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『大坂堂島米市場』 [読書日記]

大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書)

大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書)

  • 作者: 高槻 泰郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/19
  • メディア: 新書
内容紹介
海外の研究者が「世界初の先物取引市場」と評価する江戸時代、大坂堂島の米市場。米を証券化した「米切手」が、現在の証券市場と同じように、「米切手」の先物取引という、まったくヴァーチャルな売り買いとして、まさに生き馬の目を抜くかのごとき大坂商人たちの手で行われていた。このしばしば暴走を繰り返すマーケットに江戸幕府はいかに対処したのか? 大坂堂島を舞台にした江戸時代の「資本主義」の実体を始めて本格的に活写

今、歯の治療のためにバンコクに来ている。でも、結果的には歯の治療は断念した。僕の右上奥歯はこの半年以上の間、断続的に悲鳴を上げており、その度に鎮痛剤を飲んでごまかして仕事してきたが、バンコク病院の歯科センターでは、どの歯が痛みの原因になっているのか特定できないと言われた。それを特定するにはかぶせてあるものをいったん外す必要があるが、それをやるには滞在日数が短すぎるという。僕のブータンでの残りの滞在日数を考えたら、あと4カ月少々我慢すれば本帰国して日本で治療が受けられる。だからバンコクでの治療は断念した。

バンコク病院は日本語が通じると言われてわざわざ予約したが、日本語通訳は追加費用がかかると言われた。結局通訳料をケチった僕は英語で症状を説明したが、これならどこで治療やっても同じではないか。勿論、バンコク病院の施設やサービスは素晴らしいと思うが。

こうして二度にわたって訪れたバンコク病院歯科センターでの治療は肩すかしに終わり、その間、待ち時間を利用して次なる読書にいそしんだ。読んだ本は3カ月以上前にキンドルでダウンロードしてそのまま放置していた1冊。今年年初に日本証券所グループ『日本経済の心臓 証券市場誕生!』を読んでた僕としては、大坂堂島の米市場の取引実態について紹介された今回の本は、絶対外せない1冊であった。

江戸時代の堂島がそんなに凄い市場だったのだというのは、『証券市場誕生!』を読んで知っていたけれど、そこでの説明は割とサラッと書かれていたし、東京証券取引所の博物館にある説明も、『証券市場誕生!』のベースとなるほとんど同じような記述だった。それを、堂島米市場だけを取り上げて300頁以上のボリュームで描いたのだから、面白くない筈がない。相当な勉強になる内容だ。

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『ゼロからトースターを作ってみた結果』 [読書日記]

ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫)

ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫)

  • 作者: トーマス ・トウェイツ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 文庫
内容紹介
トースターをまったくのゼロから、つまり原材料から作ることは可能なのか? ふと思い立った著者が鉱山で手に入れた鉄鉱石と銅から鉄と銅線を作り、じゃがいものでんぷんからプラスチックを作るべく七転八倒。集めた部品を組み立ててみて初めて実感できたこととは。われわれを取り巻く消費社会をユルく考察した抱腹絶倒のドキュメンタリー!『ゼロからトースターを作ってみた』改題。

少し前に、ルイス・ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくり方』をこのブログでもご紹介したが、この本の中で、ダートネルはトーマス・トウェイツという英国人美大生が、トースターをゼロから作るという取組みを行ったことに言及している。文明が滅びるような事態が本当に起きて、その場に自分ひとりだけが生きて取り残された場合、当然僕らは生きのびることを考えなければならない。ダートネルは、その生き残った人々が歩む途は単に今ある科学文明をなぞっていくわけではなく、衣食住の各局面において、何らかの調整が迫られる可能性もあることを示唆している。

トースターなんて簡単な構造で、部品の数も少ないのだから、ゼロから作るのは比較的簡単だろうと思われがちだ。しかしそのトースターでも、既存の低価格モデルを分解してリバースエンジニアリングをかけてみると、なんと400個もの部品から形成されていたという。それは、鉄だったり銅だったり、マイカ(雲母)だったり、プラスチックだったりする。熱を発するニクロム線は、ニッケルとクロムの合金だし、銅線を被覆する塩化ビニール樹脂も、色を付けるためには様々な染料を確保しなければならない。

それらは秋葉原のようなところに行けば手に入るような代物ではない。本当にゼロから作るということは、鉱物資源は各々を産出する鉱山に足を運ぶ必要があるし、英国人が石油を確保しようと思ったら向かう先は北海油田だったりする(著者は結局は北海油田まで行って原油を分けてもらうことはできなかったのだけれど)。そういう、原材料集めのところから細かくルポしているこの本、笑えるけれどもこの着眼点はスゴイと唸らされる。院生が卒業制作として取り組んだテーマだったようだが、これだけでも立派な研究成果になり得ると感じた。

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『ダンデライオン』 [読書日記]

ダンデライオン

ダンデライオン

  • 作者: 中田 永一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2018/10/25
  • メディア: 単行本
内容紹介
「くちびるに歌を」以来7年ぶりの長編小説 ―――。11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。20年の歳月が流れていた。そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。子ども時代と大人時代の一日が交換されたのだ、と彼女は話した。一方、20年後の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれていた。ある目的を達成するために、彼は急いでいた。残された時間は半日に満たないものだった―――。ミリ単位でひかれた、切なさの設計図。著者だからこそできた、完全犯罪のような青春ミステリーの誕生。

この週末は完全オフ。単身赴任状態の僕が健康診断のために滞在中のバンコクに妻を呼び寄せ、久々に2人で過ごしている。この間、仕事関連の全ての作業をストップさせた。ちょっと空いている時間は小説を読むことにした。

選んだのは中田永一の最新作。そんな多作の人ではないので、読んだのは確かに『くちびるに歌を』からも7年もの歳月が経過している。『百瀬、こっちを向いて。』にしても『吉祥寺の朝日奈くん』にしても、登場人物が比較的若いが、今回の最新作はというと、20年前の自分と入れ替わってしまう下野蓮司は31歳であるから、これまでの作品に較べると出てくる人物が比較的年齢が高い。ただ、読者の僕自身も『吉祥寺の朝日奈くん』初読から8歳もの歳を重ねているので、中田作品を読むのには小恥ずかしいオジサンになってきている。

その辺の違和感、というか、「オレ、何やってんだ」という罪悪感めいたものを感じながらの読書であった。31歳の下野蓮司、11歳の下野蓮司、28歳の西園小春、8歳の西園小春、それに蓮司の兄、小春の叔父等、視点が目まぐるしく変わるので、融通の利かないオジサンには読みにくさも感じた。どうもタイムスリップものは読んでて自分にはわかりづらいなと感じながら、それでもページをめくるスピードはそれなりに速かった。

多分多くの読者がそれを感じるだろうと思うが、蓮司11歳、小春8歳の時に起きた事件の犯人捜しを20年後に達成するため、そこまでは「観測済み」の未来に向けて行動するのでいいとして、そこからの彼らがどう生きていくのだろうかというのがすごく気になる。2人がまともな仕事をしているというわけでもなさそうだし、もっと気になるのは蓮司の兄貴の生き方だ。あれだけ未来を言い当てて稼ぎまくった人が、それを一切やめられるのかなと…。

自分にとっては軽めの読書だったので、今日のレビューもごく軽めで失礼します。

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『数字の国のミステリー』 [読書日記]

数字の国のミステリー (新潮文庫)

数字の国のミステリー (新潮文庫)

  • 作者: マーカス デュ・ソートイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/12/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
素数ゼミが17年に一度しか孵化しない理由、世界一まるいサッカーボールを作る方法、雷とブロッコリーと株式市場に共通するもの、ベッカムのフリーキックが曲がる理由、パーティで仲の悪い二人が二人きりにならないようにする方法…。今なおトップクラスの現役数学者である著者が、数学の現場の豊富なエピソードを交えながら、この不思議で美しいワンダーランドをご案内します!

下院議員選挙の決選投票に向けて、両党選挙活動が活発に行われていた10月初旬、僕は出張でタシガンにいた。その日の仕事が終わると、一緒に来ていたスタッフとタシガンタウンの食堂に繰り出し、ブータン国営テレビ(BBS)が報じる各選挙区両党候補者による討論会の模様を見ながら晩御飯を食べた。その頃は毎日17時から20時までが討論会。ゾンカ語オンリーなので僕にはほとんど理解できなかったが、同行したスタッフは皆一生懸命に候補者の論点に耳を傾けていた。

20時に討論会が終わるとBBSは他のプログラムを放送し始める。BBSは2チャンネルを持っており、BBS1の方はニュース中心なので20時にはゾンカ語の20分ニュースが始まる。BBS2の方はNHKのEテレみたいなもので、その後に始まるのは教育番組であることが多い。本を読むことを慫慂するトーク番組だったり。ふだんあまりBBS2は見ないので、タシガンでじっくり見たのが初めてのことだった。

そこである日、「王立個別指導プロジェクト(Royal Tutorial Project)」のスポンサー番組が始まった。実生活に必要になる算術を、実際の場面に即して視聴者に考えさせる番組で、僕が見た回は、ティンプーの建築物を建てるのに、屋根材の面積はいくら必要になるのか、それは市場で発注する時には屋根材何枚になるのか、そしていくらかかるのか等を算出するというもので、要すれば三角形や台形の面積計算の仕方を教えていたのである。

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『イノベーション戦略の論理』 [読書日記]

イノベーション戦略の論理 - 確率の経営とは何か (中公新書)

イノベーション戦略の論理 - 確率の経営とは何か (中公新書)

  • 作者: 原田 勉
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/03/24
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
日本経済再生の鍵とされるイノベーション。だが、膨大なお金と時間をつぎ込んでも革新的な技術やサービスが生まれるとは限らず、現実には失敗に終わる可能性が高い。イノベーションを生みやすい組織にするにはどうしたらよいのか。本書では、米国流コーポレート・ガバナンス論に基づく短期的な業績の重視がむしろマイナスであることを指摘し、長期的にイノベーションの成功確率を高める経営戦略を具体的に示す。

インターネットにつながらない場所をほっつき歩いていて、1週間ご無沙汰してしまっております(笑)。

ただ、ネットにつながらないということはネットサーフィンの時間をそれ以外のことに充てられるということでもある。だから、ブログ更新を疎かにしている間に、またも積読蔵書圧縮にはかなりの進展があり、今今週3冊目の本を読んでいるところである。

ということで、旅のお供に携行した3冊のうち、最初に手にしたのはこの本。「イノベーション」という言葉に惹かれて、衝動買いしたのだが、最初の数ページで自分が求めていた内容とはかなり違うと思い、加えて難解だったので挫折。その後今日に至っている。

それを今回は真っ先に読むことにしたのは、9月に『下町ロケット ゴースト』『下町ロケット ヤタガラス』を読み切ったからである。今の勢いなら難解な文献でもなんとかやっつけられるのではないかと考え、再挑戦を企てた。確かにある程度の集中度は持って読み始めることはできたものの、やっぱり途中で集中が途切れ、読了した今となっては本書から何を得たのかがわからなくなってしまった。

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タグ:原田勉
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ソトコト2018年10月号「あたらしい仕事図鑑」 [読書日記]

SOTOKOTO(ソトコト) 2018年10月号[あたらしい仕事図鑑]

SOTOKOTO(ソトコト) 2018年10月号[あたらしい仕事図鑑]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 木楽舎
  • 発売日: 2018/09/05
  • メディア: 雑誌
内容紹介
【特集】あたらしい仕事図鑑
Open up a new work
ユニークで、楽しくて、価値ある仕事!いまある仕事が、これからの仕事に変わる。
小さなニーズや「なんでないの?」という疑問から、
あたらしい仕事が芽生え、形づくられていきます。
趣味との境目があいまいかもしれません。ジャンル分けがしにくい職種かもしれません。
きっとそれが、自分ごととしておもしろく、日常と未来を前向きに進めていける仕事。
ピン!とくる仕事、見つかりますよ。

今のブータンでの仕事を終えた後、何をしようかと考えるところがある。歳も歳だから、そんなに選択肢があるわけでもない。それと同時に考えることが2つある。1つはブータンの若者の仕事、もう1つは我が子の将来の仕事である。

ブータンの若者、自分ではあまり汗をかかないのに、大きな成功は夢みていて、物事を動かすのに外国人には頼る。一攫千金なんて機会はそんなにはないし、修羅場に直面するとすぐに腰が砕けるようではそこまでも辿り着けない。コツコツと小さな努力を積み重ねていくしかないと思う。また1つの収入源だけで全部まかないきれるわけでもない。多分、金銭で支払わねばならないような生活費はなるべく節約して現物で代替できるような仕組みも組み合わせて、現金収入は少なくとも生きて行けるような持続可能なライフスタイルがもっと提案されていかないといけないのだろうと思う。少なくともそういう意識付けを図りたくて、ブータンの若者に日本の田園回帰の話をよくする。

技能実習生制度などで日本に行く若者も多い。日本の都市の生活に憧れるのも結構だし、大きな借金を背負って行くのだから、石にへばりついてでも頑張って技能を習得してきて欲しいとも願っているが、日本の若者の持続可能なライフスタイルというのをしっかり見て来て欲しいと思う。本書で紹介されているのはそのほんの一部に過ぎないが、それでもこれだけのバラエティの新しい仕事が出てきている。僕らが学生だった頃は、大学を出たらどこかの企業に就職するというのが唯一の途のように思えたが、今はそうではなくなってきているし、そういうところは見て来て欲しい。また、そういう新しい仕事も、物好きが高じて結果的にそうなったというのが本書を読んでて感じるところである。政府か外国人か、誰かが助けてくれるっていうのではなく、少なくとも自分は他人とは違うというエッジを磨いていないと、それを仕事にしていくという選択肢は将来的にも取り得ない。

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再読『日本人の知らない武士道』 [読書日記]

日本人の知らない武士道 (文春新書 926)

日本人の知らない武士道 (文春新書 926)

  • 作者: アレキサンダー・ベネット
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/07/19
  • メディア: 新書
内容紹介
ガッツポーズは武士道に反する!?剣道七段、薙刀五段の著者は武道を通してこそ武士道がわかると語る。日々の仕事、ストレスマネジメント、勝負論に武士道を生かす。

ティンプー・ツェチュ(大祭)の連休、肝心のツェチュをパスしてまたしてもネパール・カトマンズに来ている。その旅のお供に積読状態の本を4冊携行したのだが、そのうち最初に読んだのは、積読ではなく再読になるアレック・ベネット先生の著書。5年前に一度読んでいて、その時は主に第1章「残心――武士道の神髄」を中心にブログでご紹介した。

連休で読書にある程度の時間を割ける今、あえて再読に踏み切ったのは、実はカトマンズに剣道具を携行してきているからだ。南アジアでの剣道は、日本人中心で最もレベルが高いデリーのインド剣道同好会(剣印会)と、ハイデラバードでインド人が主宰している武道会がある。このハイデラバードのインド人の先生が、「ネパールは進んでいる」と10年近く前におっしゃっていた。日本大使館の草の根無償資金協力で武道館も作られているようだ。そこで行われている稽古の動画を見たが、ものすごいスピード重視の剣道で、攻めもクソもなくいきなり打ってくる。相手も構えを崩して迎撃するので、相打ちになってその後は鍔迫り合い、それもすぐに引き技。まともに応戦したら自分の老体が持たないと思った。今こそ、前回のブログでも紹介した以下の引用を再確認し、異国での出稽古に臨みたいと思った。

 武道においては、負けることによってこそ学ぶことは多い。面を打たれた。なぜそこが空いたかを相手は示してくれた。自分の弱点を教えてくれた。これからの稽古でどうやってその弱点を克服するか、修行の課題を与えてくれた。それを糧に自分はさらに強くなれる。より強い自分となって試合に臨める。その思いが「ありがとうございました」という試合後の礼につながるのである。(pp.45-46)

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『一路』(上・下) [読書日記]

一路(上) (中公文庫)

一路(上) (中公文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
失火により父が不慮の死を遂げたため、江戸から西美濃・田名部郡に帰参した小野寺一路。齢十九にして初めて訪れた故郷では、小野寺家代々の御役目・参勤道中御供頭を仰せつかる。失火は大罪にして、家督相続は仮の沙汰。差配に不手際があれば、ただちに家名断絶と追い詰められる一路だったが、家伝の「行軍録」を唯一の頼りに、いざ江戸見参の道中へ!

一路(下) (中公文庫)

一路(下) (中公文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
中山道を江戸へ向かう蒔坂左京大夫一行は、次々と難題に見舞われる。中山道の難所、自然との闘い、行列の道中行き合い、御本陣差し合い、御殿様の発熱…。さらに行列の中では御家乗っ取りの企てもめぐらされ―。到着が1日でも遅れることは御法度の参勤交代。果たして、一路は無事に江戸までの道中を導くことができるのか!

いただきものの文庫本、これにてようやく全て読了とあいなった!2カ月近くかかった。1冊1冊が結構なボリュームで、読みかかりにすごく気合いを入れる必要があった。まるで、坂道発進の時のアクセルの踏み方のようなものだ。人からいただいた本は、他の人の目に触れさせるつもり。ティンプー市内のMKレストランに最近、8月にお帰りになったJICAの専門家(この本をいただいた専門家とは別の方)の文庫棚ができたので、そこに寄付するつもり。

さて、浅田次郎の『一路』が最後まで残ってしまったのも、本書が上下巻合わせて800ページ近いボリュームがあったことや、舞台となる江戸時代にこれまでさほど関心を持っていなかったこともあってのことだ。実はこの長編、上巻の最初の数十ページを読み進めるのが結構難儀で、そこを乗り越えて話が動き始めないと、面白さが味わえない。この本に出てくる美濃国赤坂宿は僕の実家から近いし、武蔵国桶川宿は、結婚前に2年ほど住んだ思い出の地だ。実際、僕は中仙道を辿って桶川から実家までドライブしたこともあるので、時代は違えど作品としては興味があった。それでも、序盤はエンジンがかからず、8月にいったん挫折した。そのトラウマで最後まで後回しにしてしまったのである。

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『江戸開城』 [読書日記]

江戸開城 (新潮文庫)

江戸開城 (新潮文庫)

  • 作者: 海音寺 潮五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/11/26
  • メディア: 文庫
内容紹介
革命の名の下に、血の犠牲を要求するため、官軍を率いて江戸に入った西郷隆盛。動揺する徳川慶喜と幕閣の向背に抗し和平の道を模索する勝海舟。両巨頭が対峙した歴史的二日間は、その後の日本を決定づける。幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面の、千両役者どうしの息詰まるやりとりを巨匠が浮かび上がらせる。奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く、傑作長編。

NHK大河ドラマ『西郷どん』は、16日放送回が「龍馬暗殺」なんだそうだ。僕は一時帰国中に第1回を見たっきりで、その後の進展については全く知らない。でも、先月離任されたJICAの専門家の方から最後の最後にいただいたのが、西郷と勝海舟、山岡鉄舟らを描いた海音寺潮五郎の『江戸開城』だった。僕は海音寺潮五郎といったら、このブログを開設するよりもずっと昔に読んだ平将門主人公の作品しか記憶にないので、そもそも鹿児島出身のこの作家が、西郷隆盛を主人公にした小説や史伝を多く発表されていること自体を全く知らなかった。なにせ僕が海音寺潮五郎という名を知ったのは、同じNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』(1976年)であった。だから、海音寺というと僕にとっては「平将門」だった。

それはそうと、僕が大河ドラマのフォロワーかどうかはともかく、本書は面白かった。時期としては、大政奉還、王政復古、鳥羽・伏見の戦い等が起こった後、徳川慶喜が鳥羽・伏見敗戦から海路江戸に逃げ帰り、朝廷に対して恭順の姿勢を見せ始めた頃からの話で、その後江戸城引渡しに納得しなかった幕府派の浪人が結成して新政府軍に抵抗を企てた彰義隊が、新政府軍に敗れて江戸から撤退するまでの話となっている。ちょうど、これから大河ドラマが描いていく部分だろう。なんとなくの予想では、西郷・勝の面談から無血開城、彰義隊撲滅までの3カ月ほどの話は1話か2話で一気に走るような気はする。その中での西郷や勝の駆け引きはある程度は端折られるのではないかと思う。

そこを、当時の書簡や関係者の日記、回顧録等を丁寧に調べ、著者なりの仮説を設けて描いている。著者のライフワークともいえる(らしい)西郷隆盛の人となりだけでなく、勝海舟や山岡鉄舟といった幕府方の人物もクローズアップされ、特に勝海舟については定説とは異なる評価を下している。(勝は徳川慶喜とはそりが合わなかったと言われているが、生涯を通じて徳川家の地位確保に奔走したと著者は評している。)新政府軍側も、大河ドラマでも出てくる海江田武次とか大村益次郎とかの人物像に、本書はよく切り込んで描いている。

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ソトコト2018年9月号「地域のアートと音楽フェスティバル・ガイド」 [読書日記]

SOTOKOTO(ソトコト) 2018年9月号[地域のアートと音楽フェスティバル・ガイド]

SOTOKOTO(ソトコト) 2018年9月号[地域のアートと音楽フェスティバル・ガイド]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 木楽舎
  • 発売日: 2018/08/04
  • メディア: 雑誌
内容紹介
【特集】地域のアートと音楽フェスティバル・ガイド
人を呼び込み、一緒に地域を盛り上げていく!
人が集まる場所の筆頭が、各地で開かれているアートと音楽のフェスティバル。
趣向を凝らして、ローカルの特性を活かして、それぞれが個性豊かです。
フェスティバルが始まる経緯は、ひょんなことだったり、熱い思いだったり。
誰かが行動を起こし、共感した仲間が集まり、ムーブメントが広がる。
全国をにぎやかに、私たちを楽しませてくれるフェスティバルが大集合です!

この雑誌の10月号に僕の知り合いが関わった地域フェスティバルの話が載っていると聞き、読もうかと思ってソトコトのバックナンバーを見渡していたところ、それよりも面白そうな特集号に目が行き、それでそちらの方を先に読むことにしてしまった。

期待にたがわぬ面白さであった。それぞれのフェスの構想がどのようにして生まれ、そこからどのようにして関係者が巻き込まれていったのか、わりと丁寧に書き込まれていて、メッセージとしては「とにかく思い立ったらやってみろ」というのがどのフェスの場合も仕掛け人の皆さんが総じておっしゃっていることでもあると思った。

一方で、こういうフェスって、人口減少とはいってもそこそこ地域に人がいて、ある程度の移動性、移動手段がある日本だからできる部分もあるのではないかとも思った。やろうやろうと盛り上がれる、イベントの核になれる人が数名いて、そういう人々が集まって議論し合える場が元々あって、盛り上がった後も巻き込める地域の人がさらにいて、分業で様々なイベントを企画・遂行できる趣味の人、才能ある人がそこそこいる―――母集団がそこそこ大きい日本なら、こういうアプローチは可能だと言える。

ややひねくれたものの言い方になるが、これが総人口73万人のブータンの、さらに田舎であってもできるのかと考えると、大変だなと思う。そもそもそんな田舎に住んでおらず、ティンプー在住の僕が「とにかく思い立ったらやってみる」とはなかなか言えないことだ。それに、思い立って言い始めたはいいが、ここの人は言い出した人に丸投げする。「一緒にやろう」という盛り上がり方がなかなかできない。

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