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『まちの病院がなくなる!?』 [読書日記]

まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生

まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生

  • 作者: 伊関 友伸
  • 出版社/メーカー: 時事通信出版局
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 単行本
内容紹介
「残念ながら、わが国の地域医療の崩壊は、一過性のものではなく、今後、さらに深刻なものになると思われる。日本の地域医療の崩壊を食い止めるためには、国民すべてが、医療現場で起きていることを、人ごとではなく、自らのものとしてとらえること、何が問題なのかを「言葉」にして他人に伝えていくこと、自ら積極的に行動していくことが必要と考える。

読書メーターの「根雪」的蔵書解消プロジェクトの第3弾。これまでのところ最も古くからの根雪で、購入時期は2009年頃である。この頃、僕はインドに駐在していて、わけあって日本の地域医療の問題点について調べていた。その一環でアマゾンで購入したのだが結局駐在期間中には読むことができず、日本に持ち帰ってそのまま本棚に直行してしまった。

こういう時事ものって、旬を逃すと書かれている内容が現在もイキなのかというので悩んでしまう。本書は発刊から既に12年が経過している。当時としては新しい議論で、2006年に起きた夕張市立総合病院の経営破綻を契機に、自治体病院の実態について注目が集まっていた時期であった。

僕がこんな本を購入したのもそういう背景があったのことだが、発刊から12年も経った今、いざ読み始めてみると、当時の問題点の分析もさることながら、それで今はどうなっているのかの方が知りたくなってしまった。著者の書籍刊行は2014年で止まっている。そこで、著者が運営している「伊関友伸のブログ」も覗いてみたのだが、こちらは最近までブログのアップが行われていて、時々独り言のように持論が展開されているが、比較的最近のログでも議会や行政の無理解が指摘されているし、最近は「まちの病院」どころか「まち」自体がなくなるとの指摘も目立っている。


多分、2000年代後半の論点は、2010年代後半においてもイキなのだろう。本書は県立、市立等の自治体病院の経営問題を見る上で、今でも有効と思われる枠組みを提供してくれている。様々な論点が提示され散るが、その中で一貫して医師や医療スタッフへの温かい目は変わらず、彼らが永く働ける職場にするための課題を列挙して論じておられる。

自治体からの人事ローテーションでたまたま病院に来る、病院経営のプロではない事務スタッフ、病院運営を専門的に見られる部署が、縦割りに弊害で自治体内にないこと、そもそも病院建設PFI自体も、病院運営の専門性を有するデザイナーが建物の設計をしていないこと、議会も自治体の問題を議員間で論じる建付けになっておらず、自治体病院の経営に関する議論がなかなか深まらないこと、議員自身のメンタリティの問題、そして地域住民が地域医療をなかばコンビニのような形で利用していること――等々、病院の経営改善を阻む壁、医師や医療スタッフの労働環境改善を阻む壁についての指摘が相次ぐ。

僕たち住民一人一人にも、変わることを求めている。普通に考えれば自治体病院のような二次医療機関に子供が擦り傷作ったぐらいで夜間診療に連れて行く親の意識とかは改められなければいけないことは明らかである。発刊当時と比べたら掛かりつけの町の診療所で一次医療は済ませようという風潮は高まってきているのではないかと思うが、それでも著者のブログのトーンはこうした理解が今でも十分ではないという前提に立っているから、住民自身の意識変革はまだ十分ではないということなのだろう。

こうして、僕ら自身が過度に二次医療機関のお世話にならないで済むよう、ふだんの生活の中での意識は改めていかねばならないのだと再認識する一方、2つほど示唆に富む記述があったので備忘録的に以下で挙げておく。いずれも、直近までの僕の駐在国や、今の組織で僕が関わっている仕事を見る上で示唆に富むように思えた。

日本福祉大学社会福祉学部教授の近藤克則氏は、第26回日本医学会総会ポストコングレス公開シンポジウムにおける「英国の医療改革から学ぶ」という講演で、医療政策研究者の間では、➀必要な人がだれでもアクセスできる公平な医療、②医療費の安さ、③医療の質が高いという3つを同時に満たすことはできないという意見が一致していることを紹介している。(pp.178-179)

地方自治体の職員は、時代の変化で新しく取り組まなければならない仕事(例えば、夕張市立総合病院の破綻処理と再生などが典型である)も、事務分掌になっていないことから他の部局に押し付け合い、誰も積極的に取り組まない。そもそも、日本の地方自治体職員は、新しい課題を発見し、それを解決していくことを苦手としている。本来、患者に対して質の良い医療を提供することが自治体病院の目的であるが、地方自治体の職員にとっては、職員の雇用や予算の作成、議会の円滑な審議に関心が向かってしまう。(pp.198-190)

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