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『テクノロジー・スタートアップが未来を創る』 [仕事の小ネタ]

テクノロジー・スタートアップが未来を創る: テック起業家をめざせ

テクノロジー・スタートアップが未来を創る: テック起業家をめざせ

  • 作者: 鎌田 富久
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2017/12/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
ロボットのSCHAFT、人工衛星のAxelspace、パーソナル・モビリティのWHILL、印刷する電子回路のElephantech、がんワクチンのVLP Therapeutics…。いま東京大学をはじめ、大学発ベンチャーが熱い。東京大学の人気講座・アントレプレナー道場の看板講師であり、自らも学生時代にACCESSを共同創業し、現在はエンジェル投資家でもある著者が、豊富な経験から指南する大学発ベンチャーのススメ。

半年ほど前から本書を読んでみたいと思っていたが、帰国してようやく手に取ることができた。今さら自分自身でハードウェア・スタートアップを目指したいとは思わないが、理系の我が子が飛び込んでいくこれからの社会がどういうところなのかを知る意味では、いい読書になったと思う。ちなみに本書は図書館で借りた。

帰国までは手に取れなかったとはいえ、今なぜ読んだのかというと、4月26日に行われた僕の帰国報告会に間に合うようにしたかったからだ。この年齢になってテクノロジーに関心を持ったのは、自分が役職定年や定年退職期を迎えて年収が激減した時に、身の回りで必要になりそうなものはある程度自分で作れる、あるいは修繕できるようにしておきたいと思ったからでもあるが、もう1つの理由は、このトレンドはブータンのような内陸国にももたらすメリットが大きいからでもある。報告会の前に自分の論点を頭の中で整理しておきたかったし、帰国して1カ月、前職とは全く異なる仕事を取りあえず始めて前職の記憶がかなり薄れてしまったので、モチベーションを立て直すきっかけが欲しかったということもある。

しかし、残念ながら報告会までに読了することはできなかった。結局今の仕事に追いまくられたからだ。

本書を読んでいて、最初に感じたのは、そもそも頭のいい東大生のベンチャーの中でも、成功した事例だけを示されても、同じことをうちの子どもたちができるかといったらどうかなという疑問符だった。例えば、著者が高卒や地方大学卒のハードウェア・スタートアップに支援をしてうまく立ち上げたケースや、東大発のベンチャーでも構わないが、メチャ成功はしてないけどもうちょっとでうまくいくぐらいのほどほど成果を出しているケースなどを併せて紹介してくれていれば、もう少し僕らにでも「できるかも」という希望を抱かせる内容になっていたと思う。「東大なんだから優秀なのは当たり前だろ」というツッコミに、「そうじゃないよ」という反論があったらもっと良かった。

ただ、僕自身も総論としては本書に書かれていることには賛成で、非常に良いことが書かれていると思っている。例えば、「最適化へ向かう社会」(p.183)の節にはこんな記述がある。

 ネット経済では、すでに様々な分野で需要と供給のマッチングによる最適化が威力を発揮している。中間業者はなくなり、自動化が進んでいる。今後、モノのインターネット、IOTの活用で、リアルの世界の生産と消費のデータが密に連携して、より一層最適化が進んで行くことが期待できる。大資本を投入して、大量生産し、マスメディアで大衆向けに広告宣伝して、大量に販売するといった事業者(生産者)からユーザー(消費者)への一方向の従来のやり方は根本的に変わる可能性がある。事業者は、その製品やサービスのユーザーと直につながり、ユーザーのほしいものを届ける。この方式の場合は、事業者はユーザーと直接つながることにより、あらかじめ販売数などを精度高く予測することができる。大きな広告宣伝費や過剰な在庫を抱えることもないので、コストは下がり、事業者、ユーザーの双方にメリットがある。事業者は、ユーザーの嗜好も把握できるので、新たな製品やサービスを企画したり、提案することも可能だ。このように、これまでとは逆向きのユーザーから事業者への情報の流れが重要になり、ユーザーからの積極的な発信がますます増えて行くであろう。

 事業者とユーザーの関係は、これまでのようにお互いに顔の見えない遠い存在ではなく、今後は直接結ばれて、お互いの信頼関係が構築され、それを楽しむようになりそうだ。資金の流れも変わるかもしれない。ユーザーが事前予約をしてくれたり、先払いといったこともありえる。つまり、事業者は、「ユーザーと長期的な関係を築く」ことが重要になる。

それ以上に自分の心に響いたのは、第6章「新しい時代に生きる」に書かれていたことである。特に、「これからの働き方」(p.229)と題した一節とその前後には、僕が現在直面しているもどかしさにも通じる記述があった。

 20世紀後半は、大量生産のための資本力も組織力も必要で、企業が大型化して行った。大企業では、業務を効率的に処理するために、機能に分けて組織化し、それぞれ専門スキルを持った人材を育てて、全体組織を最適化している。こうした組織体制は、高品質を実現し、生産性を高めるのに効果を発揮した。このシステムは、個人レベルで見れば、狭い範囲のスキルしか身につかなかったり、大きな組織の歯車となってしまって、モチベーションが上がらない。このような大きな既存事業に最適化した組織では、小さくても全体を考えてゼロから事業を立ち上げるような人材が育ちにくい。こうした従来組織が、変化の激しい時代において、イノベーションを起こしにくい原因にもなっているのではないだろうか。

 「働く」とは何か。もちろん、生活するためにある程度収入は必要である。しかし、稼ぐための手段として、いわば自分の時間を切り売りするのはもったいない。自分のやりたいこと、やり甲斐を感じること、人々の役に立ち達成感のあることが仕事となり、同時に稼げたら最高ではないか。人と人、人とモノを結びつけるネットの活用で、個人の能力を発揮する手段が格段に増えてきている。ネットは、働き方においても、従来の企業体ありきの構造を壊しつつある。
 (中略)つまり、これまでは各個人が自分の能力を活かすには、組織に所属したり、人の紹介などが必要であったが、これが不要になって来たという訳だ。
 次は、技術者は研究者、ビジネススキルを持った人が、大きな組織の歯車から外れて、もっと自由になり、「個人が輝く」時代になる。小さなチームが活躍して、イノベーションが引き起こし、成長していくようなやり方が可能になりつつある。

 現在は、多くの人は1つの企業に所属して、その中で能力を発揮すべく努力している。企業側は、社員の能力を活かそうと役割を与える。これは当たり前の話だが、企業内のローカル最適である。もちろん転職も可能だが、日本全体として多くの人が1つの企業に縛られている状況は、能力発揮の総和として、最適化されているとは言いがたい。これからは、個人がプロジェクトをベースに複数の企業の仕事に参加するようなことも多くなると予想する。(中略)企業側も、プロジェクトに必要な人材を外部からも集めることになるのではないだろうか。

 現在、多くの大企業は、正社員の就業規則で兼業・副業を禁止している。しかし、近い将来訪れる企業を取り巻く環境、必要とされる仕事の内容を想像してみよう。人材の囲い込みではなく、人材のオープン化をした方が、理にかなっていることがわかる。

残念ながら、僕の今働いている会社は、そこまでオープンにはなっておらず、今やっている仕事は3月まで自分がやっていた仕事とは連続性がほとんどなく、「帰国してから何やってんの?」という質問に対して胸を張って答えられることが全くない。自分が3月までやっていた仕事の成果を生かして、さらに発展していく形になっていればいいが、それに時間を割くこともほとんどかなわない状況だし、役職定年を迎えた自分に対して、「働けるところがあるだけありがたいと思った方がいい」とも言われたりする。「自分が派遣されていた国に対して、なんでそんなに思い入れがあるんですか?」と否定的に言われたりも…。

そういう年齢だと自分もわかっているつもりだが、正直割り切れない悔しさも1カ月感じ続けてきた。本書で論じられていることは、言葉にし切れていなかった自分のやりきれなさを、うまく代弁してくれているように感じた。その意味では、いいタイミングでも読書であった。

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