に結びついたのかどうかという点での報道はほとんどない。スタートアップ・ウィークエンドやハッカソンのような建付けの問題点もそこにある。賞金に釣られて既に起業している連中もエントリーしているので、上位入賞者の中には既に起業している者もいる。じゃその賞金をもらったいいアイデアは形になったのかと追いかけてみると、そうなっていない。そういう批判的な目で今のこの「スタートアップ・ブーム」を見ているブータンの市民社会組織の代表もいる。

有名な若手起業家の中には確かに自分のビジネスを確立した立派な人もいる。そういう人から頼まれて、僕は日本の某メーカーの技術がこの国に有効だからということで、その企業の担当者となんとか連絡を取り、橋渡しをしようと試みたことがある。その本邦企業の方は半信半疑で、自社の技術がブータンで本当に有効なのか確証を得たくて、2、3の技術的な質問をされた。僕には技術的なことはわからないので、最初に依頼してきたブータン人若手企業家にその質問を振ったところ、「それじゃ今回は諦める。またヨロシク」とあっさり言われた。おかげで間に入った僕は、ものすごいリスクを負ってしまった。有名な企業家にしてこの諦めの早さである。なので僕は今の「スタートアップ・ブーム」には底の浅さがあるのではないかと気になってしょうがない。

チヤホヤされても最初の90日でうまくいかなければ簡単に諦めるのではないか―――だからその後のモニタリングをきっちりやる仕組みを最初から考えておかないといけないと思う。あるいは、最初だけチヤホヤするのではなく、起業して採算に乗せるところまでしっかり寄り添う姿勢が、こういうイベントの主催者には求められる。

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