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『ニワトリは一度だけ飛べる』 [重松清]

ニワトリは一度だけ飛べる (朝日文庫)

ニワトリは一度だけ飛べる (朝日文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2019/03/07
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
左遷部署「イノベーション・ルーム」に異動となった酒井裕介のもとに「ニワトリは一度だけ飛べる」という題名の謎のメールが届くようになる。送り主は酒井らを『オズの魔法使い』の登場人物になぞらえて、何かメッセージを伝えようとしているようなのだが…。

三連休であるが、このぐずついた天気では外出したいという気力もなく、また三連休というわりに行きたいと思う外出先にもアイデアがない。そもそも「原稿執筆が…」と言っている自分が「三連休だから外出」なんて言ってたら、現実逃避だとしか思われないから、自宅周辺でグダグダして過ごしている。

とはいえ、原稿執筆以外にやりたかったことはいくつかあった。この、近所のコミセン図書室で7月5日に借りた重松作品を読み切るのもそうした「やることリスト」のトップに掲げられていたことである。「原稿執筆が…」と言ってる奴が小説など読んでたらそれこそ現実逃避と思われるかもしれないが、原稿は今あるネタで書ける部分は書いて、あとは少し情報収集せねば書けないというポイントにさしかかってしまったので、息抜きを考えるなら今のタイミングだなと思い、日曜夜から読み始めて月曜朝には読了した。

それにしても、重松作品を読み慣れている読者にとっては、ちょっと異色な作品だった。若干たりとも重松テーストが感じられたのは主人公・裕介の家族や妻の両親の介護の問題が垣間見えるシーンぐらいか。そもそもサラリーマンが主人公の作品というのも久しぶりな気がする。重松作品によくみられる、「述語の前に読点」―――例えば、「思い通りにいかないことは、この世の中には、多い」的な表現も、本作品では抑えめである。この表現が頻繁に出てくると「ああ、シゲマツさんだな」と感じるのだが、それが少ないだけでこれって本当に重松作品なのかと思ってしまう。

さもありなん。この作品は2003年頃に週刊朝日で連載されていたのが、そのままお蔵入りになっていたものらしい。それくらい前の重松作品では、あまり多用されていなかった表現だったのかもしれないし。

この作品のベースになっているのは、その頃に実際に起きた食品偽装事件らしいが、それからトレーサビリティとか厳しく見られるようになってきているし、そもそも今の世の中、「イノベーション・ルーム」なんて、左遷部署ではなく花形部署になっている企業の方が多いのではないかと想像する。満を持して文庫版として世に出すにしても、連載当時のオリジナルをそのまま載せるというよりも、多少時代背景を考慮して加筆修正があってもよかたかもしれないですね。

さあ、三連休のノルマをもう1つクリア。次の課題に取り組むか!

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『どんまい』 [重松清]

どんまい

どんまい

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/18
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
“ちぐさ台団地の星”と呼ばれたかつての甲子園球児、要介護の親を田舎に抱えるキャプテン、謎多き老人・カントク、そして夫に“捨てられた”洋子と娘の香織―草野球チームを通して交錯する「ふつうの人々」の人生を鮮やかに描ききった傑作長編小説。

本帰国するまで我慢していた重松清の新作を読んだ。電子書籍版があれば発売直後に購入していたと思うが、残念ながら電子書籍版はなく、帰国早々始めた歯医者通いの後、ちょっとの時間で近所のコミセン図書室に立ち寄り、たまたま未貸出で新着書籍の棚に置いてあった本書を即座に借りることにした。この週末をかけて読んだ。

祝・2019年プロ野球ペナントレース開幕。本書は表紙のイラストが1975年の広島カープ初優勝の時のユニフォームになっていて、この年のカープのユニフォームを身にまとった東京郊外の団地の草野球チームの面々のお話である。1975年のカープ優勝は、その前年に中日ドラゴンズが20年ぶりのセリーグ優勝を経験した直後だけによく覚えているが、当時小学校六年生だった僕はそれから43年が既に経過して、今や55歳になっている。

つまり、少なくとも本書の設定では僕と同世代である筈の主役の1人・洋子が、本書では40歳という設定だということは、今から15年前―――2003年頃が舞台となっている作品ということになる。1975年の広島カープに関する記述は作品中でよく出て来るが、今が何年で今の広島カープにどんな選手がいるのかにまでは言及されていない。もう1人、明らかに松坂がモデルだと思しき登場人物が出て来るが、松坂が西武入団したのが1998年秋で、それから5年稼働した時期というのは2003年ということになる。松坂は今も現役だが、本書で登場する同世代の旗手たる「吉岡」は本作品の最後に引退という選択肢を選ぶ。

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再読『卒業』 [重松清]

卒業 (新潮文庫)

卒業 (新潮文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/11/28
  • メディア: 文庫
内容紹介
「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、14年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが――。悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。著者の新たなる原点。

この週末は息抜き、読書三昧をと決め込んでいた。前回ご紹介した『Never Lost Again』を土曜日に読了し、日曜日は大学院で使っているテキストを4章読み込み、さらに息抜きで重松清の中編小説集『卒業』を読んだ。『卒業』は、日曜日のうちに読了した。月曜以降の仕事を多少窮屈にする可能性もあったけれど。

僕自身が勝手に、重松清作品史上、最もおススメだと思っているのが『卒業』である。僕は2006年8月に一度読んでいて、その後受けた当時の職場の社内報でも、おススメの1冊として『卒業』を挙げている。12年ぶりの再読に期待したのは、今でもおススメなのかの確認だ。当時の僕は、収録された4編の中編小説に出てくる主人公とほぼ同じ40代の前半だった。だから余計に感じたものがあったのだとも思う。

特に、僕らを育ててくれた肉親の死というのを初めて眼前に突き付け、読者に考える機会を与えた作品だったように思う。死を近い将来迎えようとする親の今と、何らかの理由で関係がこじれ、長年にわたるわだかまりを引きずることになった昔とをつなげ、和解の糸口を今に見出し、明日を生きていくきっかけになっていく―――そんなパターンの作品集だった。

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『ノスタルジー1972』 [重松清]

ノスタルジー1972

ノスタルジー1972

  • 作者: 中島京子、早見和真、朝倉かすみ、堂場瞬一、重松清、皆川博子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
あの頃の未来は、どんなだった?現在の根っこはここにある。近くて遠い、日本の原風景を描いた、豪華執筆陣による6つの物語。

一時帰国中に買ってきた小説等をようやく読める心の余裕ができた。といっても、読み始めたのは数日前からで、アンソロジーだけに小刻みに読んでいって、ようやく自由時間が多少できたこの日曜日に、残っていた2編を一気に読んでしまった。

ご想像の通りで、このアンソロジーは、1972年の記憶がある作家さん(1977年生まれの早見さんを除く)が、1972年に起こった出来事を中心に描いた短編で構成されている。1972年って何があっただろうか。ウィキペディアで主な出来事を拾ってみる。いずれもこの作品集の中で言及ある話である。

1月: グアム島で元日本陸軍兵士横井庄一発見。
2月: 札幌オリンピック開催。連合赤軍によるあさま山荘事件。
3月: 東武東上線成増駅前にモスバーガーの第一号実験店舗が開店。
4月: 外務省機密漏洩事件で毎日新聞の西山太吉記者らが逮捕される。川端康成が逗子市でガス自殺。
5月: アメリカから日本へ沖縄返還。
9月: 田中首相訪中し、日中国交正常化の共同声明。
10月: 巨人が8年連続セ・リーグ優勝(V8)。
   フィリピンのルバング島にて警察と生き残りの日本兵とで襲撃戦が発生する。
   日中国交正常化を記念して上野動物園にジャイアントパンダのランラン、カンカンが来園。
11月: 国鉄北陸トンネル内で列車火災。羽田空港発福岡空港行きの日航機がハイジャックされる。
   衆議院解散(日中解散)。ソ連に亡命していた女優の岡田良子が一時帰国。
   日本航空シェレメーチエヴォ墜落事故。
12月: 八丈島東方沖地震が発生。第33回衆議院議員総選挙投票

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『たんぽぽ団地』 [重松清]

たんぽぽ団地

たんぽぽ団地

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/12/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
昭和の子どもたちの人生は、やり直せる。新たなるメッセージが溢れる最新長編。元子役の映画監督・小松亘氏は週刊誌のインタビューで、かつて主人公として出演したドラマのロケ地だった団地の取り壊しと、団地に最後の一花を咲かせるため「たんぽぽプロジェクト」が立ち上がったことを知る。その代表者は初恋の相手、成瀬由美子だった……。少年ドラマ、ガリ版、片思い―― あの頃を信じる思いが、奇跡を起こす。

海外赴任まで残り2カ月となり、赴任前に読んでおきたい本をできるだけ読み漁りたいと思っている中、意外にも早くチャンスが巡ってきたのが、未だ昨年末に出たばかりの重松清の新刊。購入しようかどうしようかと考えていたところ、偶然にもコミセン図書室の新着本コーナーで発見。直前に返却してくれた借出し第1号の方に感謝したい。

こうして幸運に恵まれて早めに読むことになった重松作品、団地が舞台ということで、どうしても『ゼツメツ少年』や『一人っ子同盟』との比較で書いてみたくなる。どちらも団地やニュータウンを舞台にした、最近の重松作品だ。

『たんぽぽ団地』は時空を飛び越えて過去と現在がつながるファンタジーだが、『ゼツメツ少年』は小説家の先生の物語の中に、現在を生きている子ども達を紛れ込ませるというものだ。現実の描写という手法はとらず、現在と過去、現実世界とフィクションの世界を行ったり来たりする話の展開になっている。正直言うと『ゼツメツ少年』は、各節の間で現実と虚構とのぶつ切りになっていたので話の展開がわかりにくかったが、『たんぽぽ団地』の方は、少なくとも展開自体は時系列順でつながっており、読みやすかった。

『ゼツメツ少年』はいじめや自殺という今の社会問題を正面から取り上げている。これに対して、『一人っ子同盟』と『たんぽぽ団地』は、そもそもが団地生活を取りあげている。『一人っ子同盟』は1970年代の話で、基本的にはその70年代の世界だけで話が展開する。成長した主人公が現在から70年代を振り返るシーンはないこともないけれど、現在と過去をつなげることはあまり意識されておらず、もっぱら70年代の団地のお話だ。

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『なきむし姫』 [重松清]

なきむし姫 (新潮文庫)

なきむし姫 (新潮文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫
内容紹介
霜田アヤは、二児の母なのに大のなきむし。夫の哲也は、そんな頼りないアヤをいつも守ってくれていた。ところが哲也は1年間の単身赴任となって、アヤは期間限定のシングルマザーに。そこに現れたのは幼なじみの健。バツイチで娘を育てる健は、夫の不在や厄介なママ友に悩むアヤを何かと助けてくれて……。子供と一緒に育つママの奮闘を描く、共感度満点の愛すべきホームコメディ。

久々の重松作品である。昨年は結局、『アゲイン~28年目の甲子園』しか読んでない。『ファミレス』、『ゼツメツ少年』、『一人っ子同盟』と続いたハズレ感から立ち直れてないのである。

とはいえ、新刊が出たら読みたくなるのが、このブログ開設当初から作品を読み続けている重松ファンの悲しい性。年末にブックオフに大量の本の買い取りを持ち込んだ際に、代わりに購入した1冊が本日ご紹介の『なきむし姫』であった。

この冬休みはカレンダー通りで、年末年始のお休みは6連休だった。訳あって東京で過ごしたが、お陰でほぼ計画通りの生活を送ることができ、少しだけ時間の余裕もあったので、小難しい専門書よりも、文庫版の小説でも1冊読もうかと考え、『なきむし姫』を選択した。空いた時間にリラックスして読むにはちょうど良い分量と内容だ。そして、少し前までの重松作品なら当然のように感じられた、ちょっと幸せな気持ちになれる読後感を久々に味わうことができた。『ファミレス』のスラップスティック感は読んでて腹が立ってきたから。

ただ、「ちょいハッピー」ぐらいの感じでしかなくて、冷静に考えたらアヤさんの泣き虫ぶりが克服されたという感じはないし(元々そんなに泣き虫という感じでもなかったけどね)、過保護ママの留美子さんの暴君ぶりにも変化があったとは思えない。僕はこの留美子さんをギャフンと言わせるようなカタルシスが欲しくて読み進めたけど、結局成長してない。そして、相変わらず重松さんは登場人物に付けるニックネームのセンスがイマイチだ。

それでも、長男の文太クンの成長ぶりだ。最後の章でのクラスのまとめ方、そしてそれを黙って見守ろうとした健の姿勢には感動する。参加型の問題解決のお手本を見るようで、久しぶりに重松作品を読んで目頭が熱くなるのを感じた。最近の作品ではほとんどなかったことだ。はじめのうちは、健に対しては留美子さん同様、『ファミレス』的なうざったさを感じてイライラしっ放しだったが、最後の章だけはものすごく良かった。救われた気がした。

最終章を読むためだけに、読み進めることをお薦めしたい。


余談ですが、哲也が関西に単身赴任させられて携わった「プロジェクト」の中身、何だったんだろうか。接待以外には具体的な言及がなく、哲也がGWや夏休み、クリスマスを返上してまで関わらされた仕事っていったい何だったのか、ほとんど想像がつかなかった。

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再読・『流星ワゴン』 [重松清]

気が付くと、最後にブログ更新したのが1月25日。それから約2週間、全く更新できておりません。誠に申し訳ございません・・・というか、その1月25日から、土日も休みなく出勤しております。仕事がたまっていて残業が深夜に及んだという日もありましたが、どうしても休日にやらないといけない作業があったり、はたまた家にいては論文執筆に集中できないからという理由で、職場に出かけたという日もありました。今日(土曜日)も、実は事情があって出勤です。日曜日も本当は論文が15日締めと期限が迫っているため、職場に行きたいところ。ですが、会社の入居しているビルが全館停電となるらしく、その日だけは強制的に休みを取ることになります。

そんな状態なので、なかなかブログ更新している余裕がないのですが、不思議なもので、その間にブログの閲覧ランキングが結構な急落をしたのもあまり気にならなくなってきました。更新してなきゃ読まれないのは当たり前のことなので、これ自体は仕方ありません。ただ、それでもちょっと気になっているのは、アウトプットの機会を疎かにしていると、インプットの機会を確保するのも疎かになりがちであるということです。この間本を読んでいなかったわけではないのですが、明らかに読書のペースが落ちました。せっかく読んでもすぐにブログの記事にしないから、書かれていた内容を忘れてしまう。忘れてしまうから、ブログの記事がすんなり書けない、そんなのがどんどん溜まっていってしまうから、新しく読む本にもなかなか身が入らない―――そんな悪循環ですね。

そういう時には先ず小説ですね。そんなわけで、TBS日曜劇場でドラマも始まった『流星ワゴン』を久し振りに読んでみることにしました。(ここからは「~である」調で書きます。)


流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/02/15
  • メディア: 文庫
内容紹介
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った――。僕らは、友達になれるだろうか?
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

いかに日曜が出勤になろうと、さすがに午後9時には帰宅している。最近、日曜夜はTBSのドラマを見て終わるというパターンが定着しており、僕としては最もテレビの前にいる確率が高い時間帯となっている。『流星ワゴン』がドラマ化されると聞いての最初の印象は、オデッセイを運転する橋本父子を考えれば親子で見ても十分面白いだろうという漠然としたポジティブ感だった。ただ、同様に10回シリーズでドラマ化された重松作品『とんび』に比べると、展開が短期間に凝縮されており、どうやったら10回ドラマに引き延ばせるのかというのも気にはなった。

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『アゲイン 28年目の甲子園』 [重松清]

アゲイン 28年目の甲子園 (集英社文庫)

アゲイン 28年目の甲子園 (集英社文庫)

  • 作者: 大森 寿美男
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/12/16
  • メディア: 文庫

内容(「BOOK」データベースより)
もう一度、甲子園を目指しませんか―。40代半ばの元高校球児、坂町は見知らぬ女性に突然、声を掛けられる。彼は高校時代、ある出来事が原因で甲子園への夢を絶たれていた。記憶の蓋をこじ開けるような強引な誘いに苛立ちを覚える坂町だったが、かつてのチームメイトと再会し、ぶつかり合うことで、再び自分自身と向き合うことを決意する。夢を諦めない全ての大人におくる感動の物語。

この歳で『アゲイン』と聞くと、楳図かずおが少年サンデーで連載していた漫画を連想してしまうのは私だけでしょうか(笑)。すみません、いきなり余談でした。

17日公開のこの映画、原作が重松清だということで、来週末にでも映画館に足を運ぼうかと思っている。その前に、この映画の撮影を指揮し、脚本も手がけたという大森寿美男の書き下ろした文庫版の物語を、予習のつもりで読んでみた。ちなみに、大森氏はNHK大河ドラマ『風林火山』や朝の連ドラ『てるてる家族』などの脚本を担当し、映画では『風が強く吹いている』などの脚本・監督を務めている。年齢的には僕の4つ下。つまり、この映画の主人公、坂町と同い年である。

この作品、原作となっている重松清の作品というのがルポであるため、小説ということでいえば大森監督のまったくのオリジナルだと思っていい。そのあたりのことがちゃんと理解できずにこの本を読むと、読点の打ち方とか、それなりにクライマックスシーンを設けているところとか、いつもの重松作品とはちょっと違う印象を受ける。重松清の小説でちょっとツラいと感じる、これでもかこれでもかと描かれるお涙頂戴の展開は、この大森版の小説でも繰り広げられるが、登場人物の心の中の葛藤をそれほど描いていないので、僕にとってはいいさじ加減だったように思う。

坂町が高校時代に甲子園出場の夢を断たれた事件というのは、埼玉県予選の決勝前日、チームの補欠だった同級生の起こした暴力事件だった。そのために決勝戦は辞退を余儀なくされ、坂町たちの最後の夏は突然終わった。「負けるなら、ちゃんと負けろ」という言葉がひとつのキー・フレーズになっている作品だが、地区予選の決勝を、勝っても負けてもちゃんと試合をやれなかったというのが、キャプテンだった坂町をはじめ、エース高橋、キャッチャーで主砲だった山下らの悔いとして今まで引きずってきたのだろう。

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『一人っ子同盟』 [重松清]

一人っ子同盟

一人っ子同盟

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
あの時のぼくたちは、「奇跡」を信じて待つことができたんだ――。両親がいて、子どもは二人。それが家族の「ふつう」だったあの頃。一人っ子で鍵っ子だったぼくとハム子は、仲良しというわけではないけれども、困ったときには助け合い、確かに、一緒に生きていたんだ。昭和40年代の団地で生きる小学校六年生の少年と少女。それぞれの抱える事情に、まっすぐ悩んでいた卒業までの日々の記憶。

なんだか久しぶりの重松作品だな。作家には、ネタの仕込みの時期と本として世に作品を出す時期というのが交互に訪れるということなのかもしれない。本書も雑誌に連載されていた小説を単行本化したものだ。

想定読者は誰なのか、不思議な作品である。小学6年生の主人公の1年間を描いているという点では、想定されるのは小学校高学年なのかもしれないが、舞台は1970年代の、伝統的な市街地の郊外に団地が出来始めた頃だし、使用されている漢字も小学生が読むにしては難しい。うちの末っ子も来年は小6なので、こういう作品にはチャレンジさせたい気持ちもやまやまだけど、舞台が舞台だけに今どきの小学生にはピンとこないところもありそうだ。

当時は2人兄弟、3人兄弟が普通で、一人っ子というのは確かに珍しかった。元々その地域に住んでいた世帯は特に家族数も多かった時代で、その郊外に建ちはじめていた団地の入居者に、核家族化が見られ始めた時期だろう。ただ、それでも一世帯に子供が1人というのはまだまだ珍しく、いたとしても、兄弟を事故や病気で亡くしたか、家庭の事情で早い時期に母子家庭になってしまったか、或いは逆に両親がともに亡くなって孤児になってしまったか、要するに「わけあり」の子だったというパターンは多かったと思う。

そして、当時はプライバシー侵害に対する意識も低かったから、クラス名簿に住所や家族構成まで詳述されているのが当たり前だった。お陰でクラスメートの家に電話をかけるのは当たり前にできたし、クラスメートの両親の名前まで僕らは知っていたから、遊びに行っても友達の親には普通に接することができた。ただ、逆に住所だけ見て親はその友達のバックグランドを判断することもできたわけで、誰々と付き合うのは要注意だとか釘を刺されたこともないことはない。住んでいる場所で、昔からの住民なのか、新参者なのかが判断できる。古くからの市街地の住民グループと、最近団地に越してきたような新参住民グループとの間には、葛藤もあったに違いない。そういうものも、この作品からは読み取れる。

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『小学五年生』 [重松清]

小学五年生

小学五年生

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
10歳もしくは11歳。男子。意外とおとなで、やっぱり子ども。人生で大事なものは、みんな、この季節にあった。笑顔と涙の少年物語、全17編。
小五の二男がGW用の読書素材として学級文庫から借りてきた本。彼は僕が重松作品の愛読者であることをよく知っており、自分で読むというよりも、オヤジに関心を持ってもらうために借りてきたのではないかと思う。このGWは意外と慌ただしく、連休の合間の平日は全て出勤、しかも長時間の残業を余儀なくされた。軽く読み進められそうな小説であったとしても1冊読み切るのはちょっと大変で、その結果が相変わらずの低いブログ更新頻度につながっている。

いずれにしても、息子が読む前に息子の期待通り僕が先に読ませてもらった。小学校の学級文庫に所蔵されている重松作品としては、小四用には『くちぶえ番長』、小五用に『小学五年生』、小六用に『きみの友だち』が用意されているらしい。妥当な線と言えるだろう。

本書は確かに国語の出題に使いやすい超短編が収録されており、何事にも飽きやすい子供達には読みやすい作品かもしれない。小五の子供が何を考えているのか、何に悩んでいるのかを知るにはいい作品だと思う。でも、17編も収録されていると、読んでいるうちに今どこにいるのかわからなくなってしまうことも度々で、あまりひとつひとつの短編で印象に残ったものがない。なんだか本当につじつま合わせのためだけに読んだという印象だ。

出てくる主人公は全員男子で、女子に関してはそうした男子の目を通してしか描かれていない。そういうところは、男性作家としてのシゲマツさんの制約であろう。

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