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『老後の資金がありません』 [読書日記]

老後の資金がありません (中公文庫)

老後の資金がありません (中公文庫)

  • 作者: 垣谷 美雨
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
「老後は安泰」のはずだったのに! 後藤篤子は悩んでいた。娘の派手婚、舅の葬式、姑の生活費…しっかり蓄えた老後資金はみるみる激減し、夫婦そろって失職。家族の金難に振り回されつつ、やりくりする篤子の奮闘は報われるのか?ふりかかる金難もなんのその、生活の不安に勇気とヒントをあたえる家計応援小説。

あまりにもタイムリーな読書。数カ月前から僕の読友がFacebookで薦めはじめ、いつかは読もうと思っていたら、近所のコミセン図書室で偶然見つけてすぐ借りることができた。「老後の資金不足2000万円」という例の金融庁審議会報告書のおかげで、本書にも余計な注目が集まっていたに違いないこの時期、まさか借りられるとは思っていなかった。

垣谷作品も5作目ともなると、なんとなくパターンが見えてきていて、序盤から中盤にかけて主人公を奈落の底に陥れる様々な出来事が起こり、そこで明確にターニングポイントになる出来事が起こり、そこから終盤に向けた展開は、「V字回復」と表現したくなるような劇的なもので、何もかもがプラスに働いていくようになる。そういうポイントが作品の中観にかならずある。そこに至るまではこれでもかこれでもかという不利な出来事の連続で、読み進めるのもつらくなるが、ターニングポイントをクリアした瞬間がわかると、あとの展開はワクワクしながらページをめくり続けられる。

本作品の場合は、主人公の篤子が、夫の妹の繰り出す、論理的だが情け容赦のない暴言にとうとうブチ切れ、売られた言葉を買ってしまったシーンがあるが、ここを読んだ時には僕は「来たな」とすぐに気付いた。もう少し手持ちのスキルやネットワークを生かして起業でもするのかと思っていたら、話が意外な方向に展開したので、逆に面白かった。(あまり書くとネタバレになりそうだが。)

うちは妻の方も僕の方もいずれも両親がご健在なので、本書で出てくるような資金が今後出てくる可能性もある。生前の親の金の使い方によっては、葬儀とその後に子どもが急な出費を迫られる可能性がある。妻にも僕にも弟妹がおり、費用負担で揉めそうなポイントがいくつかありそうな気がする。さらには子ども大学生や高校生で、今がいちばんお金がかかる時期である。早く社会に出て就職して欲しいと願いたいところだが、まだまだ先の話である。僕らの生活のパーツ一つ一つが、本書の設定とかなり似ていて、それだけに「明日は我が身かも」という焦燥感に駆られる。

その意味では、今の僕らには勉強になることが多い作品でもあった。もっと言えば、面倒くさいことを妻に押し付けている篤子の旦那の呆れた口上を見ていると、「自分も妻の目にはそう映っているかも」という空恐ろしさを感じてしまう。見たくない現実からは目を逸らし、面倒なことは妻に押し付ける、かといって見栄は張りたがる、そんな情けない夫にならぬよう、しっかりしないと老後にとんでもないしっぺ返しが待っているかも―――それに気付かせてくれた痛快な作品だった。




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